『クチコミページと社長ブログ、売上に貢献しているのはどちら?』
MarkeZineでもおなじみ、Webアナリストの小川卓氏の新著は、マンガと解説文を織り交ぜた意欲作。女性新入社員「上部(うえぶ)ミチル」が、サイト運営について理解していない社長に、データをもとにサイト改善を提案していくストーリーとともに、ウェブ分析のさまざまなトピックを学んでいきます。
ネットショップの売上が減ってしまった理由を探るところから話は始まり、メルマガ改善、A/Bテスト、そしてタイトルにもあるように「クチコミページと社長ブログ」のコンバージョン率の比較などを解説します。
ウェブ分析をやる人にとって大切な心構えとして「集計と分析の違い」「実装と設計の大切さ」「アクセス解析用語は極力使わない」などのポイントも紹介。アクセス解析を学ぶ入口として、最適の内容になっています。
『MEDIA MAKERS ― 社会が動く「影響力」の正体』
著者の田端信太郎氏は、リクルートでフリーマガジン「R25」を立ち上げ、ライブドアで「livedoorニュース」を統括。コンデナスト・デジタルで、VOGUE、GQ JAPANなどのWebサイトとデジタルマガジンの収益化を推進し、現在NHN Japan株式会社 執行役員広告事業グループ長として多忙な日々を送っています。その田端氏のメディア論が1冊にまとまりました。
自らを「メディア野郎」と呼ぶ氏は、冒頭で「メディア作りにブラックボックスはありません」と言い切ります。現代のメディアビジネスについて明解に語りながら、プロのメディア野郎を目指す人だけでなく、多くのビジネスパーソンにとってメディアへの理解がいかに重要かを説いていきます。
田端氏は、「東京編集キュレーターズ」「デジタルサバイバル講座」などのセミナーにも登場し、編集・コンテンツづくりを目指す人たちへメッセージを送り続けています。この本を読んで興味を持ったら、氏の言葉に直接触れてみるのもよいかもしれません。
『デジタルテキスト編集必携』 [基本編][技法編]
『Webライティング実践講座 ニュースリリースから商品説明まで』
田端氏の本でも指摘されていますが、ウェブメディアを通じて日々発信されているニュース、プレスリリース、記事などの情報量は膨大です。その中で、人の目にとまる、見出しをクリックしたいと思わせる文章はどのように描けばいいのでしょうか?
これまで書籍などの紙メディアで積み上げられてきた編集技法を、デジタル世代に向けてバージョンアップしたのが『デジタルテキスト編集必携』。[基本編]では「編集って何をするの?」というところから始まり、原稿整理の仕方、PDFでの校正や赤字の入れ方など、デジタル編集を意識した実務のポイントを手際よくまとめて説明してくれます。
[技法編]では、「テキストデータとは何か」という技術面からアプローチ。ウェブ、電子出版において不可欠な「タグ」の説明から始まり、文字コードの基礎知識、さらにはテキスト編集を効率化する正規表現による検索と置換、印刷データからのテキスト取り出し、HTMLの書き方、EPUB制作のフローなど幅広くカバーしています。
『Webライティング実践講座』は「Webライティング」についてさまざまな角度から分析し、そのノウハウをまとめた本。本書では、「人に読んでもらうためのライティングをベースに、機械にも読ませるためのテクニックが“Webライティング”です」と定義しています。
もっとも大切な「見出し」の考え方では「見出しは3種類しかない」と語り、「SEO見出し」「煽り見出し」「要約見出し」の3種類について解説。起承転結の考え方、ネタを量産する方法、プレスリリースの書き方、無駄のない表現、ツールを活用したライティングなど、その範囲は多岐にわたっています。
この3冊を持っていれば、Webのテキストコンテンツの各レイヤーをしっかり押さえることができるでしょう。
『今、ZOZOTOWN は何を考えているのか?』
最初にお断りしておきますが、本書はZOZOTOWNおよび、株式会社スタートトゥデイとは関係がありません。ファッション×ITコンサルタントのナカムラユキ氏の自費出版による本書は、「ネットで服を買う行為」=「ファッションEコマース」がどのように定着していったのかを、ZOZOTOWNをテーマに据えることで変化を追っています。
今年10月、ZOZOTOWNの送料手数料に関する利用者のツイートに、スタートトゥデイ社長の前澤氏が投稿した内容が物議をかもしたことは記憶に新しいのですが、8月の時点で前澤氏は、はじめて業績を下方修正することについてブログでコメントしています。「問題は僕自身」「大切なものを自分自身見失っていることにある時気づいてしまった」と。
ZOZOTOWNが成長を続けてきたこの数年の間に、ファッションEコマースに何が起きていたのでしょうか。本書は、同社のポイント還元10%や配送料無料といった大きな施策が、同社のビジネスにとってどんな意味を持つのか、またなぜ同社がそうした選択をしなければならなかったのかにフォーカス。楽天市場、アマゾンといった企業の新たな動き、ITに不慣れなアパレルメーカーの課題、ユニクロやH&Mといったファストファッションの動きを俯瞰し、まとめています。ファッションEコマースの現在とこれからを考えたい人にとって、必読と言えそうです。