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東京とは一味違う! 「アドテック九州」レポート

「テレビの役割って何なんだ」、堀江氏が“TVのWeb化”について語る


吉田氏「テレビにはいろんな面がある」

 アドテック九州の別のセッションに登壇し、当時会場内にいた吉田氏はかつて、フジテレビで「笑っていいとも」など人気番組の制作現場で活躍していた人物で、堀江氏とも面識がある。吉田氏は「堀江さんのアイデアはすばらしい。どうウェブに誘導してマネタイズするか今みんながんばっている」と挨拶し、議論に加わった。

ワタナベエンターテインメント代表取締役会長・吉田正樹氏(左)
ワタナベエンターテインメント代表取締役会長・吉田正樹氏(左)

 吉田氏は「テレビにはいろんな面がある。報道、中継、情報を伝える部分と、作品をつくって儲ける部分。それがいま非常に狭いところで議論されてる。もっと多くの人に自然に受け入れられる特性がテレビにはあるのでは」と、ステージ上の議論に疑問を投げかけた。

 そのうえで、堀江氏の主張は「実にもっともだ」と述べ、「今のテレビの制作者は、テレビの中にウェブを持って来ようとする。テレビの中にツイッターをいきなり取り込もうとする。それは、実は活用でもなんでもなくて、“やってますよ”というエクスキューズに過ぎない」と語った。

堀江氏「テレビの役割ってなに?」

 録画によってタイムシフト視聴が可能になると、テレビの広告効果の指標となる「視聴率」もその内実が変わってくる。ここから新たな議論が始まった。

 堀江氏が「録画された番組の視聴率は、広告効果はあまりないのでは」と述べると、吉田氏は「そこを乗り越えるアイデアが必要。テレビで知って、ウェブで深める。テレビは幅広いきっかけになる」。それに対して「そこはもう会員化しかない。みんながNHKになる。会員から得られる収益でコンテンツをつくる。WOWOWはそれができている」(堀江氏)。

 さらに、堀江氏は「僕は報道がテレビの役割なのかなと、そこが疑問なんですよね」
 吉田氏「それは法律で決まっている」
 堀江氏「だったら法律を変えてもいい」
 吉田氏「それは別次元の話」
 堀江氏「別次元かもしれないけど」
と応酬が続く。

 「バラエティであれドラマであれ、今の世の中をどう見ているかという意味ではジャーナリズム。アーカイブでみんな満足してしまうというのは、今の日本のエンタ-テイメントやテレビ放送にとっていいことなのか。新しいものをつくらなくてもよいのか」(吉田氏)

 「新しいものはつくっていかなければならない。でも、ジャーナリズムに関してはウェブが中心になってもいいと思う。既存のテレビ局の役割はもっとドラスティックに変わっていかないと」(堀江氏)

 こうしたやりとりに対して、有吉氏も一言。「会員化して有料化するのは違和感ある。日本のテレビ局は専門チャンネルではない。テレビの広告モデルがもっとクリエイティブに変わっていくのではないか。生(放送)だけでなく、蓄積型、録画型の視聴を認め、タブレットでの視聴も全部ひっくるめて、広告ビジネスをもう一度考え直す必要がある」と主張。

 また、タイムシフト視聴でのCMスキップについても「みなさん、録画試聴と言うと“スキップされる”と言うけれど、データを見ながらやらないと。SPIDERで100世帯を対象に2008年から取っているデータでは、スキップされない番組や時間帯がある」(有吉氏)。

視聴者と作り手、双方が納得する環境はありえるのか

 その後も、ネットでこれまでできなかったゴルフ中継の話、YouTubeの動画広告、ビデオ・オン・デマンド、良質なコンテンツへの利益還元など、さまざまな話題について議論が続いた。

 堀江氏が「(テレビは)権利だけ取って、視聴者を置いていってる状況がある」と述べると、吉田氏は「言わないと聞こえないし、それが誰の利益なのかについては声を上げるべき」。堀江氏は「もっとユーザーフレンドリーになるべきだと思う。ユーザーを第一に考えて、テレビ局も広告業界も動いていかないと置いていかれるんじゃないか」と指摘した。

 有吉氏「TVのWeb化の一番の利点は何か考えると、好きなときに好きなものを自分で選んで見られる、コントロールが自分のほうにあるということ」
 石黒氏「究極的にはオンデマンドになっていく?」
 吉田氏「それは、作り手が新しい制作物をつくれることが担保できる仕組みじゃないと成り立たない。過去のもので充足する、つくっているけどお金が儲からないということではまわっていかない」
 堀江氏「だからこそ良質なコンテンツにがんばってお金をかけるしかない。だから、バラエティはネットに任せろという話なんです。ヒカキンTVのような個人のネット動画作者の機材がどんどん良くなり、コンテンツもブラッシュアップしていったら、テレビの役割ってなんなんだ」
 吉田氏「もっと違う角度で人を引き付けるものを作っていかないと、残っていけないだろう」

 尽きない議論に、セッションは時間切れの様相に。堀江氏は最後に「11月9日に仮釈放期間が終わるので、テレビをからめたかたちでの事業をやろうとしているので期待してほしい」と語った。また、有吉氏は「TVのWeb化を考えるときには利便性やインターフェイスが大事。無理やりネットと融合させるのはダメだと思う。テレビとセカンドスクリーンを併用するような形よりももっと利便性の高い、サクサク動くしくみをSPIDERで追及していく」と語った。

 2日間にわたって行われた「アドテック九州」の最後を飾るにふさわしい刺激的なディスカッション。予定にない形で登壇することになった吉田氏も含めた登壇者に対して、会場から大きな拍手がおくられた。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

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MarkeZine(マーケジン)
2013/07/17 20:40 https://markezine.jp/article/detail/18132

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