音楽ストリーミングサービス「Spotify」が提案する新しい価値観

今回は、定額制音楽サービスでは世界最大で、いま最も話題性のあるサービス「Spotify」を取り上げてみたいと思います。Spotifyは2008年にスウェーデンでスタートした定額制音楽ストリーミングサービスで、現在はアクティブユーザーが2400万人、有料会員600万人と順調な普及・成長を続けています。
若者やネットユーザー、IT関係者の間で知名度が高く、現在は米国や主要ヨーロッパ各国を含む世界24か国で展開しています。世界の音楽業界に「定額制」、「ストリーミング」、「聴き放題」と新しい価値観を提案するSpotifyを率いるのは、共同創業者でCEOのダニエル・エク (Daniel Ek)。14歳で最初の会社を起業するなど若くしてIT業界に携わってきた現在30歳の若い起業家です。
多くのリスナーを惹きつけるSpotifyの成功には、3つの大きな要因があると考えます。1つ目は、「フリーミアム」モデルを採用していること。2つ目は音楽とソーシャルとの連携が高いこと。3つ目は、リスナーと音楽の出会いを支援する革新的な機能を組み合わせて提供しているという点が挙げられます。
音楽とフリーミアムモデルで若いユーザー層に認知拡大
Spotifyはフリーミアムモデル(基本的なサービスを無料で提供し、追加機能や特別コンテンツを有料で提供するモデル)を採用する数少ない音楽サービスのひとつです。ウェブサービスではEvernoteやDropboxが同様のモデルを採用して成功していることで有名です。しかしオンライン音楽の世界では、楽曲を提供するレコード会社との契約などがあり、多くの定額制音楽サービスは、有償でのサービス提供を行なっているのが現状です。

一方、Spotifyはレコード会社とのライセンス契約による合意のもと、開始当初から基本サービスを無償提供しています。よって会員登録後には音楽を無料で聴くことができます。無料会員には、広告挿入や時間制限等の制限が課されますが、月5ドルまたは10ドルの月額定額プランを用意することで、有料会員へのコンバージョンに成功してきました。
Spotifyは、無料サービスを提供することによって、音楽好きでネット好きな大学生や若者、オフィスでPCに向かって一日中仕事をしているクリエーターなど、獲得が難しい30歳以下のユーザー層を取り込み、認知を拡大することに成功してきました。「無料」と「音楽」といえば若者が好きにならない訳がありませんよね。音楽好きが自分の好む形態で音楽を聴ける環境を提供できることが他社との違いで、Spotifyが大きく成功した要因のひとつと言えます。