スマートフォンWebメディアの収益化もアドネットワーク活用がカギに
広告収益を最大化したいという意志は、スマートフォンアプリ/Webメディア運営者ともに変わらない。特に、Webメディアでは、PCからスマートフォンへ対応する移行期にあり、小さなメディアから、開始当初より大規模なトラフィックを抱える大きなメディアまで、さまざまに存在している。特に後者の場合は、できるだけ迅速に、収益性の高いアドネットワークを選択的に取り入れることがポイントとなってくる。
ただし、アプリの場合と同様に、自社で複数のアドネットワークを試し、その中から収益性の高いものを選ぶには、手間や時間の面で開発チームに大きな負荷がかかる。そこでngi groupでは、先行してアプリへの対応を展開していたAdStirを、このほどWebメディアへも対応できるようにした。その特徴や使いやすさはアプリ版と変わらず、導入の手順はさらに簡単になる。そのため、現在、引き合いもアプリ以上に続々と増えているところだという。
円滑なサイト運営を妨げるアドネットワーク切り替えの膨大な作業工数
ngi groupメディアプラットフォーム事業部事業部長の植雄平氏はこう話す。
「多くのWebメディアが、今ちょうどPCからスマートフォンへ移行している時期です。現状、1メディアあたりのPVは少なくとも、スマートフォンにおけるWeb利用の全体トラフィックは、端末の普及と比例して急激に伸びる傾向にあります。この流れに遅れずに乗るためにも、できるだけ早く、最適なアドネットワークを選定できるプラットフォーム環境を整備することが、重要なポイントだと考えます」
いち早く「AdStir」を導入して、確実に収益を確保しているのが、シーサー株式会社が運営する「Seesaaブログ」だ。PCサイトでは8.7億PVを誇る「Seesaaブログ」は、そのスマートフォンサイトも活性化しており、PCとスマートフォンを合計したブログアカウント数は350万、ユニークユーザーは1400万に拡大している。
同社メディア事業部の永井洋俊氏は、スマートフォンメディアの運営で課題になっていたこととして、「各アドネットワーク事業者のタグの設定や差し替えなどの調整を、開発のセクションが直接行っており、その作業が負担になっていました。また、広告の運用と改修はそれぞれ別のセクションが担当しており、収益を最大化するために全体的に相当の工数がかかっていたのも悩みの種でした」と話す。
350万アカウント超の大手ブログサービス「Seesaaブログ」が導入
広告掲載作業を効率化、収益も最大に
「Seesaaブログ」のスマートフォンサイトが利用していたアドネットワークの数は、ピーク時で4、5社。収益額の波が激しく、運用とシステム担当が異なることから、急な配信増加に対応する作業が後回しになってしまうこともしばしばだったという。
臨機応変な対応ができなければ、その分、取りこぼしが出てしまう。「自社でアドサーバを開発する話も出ていましたが、そのためのコストやリソースをどう捻出するかということがネックになり、これも進展しませんでした」(永井氏)。
そんな中、AdStirがWebメディア対応したと聞き、これまで発生していた煩雑な作業を自動化するために導入を決定。結果、ピーク時と同様の4、5社のアドネットワークを効率的に配信しながら、広告収益の最大化が常時可能になった。
特に、高単価案件が入った場合、営業サイドでの調整が可能になったため、収益機会を最大限に活かす対応もできるようになったことが大きいという。また、配信予約やバナーごとのレポーティングの使い勝手がよい点、自社広告と複数アドネットワークの配信比率を1%単位で細かく設定できる点も、収益を最大化するのに有効に働いている。
「AdStir導入にあたり、無料のサービスということでレスポンスはどうなのか、自動化という点から他社のサーバーが落ちたときはどうなるのか、といった懸念がありましたが、それらはまったく問題ありませんでした。インターフェースも使いやすいので、当社のスタッフにも好評です」と永井氏。
AdStirのアドサーバ機能により、2012年から純広告も展開
また、アドサーバ機能への要望は高いものだったが、AdStirの機能にも非常に満足しているという。アドサーバ機能が備わったことで、構想段階にとどまっていた純広告の取り扱いも可能になった。そのため、同社では2012年早々に純広告の展開も開始する見込みだ。
AdStirを導入してから、「特に問題が起きることなく、売上も順調に推移しています」と永井氏は手応えを語る。日単位のタイマー設定や、インプレッション販売、クリック販売など、さまざまな広告展開ができそうだと期待を寄せる。
アプリおよびWebメディアへの導入事例とも、AdStirの利用に何らデメリットがなく、非常に利便性高く使われていた。リリース後、わずか3ヶ月あまりでのこうした反響は、進化の速いネット業界でも注目を集めている。導入した企業がそれぞれ手応えを感じ、意欲的に活用していることから、AdStirへの次なる要望も今続々と寄せられている状況だ。ngi groupでは、そうした声を元に、さらにAdStirの機能を磨いていく予定だという。
直近ではスイッチングSDK拡張、将来的にはRTB実装からグローバル展開へ
AdStirの今後について、ngi groupメディアプラットフォーム事業部 チーフプロデューサーの堺真幸氏は、「まず取り組みたいのは機能の強化」と話す。直近ではスイッチングSDKを用意し、早々にリリースする予定だ。この機能は、AdStirSDKを導入することで、アドネットワークSDKの更新や導入を必要とせず、AdStirの管理画面で全てのアドネットワークの管理が完結するという、非常に利便性の高い機能である。
さらに、レポートAPIの実装も来年には完了。それぞれにアカウントに入ることなく、AdStirで各アドネットワークの収益性を見られるようにもなるという。
来年早々には、「RTB(Real Time Bidding)を実装し、媒体のさらなる収益性の向上の仕組みを提供する」と堺氏。具体的には、DSP(Demand Side Platform)※が提示する複数の案件をリアルタイムで比較して、より高い方を媒体側が選べる仕組みを確立する。
また、アドネットワークについては、国内はほぼ対応済みであるため、今後は海外の対応に注力していく意向だという。前回紹介した『YourGolf』のような、海外ユーザーを多く擁するアプリのさらなる収益化をバックアップするとともに、国内、海外それぞれの広告主/媒体に対して、ネットワーク広告の配信が可能なプラットフォームへと拡張していく計画だ。
※DSP(Demand Side Platform)……広告主側プラットフォーム。複数のアドネットワークやアドエクスチェンジに対し、一括して出稿管理が可能となる。
規模にかかわらず、良質なコンテンツを提供する媒体を支援したい
堺氏は、「規模にかかわらず、すべての媒体をAdStirでサポートできるような仕組みを構築していきたい」と話す。現在、スマートフォン市場を盛り上げるべく、さまざまなサービスが展開されているが、AdStirは特に収益化という面で支援しようというのだ。
「スマートフォンアプリ/Webメディア運営者様の良質なコンテンツ展開をサポートしたいというのが、我々の事業の根本にあります。これからも、媒体の規模に寄らず、使いやすいサービスを展開することでバックアップし、業界の活性化に寄与したいと考えています」と堺氏。
こうした考えのもと、今後もAdstirはさらに進化したスマートフォン向けSSP(Supply Side Platform)として、価値を高めていくだろう。
アプリの事例については、こちらの記事をご覧ください。
⇒ 『YourGolf』『みんなのお弁当』が導入 無料アプリの収益最大化を支援する「AdStir」