顧客単価はZOZOの2倍
そのベンチャー企業の名前は「株式会社VIVA JAPAN」。11年5月に設立されたソーシャルコマース事業を手掛けるスタートアップ企業で、シンガポールと東京に本社を構えている。手掛ける事業は簡単、「モノ売り」だ。シンガポールと日本の2拠点から、質を重視した商品を全世界の消費者に届けている。
運営するソーシャルコマースサイトの名称は「VIVA JAPAN」。TwitterやFacebookといったソーシャルメディアと連携することで、消費者が買った商品情報をソーシャルメディア上に流したり、自分が買った商品に対するコメントを「VIVA JAPAN」のサイト上に投稿することができる。
取り扱う商材を端的に言えば「クオリティーが高く、品質を全面に出せて日本が根付いているモノ」と浜田寿人代表取締役。
平均顧客単価は約2万円で、日本の購入比率は全体の9割。残り1割が海外だ。「ZOZOTOWN」の13年3月期第4四半期の平均出荷単価1万629円と比べると、「VIVA JAPAN」の購入者は1回の買い物で2倍近くのお金を商品に投じる計算で、消費者の低価格志向、モノが売れない時代に高い顧客単価を示している。
「VIVA JAPAN」は一般的なECサイトと比べると異質に映る。ディスカウントはしない。ポイント制度もなく、送料無料も不定期に行う程度。だが利用者は昨年10月の本格スタート以降、右肩上がりで増加している。
ディスカウントはしない、良質なモノを適正価格でがモットー
バーニーズニューヨークでバイトをしたり、海外留学時はホテルのアシスタントコンシェルジュとして物売りと顧客サービスを経験したことがあるという浜田代表。「バーゲンで買う喜びと、正規品を買う喜びは後者の方が大きい。良い人に良いモノを真面目に伝えていきたい」(浜田代表)。
こんな思いから立ち上げたのが「VIVA JAPAN」。経営的な観点からも「資本力がなければディスカウントは体力が持たない」(同)と考えていたため、多くのEC企業で常態化しつつある安易な値引き戦線からは一線を置いている。ディスカウントが当たり前となりつつある小売業界で真反対を歩む「VIVA JAPAN」。このビジネスを手掛けるようになった背景にも触れておく。
VIVA JAPANは浜田代表が社長を兼務するメディア事業などのカフェグルーヴ、ERPパッケージのワークスアプリケーションズ、フィリピン大手商社TDG社のジョイントベンチャーだ。カフェグル―ヴが手掛けていたVIVA JAPAN事業を11年5月、ジョイントベンチャーとして法人化。運営主体はカフェグルーヴが担うことになった。
カフェグルーヴはウェブメディア運営、飲食事業など消費者向け事業を展開。例えば、飲食事業では肉などの食材、ワインや葉巻を含め直接買い付けしたダイニング経営をし「垂直統合型のビジネスを常に手がけている」(同)。
ECを始めるきっかけは09年。カフェグルーヴが運営している、本物を身につけたい女性のためのライフスタイルウェブマガジン「verita」上で、広告が掲載されている「ハイブランドの商材を売りたいと思った」(同)こと。
当時は「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイの台頭などEC市場が急成長していた時期に当たる。後発組のカフェグルーヴは、楽天、アマゾンといったECサイトとは一線を画す「上質なモノと、上質を求める人が集まる島」をテーマにしたECサイトの運営でEC市場に参入した。「周りがディスカウントしていたが、うちはしなかった。売れなかったけど」と浜田代表は振り返るが、「ディスカウントはしない」「上質なモノを適正価格で届ける」といった信念は、「VIVA JAPAN」に受け継がれている。