ガートナーは「Gartner Predicts 2013」において、2013年以降にIT部門およびユーザーに長期的かつ大きな変化を与えるとする展望を発表した。
同社は1979年に創設され、米国コネチカット州スタンフォードに本拠を置き、世界に85の拠点を持つ業界最大規模のITアドバイザリー企業。
1、2015年まで、企業の90%はWindows 8の大規模展開を回避
Windows 8は、Microsoftが同社の主力製品にタッチ・インタフェースを実装し、急成長している市場でAppleに対抗するために開発した製品。MicrosoftはIT部門にできるだけ早くこの新しいインタフェースへ移行することを推進するが、ほとんどの企業や管理ベンダーでは変化に対応する準備が整っておらず、市場の成熟には相応の時間を要する。
2、2014年末までに、携帯端末ベンダーのトップ5社中3社が中国企業に
新興市場における携帯電話の普及によって、トップ・ベンダーの交代が進む。従来の携帯端末ベンダーの状況は圧迫され、ハイエンド・モデルでAppleやSamsung、Electronicsと競合できなくなっており、積極的に攻勢をかけてきている新しいベンダー(特にHuaweiおよびZTE)との差別化に躍起に。これは新興市場のみならず、中国のベンダーはエントリ・レベルのスマートフォンに対する国内市場での確固としたプレゼンスを活用し、他の地域へと広げていく機会を手にする。
3、2015年までに、ビッグ・データ需要により創出される雇用機会は世界で440万人に達するが、実際に採用につながるのは3分の1のみにとどまる
ビッグ・データへの需要が高まっている。企業は自社に不足しているコンピタンスやスキルを補う新たな人材を採用し、自社の収益と市場での競争という2つの側面で現実的なメリットを享受することができる。企業が求める新しいスキルセットを有している人材には、ビッグ・データから価値を引き出すためのデータ管理やアナリティクス、ビジネスの経験とノウハウ、そして従来とは異なる手法を身につけた人材に加え、データを視覚化するためのアーティストやデザイナーなども含まれる。
4、2014年までに、西欧主要市場におけるITの新規採用の大部分は、アジアを本拠とし2桁成長している企業に占められる
アジア(特に中国とインド)では、2桁成長している成功企業が増えている。これらの企業は2015年までに主要な西欧市場に大規模な投資を行い、地理的プレゼンスを大幅に高める。西欧企業が依然として経済危機の影響への対処を行っている一方で、アジア企業は成長を支える人材としてIT専門職を大量に採用するだろう。西欧企業とアジア企業の間の不均衡な採用状況をさらに助長する要因になるのが産業化されたITソリューションの利用であり、これらのソリューションによって西欧企業におけるIT人材へのニーズはさらに低下する。
5、2014年にかけて、スマート・オペレーショナル・テクノロジの普及によりソフトウェア支出が25%増加
自動販売機や医療機器、船舶用エンジン、パーキング・メータなど、これまで特定機能をハードウェアのみでこなしていたデバイスにも、いまやソフトウェアが組み込まれ、センサはインターネットにつながり、データ・ストリームを送受信するようになっている。このマシン間通信は、ソフトウェア・コストの大幅な増加を招く可能性がある。
6、2015年までに、グローバル1000企業の40%が、ビジネス・プロセスを変革する中心的な仕組みとしてゲーミフィケーションを採用する
関係各所の関与レベルの低さが原因で、ビジネスの変革を目指すプロジェクトの70%が失敗に終わる。ゲーミフィケーションによってこのような関係各所の関与を促し、作業の透明性を確保し、従業員の行動とビジネスにおける結果を結び付けることが可能に。企業はフィードバック、評価、インセンティブなど、ゲーム・プレーヤーの関心を引き付けるためにゲームのデザインと同じテクニックを採用することで、ビジネス・プロセスの変革に必要な関係各所の関与を取り付ける。
ゲーミフィケーションは既にさまざまな業界で効果を発揮しており、その世界市場は2012年の2億4,200万ドルから2016年には28億ドルへと成長し、2013年には企業のゲーミフィケーションが消費者のゲーミフィケーションを凌駕することになる。
7、2016年までに、靴、タトゥー、アクセサリなどのウェアラブル・スマート・エレクトロニクスは100億ドル産業に成長する
今後4年間におけるウェアラブル・スマート・エレクトロニクスの売り上げの大部分は、アスレチック・シューズとフィットネス・トラッカ、耳装着型の通信デバイス、糖尿病患者向けのインスリン自動投与装置などが占めることになる。
一般的にフィットネス・トラッカをはじめとするウェアラブル・スマート・エレクトロニクスには、利用者に役立つ知見を提供する分析アプリケーションやサービスが付属している。特に、個人の趣向、所在地、バイオセンシング、ソーシャル情報などと組み合わせることで、これらのアプリケーションとサービスはこれまでになかった新しい価値を消費者に提供する。
CIOは、ウェアラブル・エレクトロニクスからのデータをどのように活用すれば従業員の生産性を向上させ、資産管理能力を高め、ワークフローを改善できるのかを評価する必要がある。また、ウェアラブル・エレクトロニクスが提供する詳細な情報によって、小売企業はターゲットを絞った広告とプロモーションを展開することが可能に。
8、2014年までに、市場の統合によりITサービス・ベンダーのトップ100社中20%が市場から姿を消す
クラウド、ビッグ・データ、モバイル、ソーシャル・メディアによる「力の結節」の台頭と、不透明な経済環境によって、現在約1兆ドルの規模を有する世界のITサービス市場の再構築が加速する。2015年までに、ITサービス・ベンダーの売り上げの15%程度が低コスト・クラウド・サービスに浸食され、サービスの工業化と付加価値強化に十分に投資していない大手ベンダーの20%以上が、合併・買収(M&A)によって市場から姿を消す。
この動きはまた、単なるオフショア/ニアショア・アプローチが制限される一方で、低コストなITサービスのオンショア化が進むか、グローバルな人材配置の再考が不可避になるという、旧来のITサービス・ベンダーにとっては困難な状況が到来することを意味する。
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