経営方針のひとつにデジタル戦略の推進を掲げる
バーバリーは1856年にイギリスで生まれたラグジュアリーブランド。歴史あるブランドというイメージがある一方で、デジタル活用に最も積極的なブランドのひとつと言える。事実、Facebook上には1,500万人を超えるファンを持ち(2013年8月時点)、早くからライブストリーミングでのファッションショーを配信するなど、デジタルを積極的に活用している。
チーフ・クリエイティブ・オフィサーにクリストファー・ベイリーが、そして2006年にCEOとしてアンジェラ・アーレンツが就任したことが、デジタル活用を積極推進する転機となったようだ。(参考:21世紀のラグジュアリーを定義せよ-バーバリーはいかにしてデジタル革命に成功したか,WIRED)。バーバリーのオウンドメディアを要素分解すると以下の図の通りとなる。実に多様なコンテンツで構成されていることがわかるだろう。
話題のBurberry Kissesキャンペーンとは
積極的にデジタル活用を進めている中、最近海外を中心に話題になったキャンペーンがある。Burberry Kissesだ。ローンチ後すぐに、米国ニューヨーク大学デジタルシンクタンクであるL2のサイト内で、今週最も見られたビデオとして紹介されるなど注目を浴びている(参考記事:Vogue & Burberry Lead the Week’s Best Fashion Videos)。
Burberry Kissesでは、自分のキスマークを友人や大切な人にメールで送ることができる。Burberry Kissesで送信するキスマークは、デスクトップではWebカメラで唇を撮影し、モバイルからは画面に直接キスをすることで唇の形を認識する仕掛けだ。
また、オプションとして、バーバリービューティのリップカラーから好きな色を選んでペイントすることもでき、キスマーク付きのメールが送信されると、受信者がいる場所までの経路をGoogle EarthおよびStreet Viewと連動した鳥瞰の3Dアニメーションで楽しみながら、専用サイトではメッセージが飛び交う様子がリアルタイムで表示される。ロケーションマップは、ソーシャルメディアでシェアが可能となっており、専用サイトではGoogle Chromeおよびモバイルから利用できる。
テクノロジーを駆使したキャンペーンという面で興味深いキャンペーンと言えるが、より注目すべき点はこのキャンペーンが商品の拡販を目的としたものではなく、バーバリーらしいクリエイティブでブランドの世界観を体現している点にある。それは、クリストファー・ベイリーの「テクノロジーを活用し世界中のバーバリーファンを繋げたい」というコメントにも表れている。
バーバリーのチーフ・クリエイティブ・オフィサー クリストファー・ベイリー(Christopher Bailey)は、「現実の世界でバーバリーが作り出している体験やエモーションをデジタルでいかに伝えられるか、わたしたちはいつも考えています。テクノロジーにほんの少し人の温かさを与えてみたい、そしてそのテクノロジーで世界のバーバリーファンをつないでみたい、というアイディアからスタートしました」とコメントしている(出典:キスを送るデジタルコンテンツ バーバリーとGoogleが開発,Fashionsnap.com News)。
考えてみれば当たり前だが、ブランド企業にとってテクノロジーは“ブランディングを実現するツールのひとつ”ににすぎない。あくまでも、自分たちの世界観を伝えるための“道具”としてテクノロジーを活用するという姿勢が、このキャンペーンから伝わってくる。