最近、事例を聞いてもがっかりすることが多い
小川 私がいま個人でコンサルティングやってる「メンズファッションプラス」という男性向けのECサイトがあるんです。そこも全部基本的にオープンにしていくことにしていて、どんどん事例を作っていこうとしている。
清水 そういう具体的な事例って大事ですね。世の中にある事例って「課題はこうでした、こうやりました」みたいなきれいごとが多くて、あんまり真似できない。
小川 だから僕、最近事例をなるべく話さないようにしているんです。というのは、セミナーで「A/Bテストやって、ここからのコンバージョン率が5倍になりました」とか聞いた瞬間に、結構がっかりするんですよね。そのページが5ページビューしかないかもしれないのに。いくらでも見せかけることはできるんですよ。500%上がりましたって。でも売上的には500円増だ、みたいな。
清水 僕は「事例が大事」と言い、小川さんは「事例は話さない」と言う。一見矛盾しているようだけど実は一緒。結論だけじゃなく、途中のプロセスを開示しないとっていうことですよね。
失敗が許されない文化
小川 要はなぜこのページを直そうと思ったのかっていう話が圧倒的に不足しているんです。ここを直したらこうなりましたと言うけど、「なぜあなたはそのページを選んだんですか?」ということ。効果が少ないかもしれないけど一回こういうことをやってみたかった、ということでも全然いいんです。ただ、そういう事例の背景やプロセスが求められているのか、僕はよくわからないんですが。
清水 それは求められてないと思う(笑)。もっとさかのぼるとね、失敗が許されない文化みたいなところに行くんです。A/Bテストってうまくいくときもあれば、うまくいかないときもある。それが受け入れられる土壌を作らないとっていう順番がある。あと、やっぱり結果へのコミットがないと。分析だけで終わってたらコミットできないから。
小川 僕もいまサイバーエージェントで働いていて、分析担当しているサービスがいくつかあるんですけど、基本的に僕の成果も売上目標達成なんですよね。
清水 それいいと思う。
小川 すごくシンプル。いろんな要因はあれど、売上達成したら僕のおかげだし、いかなければ僕のせい。アナリストとか分析する人も、やってうまくいけば評価されるという保証があればもっと動くと思う。
ふたりのトップアナリストが語る危機感。これはアナリストだけの問題ではないようです。後編では、ふたりがMarkeZine編集長に切り込む意外な展開に! ご期待ください。
