そもそもアトリビューションって何だろう?
さて、まずはアトリビューションという言葉の意味づけを明確にしましょう。広告会社の担当者や、広告メディアを販売している方では、それぞれの立場で微妙に定義や意味合いが違うことがあります。ただ、やはり共通している部分は存在し、それが以下の3つの項目です。
(2)何かしらのモデルで評価し
(3)その評価軸に基づいてキャンペーンの最適化を進める
これらはどの立場においても共通している認識と言えるでしょう。これらの3点を軸に、それぞれの項目について掘り下げて考えていきましょう。
アトリビューションの第一ステップ
まずアトリビューション分析の第一ステップとして、直接的にコンバージョンに結びつかなかった広告を発見する必要があります。言い換えれば、間接的にコンバージョンに結びついた広告を発見するということです。
ここで大事なポイントは、この情報は広告媒体側から提供されるレポートでは基本的にはわからずに、すべての広告を効果測定プラットフォームにて測定することではじめてわかるということです。
たとえば、あるリスティング媒体とある行動ターゲティングの媒体がそれぞれ提供しているコンバージョン測定機能を使って測定すると、それぞれの広告媒体が発行しているCookieに基づいてコンバージョンが計測されます。すると、リスティングを一度クリックした後に行動ターゲティングをクリックしてコンバージョンした場合、実際のコンバージョン数は1件であるにもかかわらず、レポート上ではリスティングで1件、行動ターゲティングで1件の合計2件のコンバージョンと数えられてしまいます。いわゆるダブルカウント問題です。
さらに、どちらの媒体が直接コンバージョンでどちらの媒体が間接コンバージョンなのかもわかりません。従ってコンバージョンの数を正確に測定し、かつ広告接触の前後関係を正確に把握するためにも効果測定プラットフォームの導入はアトリビューション分析の第一歩だと言えます。
冒頭に触れたKenshoo EnterpriseはYahoo!リスティング広告やGoogle Adwords、GDNなど複数の広告媒体とAPI経由で接続しています。よって、自社のキャンペーン情報をKenshoo Enterpriseの管理画面に登録し、後は自社の成果ページにコンバージョン計測タグを埋め込むだけで、効果測定からコンバージョンに至るまでのクリック履歴取得など、アトリビューション分析に必要なデータの取得ができます。導入が簡易なことから、欧米ではFacebookやExpediaなど多くの広告主が導入しています。
またKenshoo Enterpriseを活用することで、直接・間接を問わずコンバージョンに対してまったく何の貢献もなかったキーワードの一覧を出力することができます。この機能により、本当に無駄なキーワードと消化コストが把握でき、より効果的な広告予算の運用が可能になります。
アトリビューションの肝は適切なモデル選択
広告を評価をするために必要な情報を取得する最初のステップをクリアしたら、その次は適切なモデルを用いた広告の再評価です。よく言われるアトリビューションの難しさは、実はこの部分に多く依存しています。まずはモデルについて簡単に説明していきましょう。
Kenshoo Enterpriseでは過去の事例やデータから、合計6種類のモデルをあらかじめ選択できます。
(2)Prefer Last(ラストクリックに行くに従って重み付けが上がっていくモデル)
(3)Divided Equally(コンバージョンにつながったクリック全てに均等に重み付けをするモデル)
(4)Prefer First(最初のクリックに行くに従って重み付けが上がっていくモデル)
(5)First Only(最初のクリックだけに重み付けするモデル)
(6)U-Shape(最初と最後のクリックを高く評価し中間クリックは評価を下げるモデル)
これら6パターンのモデルの中から、自社のキャンペーン状況に対してもっとも適切なものを選ぶことで、それぞれの広告の価値を数値的に計算できるようになります。このモデル選択が最大の課題です。つまり、自社のマーケティング施策においてどのモデルが適切なのか見極めることが、アトリビューションにおける肝になります。
この最大の課題を解決する策として、Kenshoo Enterpriseでは、Path to Conversion(以下、P2C)とAttribution Modeling Simulation(以下、AMS)というレポートを提供しています。
Path to Conversion:コンバージョンに至るプロセスを多角的に把握
まずP2Cを活用することで、コンバージョンに至るまでにクリックしてきた広告履歴の把握が可能になります。例えばこのレポートを閲覧した際に、「コンバージョンに至るまでそもそもクリックが存在していない」ということになれば、当然モデリングの話ではありません。中間クリックにどのような媒体が多いのかという情報やビッグワードからの流入、指名ワードでのコンバージョンの流れなど、多角的に自社のコンバージョンに至るプロセスを把握することができます。
Attribution Modeling Simulation:6パターンのモデリング別シュミレーションが可能
次にAMSを活用することで、上記の6種類のモデルを当てはめた際、現状の効果がどのように変動するのかというシミュレーションを構築することができます。例えば「(1)Last Onlyではまったくコンバージョンが起こっていないと思っていた媒体が(3)Divided Equallyではコンバージョンの3割に関与している」など定量的な視点からアトリビューションのモデリングの検証が可能です。
上記以外にもキーワードごとのモデル評価のレポートなど、各種の情報をレポートから読み解くことで、自社に適切であろうモデリングを選択することができます。
評価軸に基づいたキャンペーンの最適化
これまでの効果測定機能とレポートによる分析を受け、いよいよ最適化を行う段階へ入っていきましょう。ここで問題になるのは「どういったアウトプットが可能なのか」ということです。原則的にはどんな最適化でも、大きく下記の3種類に分類されます。
(2)有益だと思われるものの予算を拡大する
(3)数学的なアルゴリズムに基づいて広告の「値付け」を見直す(自動入札の見直し)
繰り返しになりますが、これらのアウトプットは第一段階の正確な効果測定、そして適切なモデリングによる評価の見直しがあってこそ、成り立つものです。簡単なアウトプットの方法としては、(1)の無駄なコストをカットするアクション(2)の有益なものにより投資する、でしょう。ただし、適用したモデルが適切でないと、効果を下げてしまう可能性もあります。ここが非常に悩ましい点です。徐々に変えていくという判断も可能ですが、効果が見えにくいという点も課題です。
一方で、(3)アルゴリズムによる広告の値付けの変更は、キャンペーン全体の構成を変更することなく徐々に修正が可能な最適化の方法であり、リスクが比較的低いことが特徴のひとつです。さらに、この方法による最適化はクリックごと、CPCを設定する最小単位ごとに最適化をかけるため、結果として予算の再配分も含めた最適化が実現することになります。
Kenshoo Enterpriseの場合、選択したアトリビューションのモデリングをベースに各クリック、キーワードの価格の見直しを自動的に行い、独自のアルゴリズムにより、アトリビューションの重み付けと過去のデータの蓄積による予測モデルをベースにした自動入札ができます。このようにKenshoo Enterpriseを導入することでデータの蓄積、モデリングの仮説構築・設定、最適化まで、一気通貫で実施することが可能になります。
Accor Hotelsの事例:アトリビューション最適化により、82%売り上げ増加
これから、Kenshoo Enterpriseを導入し、ラストクリックベースからアトリビューションを軸にした最適化にシフトし、飛躍的に売り上げが増加したAccor Hotelsの事例を見てみましょう。
Accor Hotels社は傘下にGrand MercureやNovotalなどの有名なホテルブランドを抱えるヨーロッパ最大のホテルチェーン企業です。
Kenshoo Enterpriseを導入したAccor Hotelsは、まずはじめにコンバージョンに至るクリックの履歴を補足、どのような傾向が存在するのかを分析しました。その次にモデリングの分析を行い、自社のサイトに訪問しているユーザーの行動パターン、そしてラストクリックの広告媒体の特徴などを通して、U-Shapeをモデリングとして採用しました。
そして、そのモデリングを踏まえた自動最適化のアルゴリズムを走らせ、自動入札を行ったところ、広告予算消化が36%程度増加したものの、オンラインからの売り上げはそれを上回る82%増加という結果を出しました。
これはAccor Hotelsの商材であるホテル予約が、興味喚起から実際のコンバージョンまで比較的時間がかかる商材であったこと、かつ様々なプロモーション施策を行っていたため、ユーザーの広告接触が多いという背景から、アトリビューションを踏まえた最適化に適していたともいえるでしょう。
誰でもできるアトリビューション
さて、この記事で説明してきた内容を簡単におさらいしてみましょう。アトリビューションとは以下の3点を軸に定義してきました。
(2)何かしらのモデルで評価し
(3)その評価軸に基づいてキャンペーンの最適化を進める
まず(1)に関しては、Kenshoo Enterpriseのようなキャンペーン管理プロダクトを導入することで各媒体のCookieに依存せずに、コンバージョンに至る広告接触を計測することが可能です。(2)に関しては、自社の商品特性を踏まえたうえで、自社のマーケティングプランに合致するモデリングを選ぶことが重要になります。そして(3)の最適化については、予算の再配分を目的とする以外にも、実際のクリックの価値を再計算することも重要なアウトプットになります。
アトリビューションを踏まえた最適化施策は、難しいと思われたり、ビッグデータと関連付けて考え、自社で取り組むには大きすぎるテーマだと思われる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、今回のようにアトリビューションを踏まえた最適化を実現するプラットフォームが出てきていることもあり、取り組む上でのハードルはここ数年でぐっと下がってきています。まずは、自社のキャンペーン状況を冷静に見直すという意味でも、アトリビューションに対応した各種プロダクトの導入検討を進めてみる適切な時期と言えるかもしれません。(取材協力:KENSHOO)