ジョブズさん、天才コピーライターですね!
なるほど、スティーブ・ウォズニアックさん(アップルの創業者の1人)の指摘は、コピーライティングについても言えることだ。それも、とても大切なことだと言っていい。
TechCrunchの報道によれば、ウォズニアックさんはアップルに一抹の不安を感じているという。もちろん、スティーブ・ジョブズさんが亡くなった後の話だ。
どこに不安を感じたかというと、iPhone 4Sのプレゼンテーションの際、デュアルコアプロセッサに触れたときだ。ウォズニアックさんはこう語っている。
「スティーブ(ジョブズ)なら、われわれにデュアルコアプロセッサのことを考えさせたいとは思わない。われわれが知る必要のあることは、期待がどんなふうにかなえられるのか、自分たちがどんなふうにインターネットにつながるのか、ということだけだ」(CNET Japanより抜粋)
さらに、技術者が重要だと考えることと生身の人間にとって大事なことは違うという考え方を強く持っているとも語っている。たしかに、ジョブズさんは機能やスペックを説明するときでも、決してそのまま語ることはしないよね。つねに“体験”をシンプルで分かりやすく、記憶に残るコトバでイカした表現をする。だから聞き手はワクワクする。
iPadのプレゼンテーションで、ジョブズさんはA4チップについて「ヒューンって感じさ!」と紹介した。高速でも、スピーディーでも、すげぇ―速いでもなく、ヒューンだよ。分かりやすいにもほどがある。
コピーがコピーとして成立する2つの大切なこと
“短く分かりやすくキレがある”ジョブズ流の表現は、キャッチコピーを考える上で参考になるが、今回のポイントは冒頭のウォズニアックさんの話にある。そこから、コピーがコピーとして成立するための重要なセオリーを2つ、抽出してみた。
- 商品を使う人が、享受できるメリットを言う
- 言いたいことではなく、商品を使う人が知りたいことを言う
この連載の第1回でも、コピーの基本の基本として<商品ではなく価値を語る>ことを挙げた。分かりやすく言いかえれば、<メリット(ベネフィットということもある)を伝える>ということになる。コピーライターなど広告制作者は、必ず新人時代に叩きこまれることだ。
だから、広告のクリエイティブにたずさわる人は、商品の説明を聞いても、メリットは何だろう?と探るクセがついている。ところが、そのように考える習慣がないと、商品を使う人のことまでイメージしないので、機能がどうだ、性能がどれだけ改善されたかといった、自慢と思われるような伝え方をしてしまう。
情報の受け手も機能を知っただけで、すぐにメリットが分かるほどカンがいいわけではないし、だいいち考えるのは面倒だ。言いたいことが言えたかもしれないが、受け手がピンとこなければ、感動も共感も生まれない。分からないとスルーされる。
納得してもらいたいなら、コピーには、受け手の知りたいことや期待がどう実現されるかが書かれていないといけない。コミュニケーションは、送り手と受け手の間に理解や共感が生まれてこそ成立する。シンプルなことなんだけれど、つい忘れがちだ。
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