スタートは町の小さなカメラ屋さん
ジャパネットたかたのショッピング番組といえば、独特な口上で視聴者を魅了する高田明社長。社長自らが広告宣伝塔となり、ショッピング番組へ出演して20年近くにもなる。そんな高田社長がジャパネットたかたを立ち上げたのは今から27年前。町のカメラ屋からスタートし、1990年にラジオショッピングを始めた。
「私が小学生のとき、いきなり父がラジオで喋っていた」と高田社長の子息、高田旭人取締役副社長は当時を振り返る。NBC長崎放送で始めたカメラのラジオショッピングは約100万円を売り上げたという。
1991年には北海道から沖縄まで全国で商品を販売するラジオショッピングのネットワークを構築し、1994年にテレビショッピングを始めた。その後、新聞折り込みチラシを作成して紙媒体を通じた通販に進出。現在の「メディアミックス」の原型となる。
2000年には本格的にカタログ通販事業を開始し、通販サイトも同年に開設した。郵政省(当時)からCSデジタル放送委託事業者の認可を取得し、2001年にCS放送で自社テレビショッピングチャンネルを構えた。現在のビジネスモデルである、ラジオ、テレビ、紙媒体、ネットという多様なメディアを通じて消費者にアプローチする「メディアミックス」が本格的に展開されるようになった。
成長の源泉はメディアミックスと自前主義
「当社の強みは『メディアミックス』と『自前主義』」(高田副社長)。
ネット通販事業者でも、テレビや紙媒体を使って消費者にアプローチするマーケティング手法は少しずつ増えているが、こうした「メディアミックス」を通販業界に浸透させたのはジャパネットたかただ。同社のテレビショッピング番組を見ていると、高田社長が「本日朝刊の折り込みチラシを見てください」と視聴者に語りかけるシーンを目にしたことはないだろうか。
チラシを通じた通販はテレビ番組が見られなかったり、見落とした人にアプローチするために考えられた。逆に、テレビを見ていても商品を購入しない視聴者や消費者に対し、紙媒体はゆっくりと商品購入を検討させることができる。
紙とテレビ、ラジオをそれぞれに展開するのでは効果は限定的。それぞれの媒体を使い相乗効果を生み出そうとするのが「メディアミックス」で、今ではネットも重要な役割を果たしている。「テレビを見たけれども、夜の時間にゆっくり買いたいというツールも必要」と高田副社長は通販サイトの役割を話す。折り込みチラシは限られたスペースのため掲載できない商品が多い。
尺に限りのあるテレビはトレンドに合わせた商品を厳選して紹介するため、多くの商材を紹介することが難しい。24時間営業している通販サイトは、「ゆっくり商品を購入したい」「テレビやチラシで掲載されている商品以外も見てみたい」――こうしたニーズを開拓するツールとして、「メディアミックス」の1つの役割を担っている。
多様なメディアを駆使するジャパネットたかたの基本方針は「自前主義」。地上波やCSチャンネルの生放送、録画番組などに関するテレビ放映設備は自社で保有。長崎県の本社、昨年立ち上げた東京オフィスの2拠点体制にはテレビ放映設備も構えている。
電話注文などを受け付けるコールセンターはもちろん、カタログ制作、物流センターなど通販全般に関わるインフラも自社で構築。通販に関わる業務をすべて自社で整備・運用することで、効率的にノウハウを生かせる仕組みとなり、ジャパネットたかたの成長を支えている。