DSPが引き起こすマイナス面
MZ── レオさんから見て、DSPによる最適化が引き起こすマイナス面はあるのでしょうか?
加藤:ひとつは、先程述べたような「アホマーケター」が量産されてしまう危惧です。配信面=海、配信ユーザー=魚群とした場合、多くの有望なユーザーがいる場所までは自動的に到達できるので効率化できる反面、「売るための仕組みづくり」を考えなくなるマーケターが増える恐れがあります。
もう1点は機械化による”自動最適の罠”です。むしろ、こちらの方が危険です。
MZ── それは、どういう意味でしょうか。
加藤:自動最適化はシステムが実施するため、従来行っていた効率化のノウハウが知見として溜まらなく恐れがあるということです。
自動最適が登場する以前は、多くのディスプレイ広告をあらゆるパターンで実施してみて最適なパターンをスプリットランテスト(A/Bテスト)して探り、その広告主・商品にとっての最適解を探るのが常でした。
例えば、今まではクリエイティブを入稿する際は“キャッチコピー違い”や“写真違い”や“デザイン違い”などあらゆるパターンをスプリットランテスト(A/Bテスト)して、効果測定データをしっかりと検証し、キャッチコピー、写真、デザインの各要素において、どのようなクリエイティブだとレスポンスが高まるのかのノウハウが、マーケターに溜まっていきました。
ただし、自動最適化はシステムが実施するため、これまでのような効率化のノウハウが知見として溜まらなく恐れがあります。
検証によって得られた知見やノウハウは、今後のクリエイティブ作成の際に大きく役立ちますから、自動最適を行う際に、マーケターは今まで以上にデータの見方や行方を注視しなければなりません。
西山:現場からの貴重な意見ありがとうございます。弊社のDSPは効果検証のための原稿入稿は事実上無制限に行えますので、広告主の用途に応じて比較検証して頂きたいですね。
レポートに実装できる項目も現在が完成形ではないので、ご要望を取り入れ進化させていきます。
MZ── DSPの配信手法の一つであるオーディエンスターゲティングについてはどのようにお考えでしょうか?
加藤:今までの広告、マーケティングは、いかに相性のよい広告メニューを探り当てるのか? という点が主な検証項目でした。オーディエンスターゲティングの登場により、ユーザーに直接広告を配信することが可能となるので、それは大きな進化だと思いますよ。
私が専門とするダイレクトマーケティングは、広告での初回受注は単なるきっかけであって、その後のリピートやクロスセルで利益を出すことがビジネスのキモとなります。
つまり、広告枠ではなく人である消費者とのリレーションがすべてですから、最終消費者と似ている趣味趣向を持っている、「まだ出会っていないユーザー」に広告を配信できるというのは、広告主にとっても大きな魅力ではないでしょうか。
MZ── 最後に加藤さんから見て、今後のDSPへ期待することはなんでしょうか?
加藤:今後も広告主のディスプレイ広告に対する費用対効果の意識はどんどん高まり「売りに直結するマーケティング」を求めてくるでしょう。
DSPには、単品通販の新規獲得だけではなくCRMモデルにも切り込めるようなデータマネジメントの分野での技術進化を期待したいですね。
あと、誰でも簡単にギロッポンでお目当ての女性を見つけられるような技術もお願いします(笑)。
西山:弊社もDSPはじめさまざまなソリューションを提供していますが、アドテクノロジーは目的でなく手段と認識しています。より広告主が価値を体感でき、マーケターが豊かになるような技術の向上に邁進してまいります。
ギロッポンは残念ながら、技術ではなくトークなど人間味に関する部分なので弊社では差し控えたいと思います(笑)。