検索エンジンのように読むWeb読者には「チャーチル式」がオススメ
第二次世界大戦中の1940年にイギリス首相についたウィンストン・チャーチルは、各セクションの長にこんなステキなことを言ったそうだ。
「われわれの職務を遂行するには大量の書類を読まねばならぬ。書類のほとんどすべてが長すぎる。時間が無駄だし要点を見つけるのに手間がかかる。(中略)報告書をもっと短くするようにご配慮願いたい」
さらにチャーチルはこんな指示を出した。<要点は短くまとめて><見出しを並べたメモを用意して、足りないところは口頭で><複雑な分析や統計は付録で>。なんとこれ、Webのリーダビリティ向上にもつながるアドバイスだ。
ボディコピーでもいくつかの特長(あるいは機能)を並べて説明しなくてはいけない場合がある。もちろん簡潔に書くことは基本であるが、それが250字くらいになるといささか読む気が失せることもあるかもしれない。
そんな時はチャーチルがヒントになる。コツは要点と箇条書きで構成すること。今度はiPad搭載のiSightカメラのコピーを参考に例文を作ってみた。
例文
新しいiPadに搭載の「iSightカメラ」は5メガピクセル。目を見張るほど美しく鮮明な写真と動画が撮影できます。それを実現したのが先進的な光学機能の数々です。
- キャンドルの灯りでも美しく撮れる裏面照射型センサー。
- カンタンなタッチ操作でフォーカスも露出も設定。
- 最大10人の顔のピントや露出を自動調節する顔検出機能
- 映像のブレを防ぐ自動手ぶれ補正機能
- 驚くほど鮮やか、高精細1080pのHD画質
ケース・バイ・ケースはあるにせよ、Webではこれくらいの潔さがないと読み手は食いついてこないだろう。箇条書きした特長のリストでも機能の名称よりも興味を引きつけるメリットやキーワードをなるべく先頭(左寄せ)に置くのが定石だ。
商品パンフレットなど印刷物とは違った見せ方ではあるが、ネットリテラシーの高い読み手は、まるで検索エンジンのように文脈とは無関係で言葉をピックアップするものだ。見出しそれぞれの詳しい説明は見出しと一緒に簡潔に説明したり、別のページにリンクさせて見せるのがいいだろう。
簡潔に書く、あるいは簡潔に見せることは、これから普及するスマートフォンやタブレットPCのディスプレイを考えると重要になる。気まぐれでせっかちなWebの読み手に小さな画面でもパッと言いたいことが表示できて、しっかりとメッセージを伝えるには、「簡潔に!もっと簡潔に!」コピーを書く必要がある。ほら、シンプル・イズ・ベストと言うじゃないか。簡潔がいちばん。

●老人と海(ヘミングウェイ著/福田恆存訳/新潮文庫)
簡潔な文体といえばヘミングウェイ。無駄な言葉をそぎ落としたキレのよい文章は素っ気なく感じるかもしれません。にもかかわらず描写には深みがあります。簡単に書ける文章ではありませんが、簡潔な文章の理想として触れておくにはうってつけです。もちろん名作なので大人の教養という意味でもおススメですよ。
Webの記事を読むのもいいけれど、リアル有田憲史さんに会って直接講義を受けませんか?
「コピーの中で最も重要なキャッチフレーズの作り方」「説得力アップのためのフレームワークとレトリックの紹介」の2点に重点を置き、動かす、読まれるWebコピーの発想と作り方を伝授します。キャッチコピー、ボディコピーを実際に書いていただき、その場で講師が添削するワークショップの時間を設けています。