「蘑菇街(mogujie.com)」は、女性、ショッピング、シェアの3つの要素からなるソーシャルコマースサイトである。消費者がソーシャルを通じてネットショッピングするのを支援するサービスだ。2011年2月14日にローンチしてから13ヵ月で登録ユーザーは600万人、1日あたり160万ユーザーで8,000万PV、2012年2月における淘宝网(taobao.com)との総取引額1.5億元(約19億円、2012年5月10日時点)となった。
蘑菇街(mogujie.com)のCEO陈琪氏は、「なぜユーザーはシェアするのか」を考察してきた。同サイト上の情報発信・シェアは、ビジネス目的でバイヤー等が行なっているものが78%を占めており、残り19%が純粋なもの、拡散されるものは3%に限られるそうだ。
mogujie.comでユーザーが行うアクションはさまざまで、1日約200万回にも上る。もっとも多いのが「♡喜欢(好き)」ボタンをクリックするという行為で、100万回近くも押されるという。比較して、自ら写真を投稿する、コメントする、「関心がある」を押すなど主導的なアクションは少ない。
ユーザーのアクションに関する上記データは、2012年3月時点での自社調査のもの。TechWeb報道によれば、4月時点では全体で約140万のアクション、うち「♡喜欢」のクリックは約130万回で9割以上を占めるという。
こうした傾向から陈氏は、中国のユーザーは本当の意味で「シェア」をしたいと思っているのか頭を悩ませた。そしてたどり着いた結論は、「♡喜欢」をクリックするのは、他人とシェアするためでなく、自分が好きだから押すというものだった。
これを受け、商品の陳列、分類、買い物案内などの転化率に着目し、「逆水行舟」式商品配列に変えた。ユーザーが新しく投稿したものから順に、上から下へ滝が流れるように配置、多くの人が「♡喜欢」を押せば上部に残り、押されなければ落ちていく仕組みだ。女性が好きな、新しい流行りものが見つけやすくなった。
陈氏は、ユーザーが何のためにシェアするのかは重要ではない、と考えるようになった。自分のために「♡喜欢」をクリックする「利己的」なユーザーには、そのまま利己的な行動をとってもらえばよい。しかしながら、その利己的な「シェア」は多くの人の目に触れる。ソーシャルコマースを提供する側は、それが結果として、利他的な行為になるようにすればいいと言う。
さらに、mogujie.comでは共同購入の仕組みを実現させた。店側と交渉して、さらに価格を下げることもできるという。これも利己的な購入意欲が、自然に利他になる仕組みだ。
最後に陈氏はアダム・スミスの「個人の利益を追求することが公共の福祉につながる」を上げ、これはまさにmogujie.comを意味していると述べ、講演を締めくくった。