人間的な成長を手助けするのがマネジメントの役割
青葉――従業員同士が親友になれるように、との意図で名付けられたEFM部(Employee Friendship Management部)も、非常にユニークですね。
そうですね。CFMもEFMも、昨年の期初に前澤が提示したビジョンですが、その後に部署名に冠したことでさらに社内に意識が浸透したと思います。組織が急に拡大するとどうしても人間同士のつながりが希薄になりやすいので、チームワークをどう保つかは、伸びている企業ほど課題だと思います。この会社に、私は最初からマネジメントとして入社しているので、スタッフを育てることも常に意識しています。

例えば、当社のデザイン室には素晴らしいアートディレクターのJUN WATANABEが在籍していますが、彼の下でならデザイナーとして大変貴重な経験が積めるでしょう。でも、デザイン室にいたデザイナーがマーケティング本部に異動になることもあります。私自身の考えとしては、会社の戦略と本人が好きなこと、本人が得意なことが重なる領域に役割があるのが理想です。
その上で、異動した若手デザイナーがどうしたら生き生きと働けるか、周囲から「前よりも伸びたよね」と言われるようになるか、マネジメント側が彼らの活かし方を考えるべきです。マネジメントに関しては、私自身がマーケティングの領域においてもいろいろな立場を経験したことが活きていると思います。
スタッフを育てるといっても、スキル中心に教えるのではなく、私が重視しているのは対話する中で人間としての心の成長を手助けすること。自分を振り返っても、常に人間力を高めることが重要だと思ってきました。だからスタッフと食事などに行っても、業務の話よりも人としての価値観を聞いたり、自分の仕事観を話したりしているんですが、そうすると彼らの仕事の姿勢が変わってくると考えています。
青葉――ただ、若いうちは視野も狭いものですよね。何かスタッフを奮起させるポイントはあるのでしょうか?
おっしゃるとおり、年長者の思いを100%素直に受け止める若者なんて少数ですよね(笑)。でも、こちらも傾聴し、対話の中で相手の真意、思いを理解しながら、自分の言葉で大切だと思うことを伝えていけば、、自然と相手も成長していくし、更には自分の成長にもつながります。私自身、様々な場面でたくさんの方の愛情に支えられ、励まされここまで来ました。
私とスタッフの出会いというのは、きっかけは同じ会社に勤めていることでできた縁ですが、これは偶然ではなく、必然なんだと思っています。なので、どのようなことが起きても、それは各々の成長にとって必要な出来事しか起こらないと考えています。
人と人との関係のおおもとをたどれば、そこにあるのは愛情です。生まれたときはまず父母から、その後は兄弟や友達から、社会に出ればその仲間から、私たちは大きな愛情を受けて感受性を育ててもらっている。だから、また次の関係を築けるし、育ててくれている社会にも貢献したいと考えています。
社会に目を向けて、次世代を担う若手スタッフを育てていかなくてはと思ったとき、今関わっている人たちに分け隔てなく圧倒的な愛情を注ぐことが最も大事だなと。40代になってまだまだ未熟だなと日々反省するとともに、人間力×精神力×知力×体力共にバランスのとれた心ある人間に成長したいと思うようになりました。
青葉――最後に、清水さんが考える「マーケティング・プロフェッショナル」について教えてください。
すべての時間を、あらゆる可能性に賭けている人。とくにマーケッターは、仕事とプライベートの区分けが無いほうがよいのではないでしょうか。なぜなら、日常のすべてのことから学びや気づきがあるからです。また、自分がまだつかめていない可能性も無限大にあるはずですから、全力でそれに賭けられるのがプロの姿だと思います。僕もそんな姿勢で仕事を通して人の心を豊かにし、社会全体の幸せにつなげていきたいと考えています。(文・高島知子)
お客様は、囲い込むのではなく友達に、従業員とは親友になる。CFM(Customer Friendship Management)、EFM(Employee Friendship Management)という言葉は、これからの時代のお客様や従業員との関係性を端的に表現しています。
取材後、オフィスの中を見学させていただいたのですが、会社の隅々までに、スタートトゥデイのDNAが散りばめられ、成長する会社特有の個性や熱気を感じました。会社は、積極的に社内恋愛を奨励していて、多くのカップルが誕生しているという話を楽しそうにみんなで話す様子が印象的でした。平均年齢27.8才、この若い会社の成長がとても楽しみです。
