アメリカで進むデータ解析分野の教育プログラム
「eMetrics」の2つ目のテーマは、教育現場におけるデータアナリティクスについてです。基調講演では、フェニックス大学における高度なデジタルマーケティング教育プログラムが事例として紹介されました。

同大学では、ウェブの解析、最適化について、すでに教育プログラムとして体系化されたプログラムが提供されています。例えば「ウェブ最適化(デジタルライフサイクルマネジメント)」では、以下の3つのテーマについて学びます。
- アクイジション(acquisition)
- コンバージョン(conversion)
- リテンション&アウトカムズ(retention & outcomes)
このうち、例えば「アクイジション」については、下記の項目に関するポートフォリオ・マネジメント、投資対効果、チャネルに対するランディングページ最適化などを具体的に学びます。
- SEO、SEM
- ディスプレイ広告
- アフィリエイト
- ソーシャル
このプログラムで体系化されている、ウェブ解析やウェブ広告、ウェブ最適化は、日本の企業内でもそれぞれが明確に役割分担、もしくは社内スキルの共有がなされていることが少ないのではないかと思います。現状では、各分野の専門家、担当者がそれぞれの外部業者と共にレポートを作り、個別に運用されているところが多いと感じます。
企業でさえまだ、スキルの分担ができていない状況で、これらのスキルを体系的に学ぼうとすると、まずは各業務をすべてこなし、それぞれのスキルを身につけながら全体を最適化する術を自ら作り出していくしかありません。それには時間もかかりますし、そもそもすべてを担当できる環境も少ないと考えます。
今後は、日本でもぜひ社会人向けのデジタルマーケティング、アナリティクスのワークショップの活性化や、社会人、学生向けの教育プログラムの確立が進んで行くことを期待します。そのために筆者としてはサポートや旗振りを継続できればと考えております。
eMetricsに参加して感じた潮流とメッセージ
今回、eMetricsに参加して感じたのは、まず間違いなく、マルチデバイス環境、もしくはオムニチャネルに向けたデータ収集の準備を進める必要があるということです。まずデータを取れないと解析、次のビジネスプランへの仮説も立てられません。まずは、第一歩としてウェブ、オンライン、オフラインのデータの取得はインフラとして必要です。

次に、ウォルマートも実践しているように、オムニチャネルを実現、ユーザーを可視化し、仮説をもとにしたデータ戦略を展開することで、もはやウェブチャネルの強化という視点だけではなく、企業としての競争力強化になると考えます。しかし、理想はあっても、現在の企業内でこれらを推進するためにさまざまな負荷がかかります。これを実現するには、企業内でこれらの重要性、必要性を強く感じてもらう必要があります。そのためにも、教育の発達、社内での情報共有の方法は改善の余地があり、今後の課題だと考えます。
最後にメッセージとしてまとめると、「もうウェブ、デジタルの向こう側のユーザーは可視化できる時代へ。乗り遅れるな、オムニチャネル解析へいそげ、まずはデータの収集と体制づくりから」です。
今回のレポートが、企業のデータ解析、ウェブ広告、ウェブの活用に関して少しでもお役に立てば幸いです。今後も機会があれば、データ解析、ウェブ広告のテーマについてメッセージを発信していきたいと思っています。