SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

次世代広告コミュニケーションの秘訣

ネイティブ広告は有益なコンテンツに成り得るのか?新しいマネタイズ手段としての米国伝統メディアの取り組み

米国のほとんどの出版社がネイティブ広告を採用

 著名な伝統メディアサイトが競って、ネイティブ広告に乗り出すようになってきた。155年超の歴史を誇るオピニオン雑誌アトランティック(Atlantic)も軌道に乗せてきた。すでに、ソニーやIBM、シェルなどの大手企業をネイティブ広告主として取り込んでいる。シェルは6月後半からほぼ毎日自作の記事を投稿している。エネルギー問題を論じた記事などが目につき、編集記事に匹敵するレベルのコンテンツが多い。エコノミスト(Economist)は動画コンテンツのネイティブ広告を始めている。トップページの編集枠内の目立つ位置に置かれたマルチメディア欄では、最新の動画/音声記事20本が視聴でき、その中の1本が広告主が提供する動画記事である。

エコノミスト・サイトのトップページ
マルチメディア編集欄では動画/音声記事が20本掲載されている。この例では、その中の1本がGEが提供する動画であった。

 これからは、メディア・サイトの編集記事に接していると、企業が提供する記事をいつのまにか閲覧している場面が増えそうだ。ネイティブ広告記事が消費者から歓迎されるコンテンツならほとんど問題にならないだろう。一流メディアサイトと大手広告主の組み合わせで進められているネイティブ広告は、広告主側が体制を整えてレベルの高いコンテンツを制作していることもあって、今のところ順調に滑り出している。

 メディアも広告主も、これからの広告事業を盛り上げるために、このネイティブ広告に意欲的に取り組んでいる。米国のオンライン出版協会(OPA)の最新調査によると、同協会の加盟出版社の73%がネイティブ広告を既に採用している。年内には90%に達するという。新聞、雑誌、TVなど主要出版社のほとんどがネイティブ広告を採用することになるのだ。一気にネイティブ広告が大半のメディアサイトに拡大しそうだ。ネイティブ広告では、プレミアムスペースである編集枠の一部を広告主が買い取り、そこに広告主が作ったコンテンツが次々と投稿されていく。コンテンツの中身について、原則としてメディアの編集室は関与しない。しかし広告記事の妥当性を十分にチェックできないとなると、やはり危険が伴う。

 教訓となる大きな失敗も発生した。昨年末にアトランティックが、新興宗教のサイエントロジー(Scientology)とネイティブ広告主の契約を結んだ時のことである。新興宗教が作成したコンテンツが、アトランティック・サイトの編集欄内に掲載された。それに対して同雑誌の読者などから抗議が集まり、アトランティックは謝罪しその広告記事を削除すに至った。権威ある知的なメディアであるアトランティックの読者にとって、ふさわしくないコンテンツの記事が掲載されたということである。

 広告業界としてのネイティブ広告の定義や運用ガイドラインが固まる前に見切り発車しているだけに、このようなネイティブ広告記事のコンテンツに絡んだ問題が今後も起こりかねない。次回は新興ソーシャルメディアにおけるネイティブ広告について解説していく。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
次世代広告コミュニケーションの秘訣連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

田中 善一郎(タナカ ゼンイチロウ)

ITメーカーで情報通信システムの開発に従事。その後、新聞社系雑誌社に転職。電子、通信、コンピュータ分野の記者として、LSI設計、ネットワークなどの最先端技術をカバー。90年代当初からインターネットメディアに傾斜し、ニュースメディアサイトの立ち上げに従事。雑誌社退職に合せてブログ「メディア・パブ」を2004年に立ち上げる。また監査役として、急成長するSNSベンチャーに6年間身を置く。2012年10月からフリーに。

■関連リンク

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2013/07/22 08:00 https://markezine.jp/article/detail/18143

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング