日米で異なる決済マーケット
ソニーの非接触ICカード技術「FeliCa」を使った日本の電子マネーは、日本でしか通用しない仕組みで「ガラパゴス」だと言われます。国際標準規格「NFC」との比較のなかで、「やはり日本はダメ」とネガティブにとらえる論調が多いように思われます。
しかし、その議論に入る前に、日本と米国を決済手段の金額シェアで比較した下の図をご覧ください。生活者が日常支出の支払に用いる決済手段のシェアを比較したもので、企業間取引は含みません。
まず目に付くのが、日本では6割と圧倒的多数を占めている現金が、米国では2割弱のマイナーな支払手段であるという事実です。クレジットカードとデビットカードが合計55%を占めており、こうしたカード払いが日本の現金に代わる主要な決済手段となっています。
ちなみに米国では、減少傾向にあるもののチェック(小切手)などという日本ではマンガでしか出てこないような手段もいまだに日本の口座振替・振込と同じレベルのメジャーな決済手段として使われています。いかに、決済手段という「習慣」が、歴史や社会慣習に依存する「ローカル」なものなのかということがわかるかと思います。
日本の電子マネーはプリペイドと合わせて1.7%。大都市に住んでいるともっと普及しているような感覚を覚えますが、まだまだ始まったばかりのマーケットです。同時に、米国に比べ圧倒的に「現金」志向の日本人を相手に、電子マネーを普及させるということ自体が非常にチャレンジングな取り組みだとも言えます。
FeliCa対NFCの前に、押さえておくべき電子マネーの3つのタイプ
さて、オフラインの場面での利用を想定している電子マネーには、FeliCa対NFC Type A/Bという図式を超えて、以下の3つのタイプがあります。
チャージ型 | センター管理型 | クレジットカード | |
---|---|---|---|
板カードの例 | Suica、Edy | スターバックスギフトカード、iTunesギフトカード | クレジットカード |
携帯端末の例 | モバイルSuica、モバイルEdy | iD | |
決済方法 | プリペイド | プリペイド | ポストペイ |
残高管理 | カード側 | センター側 | センター側 |
カード側のセキュリティ要求水準(※) | 高い |
低い (バーコードタイプ等も存在) |
低い(そもそも磁気カード |
電子マネーには、残高管理をカード側で行うか、センター側で行うかという2つのアプローチがあります。残高管理をカード側で行うためには、カード側に強固なセキュリティが必要になります。一方、センター側で行う場合はこれに比べると低い水準でも構いません。これは、偽造や複製が発生したとき、残高をセンター側で管理していれば一部のユーザーを制限するなどにより被害を最小化することができますが、カードで管理している場合は無制限に被害が拡大する可能性があるためです。