ソーシャルメディアの将来はビジネスそのもの
続いてのソーシャルメディア関連セッションはPrudentialのソーシャルメディア・ディレクターのAugie Ray氏が登壇した。

現在Augie氏は事業会社側で仕事をしているが、フォレスターリサーチ時代には数多くのソーシャルメディア関連書籍や調査を発表し、数多くのカンファレンスでセッションを経験している。今回の講演タイトルは「ソーシャルメディアの未来」だ。
Augie氏は冒頭、ソーシャルメディアの将来は「メディア」ではなく、「ビジネス」そのものだと断言し、将来を見るためには歴史を振り返る必要があるとし、インターネットの歴史に触れた。
「1996年、ウェブサイトはただの情報サイトでコマース機能はなかった。1999年にナップスターが登場し、物理的なCDパッケージ販売ではなく、ファイルダウンロードという流通形態を作りだし音楽業界を震撼させた。2005年にはスカイプが同じように通信業界を震撼させ、同じ年には動画の流通だけではなく、プロクリエイターを脅かすアマチュアを大量発生させ、『エンターテインメント』の定義そのものに変革をもたらすウェブサービスが登場した。そう、YouTubeだ」
1996年から2012年までの間に、Eコマースの市場は小売市場全体の5.4%に成長した。5.4%は大きな数字ではない。それでもインターネットは小売業界のそのものに変革をもたらし、私達のコミュニケーション方法、マーケティング、リサーチ手法、採用、製品、サービス、ありとあらゆるものを変えたと述べた。
例えば非常に長い伝統に支えられた自動車業界がどのように変わってきたか見てみよう。
当然ながら、メーカーが販売し、消費者が購入し保有するというビジネスの形態だったが、「北米の自動車保有者は8%の時間しか車を運転していないので、膨大な無駄がここにはある。その結果、zipcarというカーシェアリングの会社が生まれた」(Augie氏)と説明する。
企業が保有・メンテナンスをし、消費者は必要な時間だけレンタルをする。 今はさらに進んで、RelayRidesという会社がある。この会社は車を所有する消費者と、車を借りたい消費者を繋げるC2Cのウェブサービスを展開し、近年類似企業も含めて成長している業態である。
さらにスタートアップだけでなく、大企業もこのビジネスに参加してきている。Google、エイビス(AVIS)、コンデナストは出資という形式で既に参入している。また、IKEA、ウォルマート、Best Buyというスーパー大企業も実験的なC2Cの試みをはじめている。
例えば、ウォルマートは店舗での購入客に特別ディスカウントを提供する代わりに、他の購入客の自宅への商品配達をお願いしている。購入客にとっては、配送を請け負うかわりに特別ディスカウントが受けられるメリットがあり、ウォルマートにとっては配送費の削減などにつながる。このように、既にソーシャルのビジネス化への取組は大企業レベルでもはじまっているのだ。