三社が重視している効果測定指標とは?
――では、今うかがったような活用方法において、重視している効果測定指標は何ですか。
森:エンゲージメントやファン数はもちろん大事なのですが、サッポロビールの中ではロイヤルユーザーを重視しています。簡単に言うと、月々の投稿に対して複数回の「いいね!」や「コメント」をしてくれるファンのことです。そのロイヤルユーザー比率を効果測定指標指としています。これはサッポロビールとユーザーローカルが共同で編み出した指標です。

上記の表は、横軸がファン数で、縦軸がロイヤルユーザー比率です。エビスが5.4%、サッポロビールは、この時8万人超えのファンがいて、6.7%でした。
――ファン数が増えると、一般的にはロイヤルユーザーの比率は下がりますよね。サッポロビールはデータ的には、比較的うまくいっているということですね。
森:その他にもエンゲージメント率などもベンチマークしています。エンゲージメント率などは、運営上、参考にしていますが、重視しているのはロイヤルユーザー比率です。ファン数を増やしながら、ロイヤルユーザー比率をいかに維持していくかが、今向き合っている課題です。

津田:先ほど申し上げたように、ソーシャルメディアはリーチするためのツールとして活用を始めたので、どれだけ多くのファンにリーチできるかという点はひとつの指標です。ですが、今はインサイトギャザリングに重きを置いていますので、コメントの数だったり、またそのコメントの中身の分析に時間を割いています。
加藤:まず前提として、コミュニケーションの目標があって、その中でマスで達成しないといけないこと、ソーシャルメディアで達成すべきことがあります。最終的にコミュニケーションの目標、マーケティングのゴールを達成することが重要です。
指標というとちょっと違うかもしれませんが、SNSをどう活用するかという前に、ソーシャルメディアが消費者に浸透した世の中に対して、企業はどう対応していくかといったところが弊社では重視されています。
社内では「全ての顧客の接点で評価されるようになっていきたい」という思いがまずあります。なので顧客満足度を上げていく、世の中でどうクチコミされるのか、といったところが最終的には大事です。個々のブランドでどうこうという話しではなく、企業全体としてどうするか、といったところです。
ソーシャルメディア活用のヒント
――では最後にまとめとして、ソーシャルメディア活用に取り組んでいくヒントなど、メッセージをいただければと思います。
津田:私はブランド担当者として、ソーシャルメディアは迷いながら使っています。ですが、最初にいいね!の数など数字だけを追ってしまうと、何も残らないと思います。
競合がマスでやっている時に、ソーシャルメディアで売上や認知をあげるのは、難しいでしょう。私から言えることは、小さくてもいいので、何か一つ、明確な目的を決めて、とりあえずやってみると、そこから活用方法がひろがっていくということです。
あえて小さくていいのです。先ほど話しにあがったサッポロビールさんが製品開発やアイデアコンセプトのテストを行い、結果を得るツールとして活用しているように、このような用途にソーシャルメディアはすごく向いています。
ソーシャルメディア上で何かしら問いかけると、ファンの皆さんは自発的に声を返してくれるので、こういうところから始めてみてもいいと思います。
森:社内から、ソーシャルメディアに取り組みたいという声はよく聞きます。もし、社内で逆風が吹いていたら、社内の人を見方につけることが大切ですね。ソーシャルメディアはどうゆうものなのか。何ができるのか、その可能性を一個人として実感してもらうことから始めていくことが先決です。
加藤:世の中でソーシャルメディア活用の成功事例はたくさん出てきているように、やり方は無数にあります。ただ、企業やブランドによって、目的がそれぞれ違いますので、一番大事なのは、そのブランドや企業の目標や課題をきちんと把握することです。そしてその上で、ソーシャルメディアではどのようなことが補えるのかを考えていくべきでしょう。それから、他社の事例とか何でもいいが、合致するものがあれば、そのやり方をまねてチャレンジしていけばいいと思います。