検索キーワードの掛け合わせに見るスマートフォン環境のユーザー行動
次に、スマートフォンで2語以上のキーワードを掛け合わせた検索による流入の割合を見ると、煩雑な文字入力が容易なPCよりも、スマートフォンからの検索流入の割合が高い傾向にある。
これは検索文字入力時のサジェスト機能など入力支援機能が働き、多くのユーザーに使用されているという状況が考えられる。加えて、スマートフォンを積極的に活用するユーザー自身の検索活用リテラシーが比較的高いためとも考えられる。
もしくは、小さな画面上で検索結果をスクロールして何ページも見るのは面倒なために、あらかじめ絞り込んだキーワードの掛け合わせで検索をするユーザーの存在など、複数の要因が仮説立てて考えられる。
そして、スマートフォンからの検索流入キーワードで最も特徴的なのは、ユーザーの目的が明確で「その場で必要な情報」、即時性の高い検索キーワードが多く見られることである。
例として、サイトや商品・サービスのブランド名を指名するキーワードの検索流入が検索流入数全体に占める割合は、PCよりもスマートフォンのほうが高い傾向にある。これは、外出先で広告を目にしたり、ふと思い立ってその場で何かを調べたい場合など、面倒なキーワード入力よりも、「その場で想起されたブランドをスマートフォンで検索」という明確な目的を持った行動がPCよりも顕著であるためと言える。
この「スマートフォン環境での検索はPCよりもブランド想起の傾向が強め」という特徴は、スマートフォンでの利用想起を喚起するサイトブランドプロモーションの重要性を示している。
一方、PCからの検索流入キーワードに目を向けると、自宅や会社のPCでじっくりと比較検討や調査をしているためか、より深掘りした検索キーワード(価格、スペック、口コミなど)の組み合わせによる流入の傾向が強く見られ、スマートフォン環境との利用シーンの違いがうかがえる。
そもそも検索行動で「今その情報が知りたい」というモチベーションは、PCもスマートフォンも同様だが、例えば「○○で検索」のようなテレビCMや屋外の広告による想起、あるいは広告に関連した人名やキャラクター名の記憶など、「強い印象を持つキーワード」の検索流入割合は、スマートフォンの検索流入の方が高い傾向にあり、「気になったらその場ですぐにスマートフォンで調べる」という行動特性が顕著に現れている。
Webサイトのモデルごとに見るスマートフォン検索流入キーワードの違い
では具体的に、Webサイトのモデルごとのスマートフォン検索流入キーワード解析事例を見てみよう。
ある宿泊業界のサイトでは、サイト上で案内している宿泊場所に隣接した施設の検索、プール、映画館、水族館といったレジャー関連キーワードの検索流入が多く見られる。
ここから「これから遊びに行くために近隣の施設をその場ですぐ調べる」というユーザーのシチュエーションが思い浮かぶが、一方でゴルフ場やスキー場といった施設に関連する検索流入キーワードでは、PCからの検索流入の割合が高い。これは、本格的なレジャーを楽しむ前に、旅行行程の下調べのためじっくり検索で調査しているというユーザーの行動特性が現れていると推察できる。
また、ECサイトのスマートフォン検索流入キーワードでは、水着、浴衣、喪服など、行楽イベントや急な祭事の発生で、比較的「直近で必要となるアイテム」についての検索流入キーワードの割合がPCよりも高く、すぐに探したいというスマートフォン検索のユーザーが求める即時性がうかがえる。
その他、施設の無料利用の会員特典があるサービスサイトでは、自分の現在地点と施設名を掛合わせたキーワードでのスマートフォン検索流入が多く、施設に近づいた際に利用状況を確認しているシチュエーションがうかがえる。
このように、Web解析のスマートフォン検索流入キーワードを集計すると、いま気になったこと、いま知りたいこと、いま行きたい場所、いま必要な物など、即時性の高い検索行動傾向があることが見えてくる。これまで述べてきたことは、いざ自分がスマートフォンユーザーの立場になって考えれば、当然の検索行動であり想像もたやすいことでもあろう。
しかし、その行動仮説を実際にWeb解析ツールの検索流入キーワード調査で可視化し、検証することが重要であり、データを見て初めて発見できる未知の事実や仮説もまだまだ多く眠っている。
貴方の管理するサイトがWeb解析ツールを導入されているのであれば、スマートフォン検索流入キーワードを解析し、ユーザーのモチベーションや行動特性をじっくりと検証することをお勧めする。集客施策の拡大に役立つ新たな発見が、きっとあるだろう。