中国の民間における自動車の保有率は、2008年から増加傾向にある。自動車関連のネット広告費も増加しており、2012年には41.3億元~51.7億元(約517億円~648億円、2012年5月21日現在)になる見通しである。
中国の自動車マーケティングで注意しなければならないのが、1つの国単位でひとくくりにできないことである。
中国の都市は、商業的な視点から一級都市、二級都市、三級都市と、地域ごとに区分されている。一級都市は、上海、北京、天津、広州などいわゆる都会で消費も盛んな都市、二級都市は地方の中核都市、三級都市は二級都市以外の地方都市を指す。ただし、単純に数字が大きくなるほど消費力が低くなるわけではなく、場所によって住む人も異なればニーズも異なると考えるべきだ。
たとえば、自動車に関する情報収集について、一級都市、二・三級都市ともに1位は「ネット」だが、「友人の紹介」は二・三級都市のほうが割合が多い。
また、消費者が自動車を選ぶ時に注目する項目として、二・三級都市は一級都市に比べて、「価格」「排出量」への注目が高い。価格については、一級都市は12~20万元(160~260万円)あたりを望む割合が高く、二・三級都市は12万元以下を望む割合が高い。
自動車関連のネットメディアとの接触は、二・三級都市は「自動車関連ニュースサイト」を「15~30分」閲覧する人がもっとも多いが、一級都市では「BBS」を「30~60分」閲覧する人がもっとも多い、などである。
こうした都市ごとに異なる特徴をリサーチした上で、マーケティングの方法も変えるべきだと刘雷鸣氏は言う。戦術の1つである、オンラインマーケティングも同様である。
中国で活用されているオンラインマーケティングの手段としては、SEO/SEM、QQ、ポータル(中国では自動車のみのポータルサイトがある)、メール、ソーシャルメディア、ネットメディア、そしてバナー広告などがある。
上海フォルクスワーゲンの新POLOはソーシャルメディアを活用した。オンライン登録すると抽選で「新POLO」の新車、または関連商品が当たるという抽選キャンペーンが中国版ツイッター「微博(weibo)」で拡散し、多くの人が参加したことでブランドの人気が高まった。
モバイル、Appsの事例では、TOYOTAのbackseat driver が日本同様、中国でも展開された。前を行く「パパカー」を、GPS機能によって乗っているクルマと同期して走り、そのパパカーを自動的に追いかける「マイカー」を左右に操作して、一緒にドライブを楽しむというもの。
クロスメディアの事例では、こちらも上海フォルクスワーゲンの「大衆自造」(THE people's car project)キャンペーンがある。アイデアを公募して新しいコンセプトの自動車を作るというものだが、オンライン、モバイル、オフラインマーケティングが連動して行われた。
ソーシャルメディアやスマートフォンの登場により、自動車のマーケティングにも大変化が起きている。正しい方法はまだ見つからないが、変化していけば道が生まれるとして、刘雷鸣氏は講演を締めくくった。