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「“カスタマー・フレンドシップ・マネジメント”で友達のような関係を顧客と構築」─ スタートトゥデイ 清水俊明氏


囲い込みではなく、友達のような気配りをもって顧客に接する

 青葉――お話を伺っていると、それぞれの環境で、よく働き、よく学び、成長していらっしゃいますね。お話にありましたスタートトゥデイでのミッション「CRMの組織と仕組みづくり」は、どのように実現されたのですか?

 まず、前澤に「社内異動でSEが一人ほしい」とお願いしました。CRMに本格的に着手するには、データを分析する分析者、それを元に企画を立てるプランナー、それをカタチにするデザイナー、そしてシステムを構築するSEが必要です。このうち、まずはSE以外の部分を私が担うことにし、半年でCRMを実行できるプラットフォームを確立しました。

株式会社スタートトゥデイ マーケティング本部 本部長 清水俊明氏

 ECサイトですから、当然社内に基幹データベースはありましたが、エンドユーザーが直接扱えるデータベースはなく、まずは必要なすべてのデータを統合し、新たにデータウェアハウスを構築しました。プロジェクトのキックオフから約2ヶ月後の2010年年末には構築し終わりました。

 青葉――約2ヶ月で構築ですか? それはすごく速いペースですよね。

 そうですね、なぜこんなに速くできたのかというと、見積もりの段階でエンジニアの人件費を言い値にする代わりに、優秀なエンジニアをアサインしてもらったからです。

 予算は限られていますから、費用を抑える部分は抑えました。しかし、人件費は金額の制限をつけるとそれなりの能力の人しか出てきません。だからエンジニアに関しては「この期間でこの仕事ができる人をアサインしてほしい」というオーダーをしました。短期間で難易度も高いプロジェクトだったので、一番優秀な人達をつけてくれたんです。

 能力や経験だけでなく、私は一緒に仕事をする人の人間性もとても重要だと思っているので、短期間の仕事でも出来る限り事前にお会いし、ビジョン、ゴールを自分の口で語るようにしています。結果的に、エンジニアの方々は私たちの気付かないところまでケアしてくれて、いいチームワークで進められました。そして、年明けから初期分析を進めながらマーケティングオートメーションシステムをつくり、半年後の春にはローンチしました。

 青葉――貴社のCRM部門は「CFM部」というユニークな名称ですが、これはどのような背景と意図がおありなのでしょうか。

 「Customer“Friendship”Management」といって、前澤の造語になります。CRMというと囲い込みといった言葉が浮かびますが、そんな上からの目線ではなく、お客様一人ひとりの変化やその背景にある気持ちを見逃さずに、まるで友達のような気配りや思いやりを持って対応しよう、という概念です。直接は顔を合わせませんが、だからこそ信頼関係の構築に重点を置くことを意図したコンセプトです。

 現在では、先ほどのオートメーションシステムによって実現した、ライフサイクルやイベントに基づいた1to1マーケティングを推進し、それぞれに最適化したメールを日々80種類ほど運用しています。以前より開封率は5倍、購入CVRは10倍にもなりました。

マス広告×ソーシャルדCFM”で広がるコミュニケーション

 青葉――これからの取り組みについては、どのようにお考えですか。

 2年前に比べれば、CRM戦略のPDCAの実践に漕ぎ着けたのでそれなりの手応えはありますが、まだまだこれからですね。この春にマーケティング本部長の職に就き、CFM部と共に広告宣伝部も管轄することになったので、二部門のシナジーを高めていくつもりです。ビッグデータを活用して正しい顧客インサイトを把握し、マス広告からCRMまでメディア横断的なコミュニケーションを図ることで、既存顧客だけでなく広く世の中へZOZOTOWNの存在感を打ち出していけると考えています。

株式会社サイコス 青葉哲郎氏

 青葉――年末には大がかりなツイッターキャンペーンなども代理店を使わずに企画し、テレビCMを超える成果を収めたと聞いていますが。詳しく教えてください。

 そうですね、ツイッターキャンペーンは12月下旬のたった1週間の施策でしたが、2万ほどだったフォロワーが初日で30万、一気に42万にまで増えました。この結果は、私達自身も反響の大きさに驚きました。

 実は、12月初旬に急に社内で話が持ち上がり、代理店や制作会社も通さず、すべて内部で企画制作したんですよ。ソーシャルメディアでここまでのインパクトを生み出せるとは思っていなかったので、今の生活者とのコミュニケーションについて改めて考えさせられました。テレビCMではリーチできなかった層がいると知ったことも大きな発見でした。

 ただ、テレビCMで獲得できる認知とはまた違うので、ソーシャルメディアに一本化すればいいわけでもない。これからはマス広告、ソーシャル、そして“CFM”でいかにお客様と友達になれるか、そこに大きな可能性があると感じています。

 元々、私のキャリアは広告宣伝から始まっていますが、若い頃から「仕事を通して人々の心の豊かさ向上に貢献すること」を自分の軸としてここまでやってきました。広告宣伝でのブランディングとCRM戦略での関係構築を組み合わせることで、「お客様に昨日よりも新しい発見、楽しくなる提案」を実現し、「ファッションを通じて一人一人の日々の生活が幸せで笑顔になる」ことのお手伝いができれば、きっと社会もよくなっていくと信じています。

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人間的な成長を手助けするのがマネジメントの役割

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この記事の著者

青葉 哲郎(アオバ テツオ)

サイコス株式会社 代表取締役
東京都出身。明治大学政治経済学部卒業。1994年4月 ジャスコ (現イオン)入社。1995年マイクロソフト入社。トップセールスを経て、最年少ブランドマネージャに就任。MSN事業開発など担当。2001年インテリジェンス入社。マーケティング部を設立し『はたらくを楽しもう。』で同社を転職ブランド1位に。2008年リクルートエージェント入社。『転職に人間力を。』で新ブランドを立ち上げ、コスト減と広告効果の最適化...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2012/05/22 18:04 https://markezine.jp/article/detail/15522

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