テレビが強いのは「リッチ」だから。オンラインでもその豊かさを表現したい
MZ:オンラインでのブランディングにおいて、リッチメディア広告はさらに重要性を増していくとお考えでしょうか。
布施:もちろんです。今までのようにスタティックなメッセージだけでなく、よりエンゲージメントを高めるために、もっとリッチなコミュニケーションをとっていく。もっと動画を活用して、という形になるでしょう。我々はコアテクノロジーとしてリッチメディア配信技術を持っています。テレビCMがそもそもこれだけの効果、メッセージ性を出せるというのはリッチだからなんですよね。その発想をオンラインでも、ということです。
MZ:しかし、それを受け取るデバイスは多様化しています。
布施:あらゆるチャネルがデジタル化し、ますますマルチスクリーン化が進みます。つまり、今よりもデバイスが分断化されていく。この分断化されたコミュニケーションを統合していくのがMediaMindのキャンペーン管理プラットフォーム、第三者配信プラットフォームなんです。
MZ:グーグルも10月に開催されたGoogle Analytics Summitで、多様なデバイスの解析に対応していくと発表しました。
布施:グーグルと我々のヴィジョンは非常に近いのですが、それを実現するアプローチの方法が違います。彼らはメディアを売ってそれを買っていただくことをビジネスとしている。我々は広告を販売するのではなくテクノロジーを販売しています。その中立性、独立プラットフォームベンダーであることが、今エージェンシーから注目される理由のひとつとなっています。
今回ヤフーとの提携によって、その第一歩を大きく踏み出しました。デジタルの世界でどのようなブランディングコミュニケーションができるのか。これをきっかけにデジタルのブランディングコミュニケーションの領域でチャレンジして、イノベイティブな事例を出してもっと発信し、もりあがっていくことができると思います。
「デジタル=刈り取り」という状況が、アドテクノロジーで変わる?
MZ:第三者配信というキーワードをめぐる状況については、どのように見ていますか?
布施:ここ2年くらいの間に「第三者配信」というキーワードが一部の方々の間でホットキーワードになっています。今後、デジタルマーケティングを遂行していくにあたって、アドテクノロジーは必須です。しかし、「第三者配信」がバズワードとなっていることについて「違う」と感じている人もいます。実はわたしもその一人です。
本当は「第三者配信」という言葉は使いたくなかった。なぜかというと、第三者と言った瞬間に自分ごとではなくなりますし、言葉についての混乱も招くからです。なぜ「第三者」かというと、媒体社がもっているアドサーバーを主としたときに「第三者」なんです。DSPも基本的なアドサーバーの能力をもっているので、DSPも第三者配信。そして我々も第三者配信。しかし、広告費という投資に対する価値をデータによって最大化するためには、それを一元的に管理しなければならない。そういうシステムが、我々が考える第三者配信プラットフォームなんです。
MZ:「第三者配信」という言葉だけでなく、その役割やメリットについても、もっと多くの方に正しく知ってほしいですね。
布施:第三者配信に注目が集まっているものの、ディスプレイ広告全体の市場が活性化しているかというと実はそうではありません。プログラム・バイイングを活用することによってターゲットリーチを明確にできるので、ROIがよくなるだろう、CPAがよくなるだろうといった狭い世界でのディスプレイ広告の運用になっています。まだまだ、ブランディングの視点で活用できていないというのが現状です。
MZ:アドテクノロジーを使って数字を改善するだけでなく、ブランディングにもっと活用していこうと。
布施:初期の段階では広告代理店さんも「ブランディングはテレビで、刈り取りはオンラインで」という棲み分けでアプローチでしていた経緯もあって、「デジタル=刈り取り」の方に寄っていました。しかし、コンバージョンファネルを考えたときの真ん中から上、もう少しアッパーラインというのをしっかりやっていくことによってデジタル世代との対話をブランド側がやっていく必要性が出てきたと思います。
デジタルマーケティング全体の認知度はもちろんですが、「アドテクノロジー」という概念の市民権をどう取っていくのか。我々はその中の「第三者配信」というプラットフォームの市民権をどうとっていくのか、というところにフォーカスしている状況にあります。
