DSPの実際の使用感をインタビュー
前回までは、DSP(Demand-Side Platform)の概要と配信事例を解説してきた。3回目となる今回は、ワールドワイドで事業を展開し、世界各国のプロモーションでディスプレイ広告を利用するグルーポン・ジャパンの担当者の方に、DSPの実際の使用感と今後への期待を語っていただいた。
アリスティザバル 絵美里氏
大学卒業後、国内外の化粧品会社のセールスプロモーションに携わったのち、米国でビジネスを学ぶ。その後、ボストンを拠点とするオンラインマーケティング会社を経て、帰国後グルーポン・ジャパン株式会社に入社。新規会員獲得をミッションとし、モバイルやSNSなど多岐に渡るオンライン広告の出稿を担当。
DSP活用にいち早く取り組むグルーポン・ジャパン
― 本日はお忙しい中ありがとうございます。まずは現在のプロモーション活動の内容を教えてください。
2010年の日本市場へのサービス開始から、新規ユーザーの獲得にあたってSEMやアフィリエイトをはじめ、インターネット広告に関しては、ほぼ全包囲的に実行し、効果を検証してきました。ディスプレイ広告においても、ほぼ全商品を実施し、効果検証を行っています。
現在はその中でも最適な配信に絞り、引き続き効果検証と改善を実行しながら、インターネット広告に留まらず、他の方法も模索しています。
― 貴社において、ディスプレイ広告はどのような位置付けでしょうか?
獲得効率のみで見るとSEM・アフィリエイトには劣りますが、登録率や購入率はディスプレイ広告の方が高く、弊社のプロモーションにおいては非常に重要な位置付けと捉えています。
例えば、SEMには属性がありませんが、ディスプレイ広告には年齢や興味対象など、広告に接触しているユーザーの属性が存在します。
日本市場における多数の広告と複数の配信検証によって、弊社と親和性の高いユーザーの年齢層や、対象となるユーザー層が回遊するサイトなども、ある程度把握できていますので、登録率や購入率の高いユーザー属性にターゲティング配信が可能なディスプレイ広告は、非常に重要な基軸と弊社では捉えています。
― 貴社は日本市場において、かなり早い段階でDSP導入を決定されましたが、導入に至った要因をお聞かせください。
導入に至ったポイントとしては、大きく3点あります。
1点目として、弊社は先進的手法には常にチャレンジをする社風であり、グローバルに展開している各国の事業部では第三者配信をはじめとしたアドテクノロジーの活用と検証が既に行われていたので、DSPの導入にあたって特段の懸念はなかった点。
2点目は、従来のディスプレイ広告の懸念として挙がっていた複数の管理画面での設計作業や運用管理、並びにレポーティングが統合して実施できる点。
最後の3点目は、費用対効果と効率化です。日本のディスプレイ広告は出稿における配信単価があらかじめ決定しているケースが多く、弊社が求める効果指標に合わせるためには、その都度、媒体社様やアドネットワーク事業者様に事前交渉を行う必要がありました。
DSPにおいては、RTB(Real Time Bidding)を前提とした配信が可能となるため、配信クリエイティブの知見に自信がある弊社としては、従来のディスプレイ広告の配信より、さらに費用 対効果に見合う効率的な配信が可能となると考え、導入を決定しました。
― ワールドワイドで展開する数多くのDSPの中から、国産のDSPであるMicroAd BLADEに決定された要因は何でしょうか?
現時点において、まず幅広いメディアやユーザーにリーチできることで優越が決まると考え、日本のメディアと商慣習をよく知る日本のDSPの方が、日本の消費者にアプローチするには最善と判断しました。
導入前に管理画面のデモも拝見しましたが、直感的で分かりやすいインターフェイスを導入していた点も導入を決定した要因です。
また、テクノロジーとは離れた部分ですが、MicroAdとは既存の取り組みで実績があり、効果を向上するべくクリエイティブ知見と紐づけた運用など、さまざまな取り組みを実施していましたので、BLADEにおいてもクライアントサイドの立場に立ったフォローをして頂ける安心感がありました。
― 実際に導入されてみて、どのような感想を持ちましたか?
まずは簡単だということ。BLADEを使用したマーケティングアプローチのプランニングさえ決定すれば、あとは基本的に自動最適配信なので、運用自体の負荷はほとんど発生しません。必要な情報にすぐアクセスでき負荷が減り、プロモーション展開の判断スピードが向上しました。
効果に関して正直に申し上げると、登録効率としては合格ラインですが、弊社が目標とする登録数にはまだ達していません。この点に関しては、まだまだ配信ボリュームが限られている現状があるので、今後の配信接続先の拡大と、オーディエンスターゲティングの設定開始などにより、改善できるものと期待しています。
― DSPの今後の配信にあたって期待することはありますか?
前述したとおり、まずは配信ボリュームの拡大。そして拡大と反比例して、より弊社の理想とするユーザーに合わせた精緻な広告が配信できるようになることを期待しています。弊社のサービスをユーザーが必要な時に、必要なタイミングで配信できるような時間概念を含めたターゲティングの精度向上などの導入も期待しています。
また、効果検証のサイクルにあたっては、まだまだ改善していただく点があると考えています。例えば、クリエイティブごとのさまざまな配信結果や効果検証、そこからの配信改善などが、よりシームレスかつスピーディーに実施できるようになればベストですね。
あとは、ユーザーの用いるデバイスが、今後よりフラットに拡大していくと考えていますので、PCのみならずスマートフォンやタブレット型端末への配信など、より多様化していくユーザー動向に合わせた配信ができるようになることも期待しています。
本取材に、快くご協力いただいたグルーポン・ジャパンに、この場を借りて深く感謝の意を述べたい。最終回となる次回は、実際の配信事例なども交えたDSPの今後の展望。そして、DSPと対になるSSP(Supply-Side Platform)の話も含め、ディスプレイ広告全体の展望を紹介する。