米国のほとんどの出版社がネイティブ広告を採用
著名な伝統メディアサイトが競って、ネイティブ広告に乗り出すようになってきた。155年超の歴史を誇るオピニオン雑誌アトランティック(Atlantic)も軌道に乗せてきた。すでに、ソニーやIBM、シェルなどの大手企業をネイティブ広告主として取り込んでいる。シェルは6月後半からほぼ毎日自作の記事を投稿している。エネルギー問題を論じた記事などが目につき、編集記事に匹敵するレベルのコンテンツが多い。エコノミスト(Economist)は動画コンテンツのネイティブ広告を始めている。トップページの編集枠内の目立つ位置に置かれたマルチメディア欄では、最新の動画/音声記事20本が視聴でき、その中の1本が広告主が提供する動画記事である。

マルチメディア編集欄では動画/音声記事が20本掲載されている。この例では、その中の1本がGEが提供する動画であった。
これからは、メディア・サイトの編集記事に接していると、企業が提供する記事をいつのまにか閲覧している場面が増えそうだ。ネイティブ広告記事が消費者から歓迎されるコンテンツならほとんど問題にならないだろう。一流メディアサイトと大手広告主の組み合わせで進められているネイティブ広告は、広告主側が体制を整えてレベルの高いコンテンツを制作していることもあって、今のところ順調に滑り出している。
メディアも広告主も、これからの広告事業を盛り上げるために、このネイティブ広告に意欲的に取り組んでいる。米国のオンライン出版協会(OPA)の最新調査によると、同協会の加盟出版社の73%がネイティブ広告を既に採用している。年内には90%に達するという。新聞、雑誌、TVなど主要出版社のほとんどがネイティブ広告を採用することになるのだ。一気にネイティブ広告が大半のメディアサイトに拡大しそうだ。ネイティブ広告では、プレミアムスペースである編集枠の一部を広告主が買い取り、そこに広告主が作ったコンテンツが次々と投稿されていく。コンテンツの中身について、原則としてメディアの編集室は関与しない。しかし広告記事の妥当性を十分にチェックできないとなると、やはり危険が伴う。
教訓となる大きな失敗も発生した。昨年末にアトランティックが、新興宗教のサイエントロジー(Scientology)とネイティブ広告主の契約を結んだ時のことである。新興宗教が作成したコンテンツが、アトランティック・サイトの編集欄内に掲載された。それに対して同雑誌の読者などから抗議が集まり、アトランティックは謝罪しその広告記事を削除すに至った。権威ある知的なメディアであるアトランティックの読者にとって、ふさわしくないコンテンツの記事が掲載されたということである。
広告業界としてのネイティブ広告の定義や運用ガイドラインが固まる前に見切り発車しているだけに、このようなネイティブ広告記事のコンテンツに絡んだ問題が今後も起こりかねない。次回は新興ソーシャルメディアにおけるネイティブ広告について解説していく。