ゲームアプリの展開など多様な接点を演出
── 自社サイトへの誘引はどのような行なっているのでしょうか。ペイドメディア、メルマガといった施策についても教えていただけますか。
現状のペイドメディアはほぼリスティングのみです。サイト来訪者の約3割はリスティング経由、4割はオーガニック、残りがメルマガやダイレクトロードです。日本での認知拡大に向け今後はディスプレイ広告の展開も考えています。日本のターゲットに響くクリエイティブを作るために本国のクリエイターに日本の消費者行動を理解してもらうことも重要です。
メルマガはお客様との接点として利用していますが、あくまでも補完的な役割です。CRMやフォローアップのことを考えるとお客様のデータを活用したいのですが、ブランドからの一方的なコミュニケーションは、特に若年層からは嫌われてしまいます。
そのためお客様にベネフィットを感じていただけるようにしています。例えば、メルマガに登録していただければ、商品の発売前に予約ができるという特典を与えるなど、お客様のニーズに即した活用を心がけています。
また、メルマガは店頭への誘導も目的としています。M・A・Cは実際に商品を見て触ってもらうことを何よりも重要視しています。店頭でプロのアーティストと接触していただくことではじめて、M・A・Cのよさを理解していただけると考えております。
店頭でもお店でのイベント情報や新商品情報の入手、商品予約などもできるようになっております。今年からはオンラインとリアル店舗データを統合しておりますので、CRMに関しても統合してできる体制になっております。
M・A・Cらしい取り組みとしては、豊富なアセットを利用してスマートフォンでゲームアプリの展開もしていますね。 アメコミキャラクターとコラボレーションし、アプリを期間限定で展開しメルマガ登録で限定コンテンツがもらえるなどの施策も行っています。アプリに関しては全て期間限定での展開で、年に3,4回は日本用アプリを本国で作りリリースしております。
──Eコマースについてはいかがでしょうか。 特徴はどんな点にあるとお考えですか。
Eコマースは2009年よりはじめておりまして、当初よりモバイルが強いという特徴があります。60%はモバイルでの売り上げで、かつ90%以上はスマートフォンでの売上構成になっています。日本はモバイル領域に関しての接点が独特なので、グローバル主導ではなく日本主導で構築していくことが必要だと思っています。
今後はスマートフォンに特に期待しています。現在、スマートフォンの施策はあまり行なっていないのですが、バズのボリュームを見ますとスマートフォン経由は非常に高く、お客様の接点が大きく変わりつつあると感じています。
最も重要なオウンドメディアは“リアル店舗”
── リアル店舗について、国内店舗ではどのような体験接点として構成されているのでしょうか。また、日本のフラッグシップ店舗と海外フラッグシップ店舗と比較すると違いはあるのでしょうか。
国内の店舗はまだ発展途上という認識で、北米の店舗に比べブランド表現をより強化していかなければいけないと思っています。M・A・Cでグローバルフラッグシップといわれている店舗は世界で3店舗しかありません。タイムズスクエア店、フィフスアベニュー店、シャンゼリゼ店の3店舗です。
店舗は単に化粧品を購入する場所としてのイメージではなく、イベントやファンを体感するための場として設計されています。 お客様が「何か楽しいことがないかな、今のトレンドにふれたい」と思い訪れる場所が、M・A・Cの店舗という構造です。
そのような体験をお客様に感じていただくのが、2週間に1回、新しく投入されるコレクションです。コレクションに合わせて、ビジュアル、音楽、M・A・Cアーティストのスタイリングやメイクアップも変化します。次のコラボレーションは何だろうというワクワク感を醸成しています。日本の店舗もこの3店舗と同じクオリティを目指さなければなりません。そこまで到達できればM・A・Cの世界観がより伝えることができると考えております。
そして、その構造をリアル店舗だけでなく、自社サイトの中でも表現したいですね。また、国内でメイクアップオーソリティーとしての存在をより強固にすることも、大きなポイントです。ファッションウィークのバックステージ写真などもコンテンツとして公開していますが、日本では業界の人たちと一般消費者との間に壁があると感じますので、その垣根をなくしていきたいと思っています。
お客様はいつも新しい体験を得ることができる

