どこまでの領域を検索エンジンマーケティングと定義するのか?
このように、検索エンジンマーケティング市場は、10年あまりの月日を経て拡大してきたわけだが、この間に検索市場は技術的にも、事業環境的にも大きく変化した。
検索エンジン会社は実質、GoogleとMicrosoftの2社に収斂された。日本の市場に目を向ければ、Googleの技術を利用しつつ、独自性を打ち出すYahoo! JAPANとGoogleの2社で寡占化される2強の時代となった。
検索技術も、ユーザーにあわせて検索結果を個別化するパーソナライズ検索の登場により、従来当たり前だったテキストによる10本のリンクが表示される、という常識を変えた、Googleユニバーサル検索に代表されるような、動画・ニュース・ブログ・地域情報(地図)を一度に複合表示する検索の登場している。
今では、数分どころか数秒前の情報まで探せる検索エンジンも、10年前は1か月前までの情報しか探すことはできなかった。検索もPCからだけではない、モバイル、とりわけスマートフォンからの検索は急増している。

ウェブを見渡せば、ブログやソーシャルネットワークサイトなどの台頭により、ユーザーの発言やコメントがストリームで流れていく。「検索はインターネットの入り口」とその重要性が認識されたからこそMicrosoftやYahoo!が独自に検索技術の開発に乗り出したわけだが、現在はFacebookやTwitterなどの登場により、必ずしも検索に頼らずとも情報にアクセスできる。
サイト運営者の視点で見れば、一昔前はトラフィックの多くが検索エンジン経由であったものが、近年はソーシャルサイトからのトラフィックも無視することはできない程度に伸びてきている。ディスプレイ広告市場の拡大やアドテクノロジーの発展は、検索と無関係ではない。
従来、皆が考えていたであろう検索エンジンマーケティング「市場」を示す境界線は曖昧になり、今日のデジタルの世界で効率・効果的なマーケティングを展開していくためには、新たに対応・検討すべき課題も増えてきている。たとえば次のようなトピックは最近よく耳にするであろう。
アトリビューション、ソーシャル…次々と登場するキーワード
アトリビューション
他広告と比べて、従来のSEMは成果が高いと言われる。これは、検索行動を起こしていること自体、すでにニーズが顕在化しているユーザーを対象としているためであり、いわば検索連動型広告によって「刈り取っている」という側面もある。
しかし、たとえばテレビCMやバナー広告など、検索行動を誘発している要因があるはずであり、また、検索自体も複数回の検索を経て、最終的に(広告主が定義する)成果に到達していることが多い。このように、生活者の行動の流れ、製品に興味を持ったきっかけ、態度変容を理解し、マーケティングの全体最適を試みようとする取り組みである「アトリビューション」に注目が集まっている。
ソーシャルメディアと検索
「検索の時代からソーシャルの時代へ」や「GoogleとFacebook」という対立軸で語られることが多いソーシャルと検索であるが、両者は役割や性格が大きく異なるもので、どちらも重要である。
また、マーケティングの観点からは両者は互いに影響を与える関係にある。端的な例をあげれば、ソーシャル検索やリアルタイム検索は、各種ソーシャルサイトの存在なしには成立しえない。Search Engine Strategies Conference(SES)やSearch Marketing Expo(SMX)など、検索系の代表的な国際カンファレンスでも、ソーシャルのセッションが多く設けられるのは、単にソーシャルメディアが話題だからというだけではない。企業サイドからすれば、両者ともに無視できない存在であり、マーケティング最適化のために、どう向き合っていくかは重要な課題である。
本連載「デジタルマーケティングの近未来を読む」は、こうした近年注目をあつめるトピックについて解説しながら、デジタルマーケティングについて考えていく。次回以降は、以下のトピックについて順次解説していくので、楽しみにしていただきたい。
- 第2回:自動化と広告テクノロジー
- 第3回:アトリビューション分析
- 第4回:ソーシャルメディア時代の検索エンジンマーケティング
- 第5回:スマートフォンソリューション
- 第6回:これからのデジタルマーケティング