欧米ではメディアの動画広告でのマネタイズは一般的
高まる広告主の期待を受け、メディア側はいち早く価値あるプリロール動画広告枠を設けることが得策――。そんな確信を感じさせたセッションを受け、セミナー第4部はパネルディスカッション形式で進行。2部登壇のTubeMogul狩野氏をモデレーターに、1部に登壇したオムニバス 山本氏、そしてブライトコーブCEO兼代表取締役社長の橋本久茂氏と、『WIRED』『VOGUE JAPAN』などを発行するコンデナスト・ジャパンからDigital Country Managerの新井良氏を迎えた。
「米国に比べ、日本の動画広告市場は出遅れている」と狩野氏は指摘する。その理由について、山本氏は複数あるとしながらも「最も大きいのは効果測定の問題。ネット広告の効果がほぼ数値で表せる中で、動画広告によるブランド認知や好感度を把握する指標がないのが課題だった」と挙げる。ようやく今、テレビでの指標なども参考に、指標が充実しつつあるという。
一方、欧米では、すでにメディアが動画広告でマネタイズできるまで市場が成熟しつつあるようだ。ブライトコーブの橋本氏は、「当社は米国で2004年から事業を始めたが、06年頃からすでに欧米ではメディアが動画広告でマネタイズするのが一般的になっていた。それを受けて08年に日本法人を立ち上げたが、昨年後半になってやっとプレーヤーがそろい、エコシステムができる状況が整ったという感を得られた」という。
動画の訴求力に期待する広告主のニーズに応えるべき時が来た
そんな状況下、コンデナスト・ジャパンでは米国本社の積極的な動画展開に追随し、デジタルマガジンをはじめデジタル領域の展開にますます力を入れている。オリジナルの動画コンテンツ生成のために、昨年末に動画のチームを社内に用意したという。
国内のデジタル展開を統括する新井氏によると、「広告主となるブランド側が、短い動画広告だけでなく3~5分と長尺のムービーまで用意し始めている今、それを積極的に取り入れていくことが急務なのは明白。今、ブランドムービーを軸にしたタイアップ記事なども柔軟に企画しており、好評」だという。
これを受け、山本氏も「確かに広告主は動画の訴求力に期待し、ブランドが持つメッセージを発信したいと強く思っている。特に、以前からデジタル領域に力を入れていた企業は、今がファンを増やすチャンスだと捉えている」と述べる。
「市場が立ち上がるのが遅かった分、広告主の潜在ニーズが一層高まっているともいえる」と橋本氏。それだけに、システムが整いさえすれば、メディアが動画広告を収益の新たな柱として考えることも十分可能だろう。
ただし橋本氏は、「いずれにしても市場の活性化のためには、広告主、事業者や代理店、メディアのそれぞれが動画の世界を盛り上げていく必要がある」と語る。表現力があり、世界観を伝えるのに最適な動画に皆で取り組めれば、との意見に三者もうなずき、今後の動画広告市場の伸長へ大きな期待を感じさせた。