国内BtoCのEC市場規模は8.5兆円、さらに拡大の見込み
電化製品や書籍・音楽ソフトなどのECが一般化し、いまや食品や日用品までも気軽にネットスーパーで購入できるようになった。国内BtoCのEC市場規模は一昨年の時点で8.5兆円に成長(※)。
ゼロスタート 代表取締役社長の山崎徳之氏は「小売業全体の市場規模は130兆円と言われています。もちろん実店舗がなくなることはありませんが、ネットを使う人口の広がりを考えると、ECにはまだまだ大きな伸びしろがあります」と話す。
検索やレコメンド、効果測定ソリューションなどを提供しECサイト支援を行う同社では、この数年でサイト内検索エンジン「ZERO-ZONE Search」がイトーヨーカ堂やローソンHMVエンタテイメント、カカクコムといった大手企業へ次々と導入され、大きく業績を伸ばしている。特に商品点数やユーザー数の規模が大きい企業が採用しており、平均で130%ものコンバージョン向上を実現している。
山崎氏は、アスキー、So-netでのエンジニア、オン・ザ・エッヂ(現ライブドア)のデータシステム構築などを経て2006年にゼロスタートを設立。SNSシステムやレコメンドエンジンの開発・販売、サイトの受託開発を主に展開していたところ、特にECサイトでの検索エンジンに対するニーズが高かったため、商品化に踏み切った。
※ 経済産業省「平成23年度我が国情報経済社会における基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」
ゴルフダイジェスト・オンラインがゴルフ場予約検索に採用
以前はレコメンドエンジンの引き合いが強かったというが、「この2年ほどで『ZERO-ZONE Search』が伸び、現在では主力になっている」と山崎氏。ユーザーへのクロスセルを狙うべく、レコメンドエンジンの相談を受けた企業でも、課題を探ると意外と検索エンジンがネックになっていることが多いという。
「ZERO-ZONE Search」の成長に弾みがついたのは、2010年にゴルフダイジェスト・オンラインのゴルフ場予約検索に採用されたこと。それまでの受託開発などで蓄積したノウハウを集約した検索エンジンを、ユーザーのニーズやサイト内での振る舞いに合わせて徹底的にカスタマイズして適用したところ、コンバージョンが大きく向上した。現在では当然のようにスマートフォンにも対応し、顧客の離脱を防ぐシステムとして高い評価を得ているという。
ゴルフダイジェスト・オンラインは、デジタルマーケティングへの先進的な取り組みで知られる企業。同社への導入以降、「ZERO-ZONE Search」はEC市場の拡大に伴って実績を伸ばしてきた。その背景のひとつとして、山崎氏は「ユーザー層の変化・広がり」を挙げる。
「以前は、オンラインで予約をしたり商品購入をしたりするのはPC操作に慣れている人たちでした。それが最近では中高年層にもECが広がり、スマートフォンやタブレット端末の拡大によってPCを持たない若年層、主婦層なども加わっています。そうした新しい層への配慮が求められているのです。」
中高年、主婦……デバイス操作に慣れないユーザーへの対応が必須に
いわば、ECの利用者のボリュームゾーンがアーリー・マジョリティーからレイト・マジョリティーへと移りつつある。そのため、これまでのユーザーが難なく使ってくれていた機能も見直しを図り、できる限り迷わず簡単に目的にたどり着ける仕組みにすることが、離脱を防ぐ一番の対応策となる。
また、大手企業がこぞってそうした層に注目し、ECサイトを極力便利に使えるように改善していることも、ユーザー層の拡大に拍車をかけている。性能が低いサイト内検索エンジンの場合、在庫がないものが上位に表示されたり、少しずれたキーワードだと検索結果が「0件」になってしまったり、といったことがよく起きる。「もち(餅)」と打つと「おもちゃ」が先に出てきてしまう例もあったという。
「以前のユーザーなら、自分で検索内容を変えてトライしてくれました。でも、これからは違います。検索エンジンは、企業がユーザーに対して使いこなしてもらうツールから、ユーザーの入力した条件に基づいて企業がオファーするためのツールになりつつあります。」
検索枠へのキーワード入力は、店頭で顧客の側がほしいものを宣言しているのと同じ。それも、今ほしいという瞬間にだ。「その機会を逃すのは非常に惜しい」と山崎氏。
検索エンジンが“コンシェルジュ”になる時代
サイト内検索の重要性が増している理由のひとつに、ECで取り扱う商品のカテゴリが拡大していることも影響しているようだ。食品や日用品など、生活に身近な商品になるほど商品点数が多く、ほしい銘柄が決まっていない場合も多い。好きなアーティストの音楽作品なら検索も容易だが、例えばしょうゆを探す際にブランドまで指定するユーザーは多くない。
また、最近ECが好調なアパレルも、色やスタイルなど漠然としたイメージから商品を絞るのが一般的だ。だから、顧客一人ひとりの要望を検索エンジンが汲み取り、より親身になる必要がある。
「そういう意味では、当社では検索エンジンこそがECにおける“コンシェルジュ”になる、と考えています」と山崎氏は語る。
「そもそも店頭では、店員にほしいものを伝えて在庫がなかった場合、普通は代わりの商品を提案したり入荷日を教えてくれたりしますよね。検索結果が『0件』と表示されるだけというのは、まるで『うちにはありませんから、よそへどうぞ』と言われているようなもの。せっかくユーザーが自ら要望を入力しているのだから、その情報をフルに活用して、プラスアルファの提案ができるコンシェルジュのような挙動がECサイトにも必要な時代になっているのです。」
ユーザーにストレスをかけない圧倒的な処理速度
具体的に、「ZERO-ZONE Search」のどのような機能や挙動がユーザーの離脱を防いでいるのだろうか? 例えばリテラシーの高くないユーザーに使いやすいのは、サジェスト機能。キーワードを先頭の数文字入れれば候補が表示される、漢字が分からなくてもひらがなで補完されるといった性能が高いと、それだけユーザーは次のステップへ速く、ストレスなく進むことができる。
また、旅行商品の検索などでよく見られる、日時やエリア、各種条件を入力して絞り込んでいくドリルダウン型検索も有効だ。絞り込んでいって、たとえ候補が少なかった場合でも、ひとつの項目の指定を変えれば、それ以外をキープしたまま検索を続けられるよう配慮されている。また、それぞれの検索条件によって何件ヒットするのかが都度表示されれば、直感的に規模感を把握しながら探すことができる。
検索エンジンの性能が低いと、迷路を歩くようにユーザーをたらいまわしにすることもある。そんな状況を発生させないのは当然、と山崎氏は話す。
「さらに、店頭の目立つ場所に特売品が並べられているように、ユーザーに合わせたおすすめをホットワードとして候補に出すなどの提案ができると、ユーザーが気持ちよく買い物をしてくれる環境がより整います。そして、それらすべての挙動を極力速く処理する。それが当社のシステムの強みです。」
リアル店舗並みの満足度やホスピタリティを実現する
商材に合わせて、また一人ひとりのユーザーに合わせて、店頭スタッフのようにもてなす。その考えに基づいて開発された「ZERO-ZONE Search」は、導入企業ごとにデータも機能も完全にカスタマイズされる。競争が激化しているネットスーパーも、全該当エリアの実店舗の在庫とリンクする際には、膨大な情報量ながら15分程度でデータの更新ができるという。
もちろん導入後も、表示順や揺らぎ対応のチューニング、A/Bテストの実施、効果測定までを手厚くサポート。継続的に平均130%のコンバージョン向上を実現しているのだ。「従来のリアル店舗に慣れた人たちにどれだけ配慮できるかが、この先数年のECの業績を伸ばすカギになる」と山崎氏は展望を語る。
山崎氏はよくクライアント企業に「リアル店舗ではどうしているか」と尋ねるという。「優秀な店員なら、顧客の身なりやカップル、ファミリーなどの構成、時間帯などによって一瞬で挙動を変えるのは当たり前。まだまだ、オフラインの方が買い物をする環境としては優れています。一方オンラインでは得られる情報が少ないので、検索が唯一のチャンスといっても過言ではありません。今後も、オフライン並みの満足度やホスピタリティの実現を目指していきます」。大手企業への導入が相次ぐ「ZERO-ZONE Search」のパフォーマンスは、EC事業の成長に強い味方となるだろう。