アイテム課金が上位の常連、クオリティ重視の時代
物延:最近の売れ筋アプリの傾向についてお聞きしたいです。
水野:まず分かりやすいとこでいうと売上ですね。2011年を見ると、まずグリーが1位を占めていて、その下がキングダムクエストで、ハンゲームのアプリが次にきていたり、無料のアプリでアイテム課金型のアプリが上位3位以内を行ったりきたりしている状況が見られます。
そういったアプリがランキングの上位をずっと占めている傾向が続いていて、2010年の上位アプリを見ると、アキネーターだとか、アプリ1本単価で販売していたものが上位を占めていましたが、完全にアイテム課金の覇者がランキングを制している状況が定着しつつあります。無料アプリを配って、その中でアイテムを購入させることに成功しているアプリは多額の利益を生むようになっていると言えます。
物延:アイテム課金型アプリの登場は今に始まったことではないですが、いわゆるプラットフォーム型でアイテム課金のものが圧倒していることがランキングを見ても明らかですね。
水野:それから、もう一つの大きな変化が平均単価です。DLランキングの上位にあるものを調べてみたら、値段が10%くらい上がっているんです。高いものが売れるようになってきた。去年までは100円アプリ市場といった感じだったのですが、800円や1200円のものでも良いものにはお金を払うという状況になってきました。
物延:ユーザーの視点から考えると、100円のプチゲームのような、ちょっとだけ楽しむアプリに飽きて、もっとガッツリ楽しめるものだったら有料で買ってもよいというような流れを感じますよね。
水野:iPhoneじゃなくてiPad用なんですけど、8万5000円というアプリも出てきてます。
物延:それはすごい(笑)
水野:お医者さん向けアプリで。それが売り上げランキングの10位くらいにきていた時もあって驚きでした。医者が診察で使うための腰痛診断のアプリでしたが、医者から見れば中身が伴っているということなんでしょうね。そういった専門性の高いアプリであれば売れるようになってきています。逆に安いアプリは無料で広告収入を狙っていくという流れになっています。
物延:確かに二極化していますよね。中身を充実させて高く売るか、無料で出して広告で稼ぐか。広告収入で稼ぐ場合は、いかに広告をクリックさせるかがポイントになるので、姑息にクリックさせる無料アプリも増えていて、ユーザーにとってみれば有料でも数百円なら広告露出の無い質の良いものを選ぶようになってきている気もしますね。
水野:そうですね。中身が良くないとお金を払ってもらえないですから。クリエイティビティという面では2010年と2011年では格段にレベルが上がっていると思います。ランキング上位を大手のベンダーが占めているというのもそういった点から言える傾向ですね。
5~10社に集約されつつある。開発コストもある程度かかっていますし、CMも打ってますし。ですから参入の敷居がどんどん高くなっていると言えます。この傾向が2011年12月あたりからAndroidにも出始めています。
Androidの売り上げランキングを見てみますと、それまでATOKがずっと1位をキープしていたのですが、2011年12月9日あたりからグリーが1位を独占し始めました。Androidでも無料で配ってアイテムでお金を取るというやり方できっちりと稼げるようになっている証拠です。