「運用型広告」の発展と課題
2002年から始まった検索連動型広告の急成長にはじまって、この10年で日本のインターネット広告市場は大きく変化しました。特にここ数年のDSP、Facebook Adなど、いわゆる旧来の「プッシュ型広告」と言われていたような広告手法においても、配信属性の精密化、配信単価コントロールの柔軟性向上など、広告を出稿するだけではなく、広告掲載開始後に運用(メンテナンス)が必要で、かつその運用によって広告効果を改善することができる広告手法が大きく広まったといえるでしょう。
そういった広告手法の総称が「運用型広告」と定義され、電通発表の「日本の広告費」の中で用いられるようになった現在、広告主、代理店、媒体社各社の視点から、これらの広告をどう扱うべきかというのが課題となっている現状も存在します。
急成長している運用型広告ではありますが、DSPの普及、アドネットワークの拡大など、マーケティング環境が進化するなか、ともすると検索連動型広告の重要性が下がったと考える読者もいらっしゃるかもしれません。一部においてはそれは事実であるとも言えます。しかし、ほかの運用型広告手法が発展しているからこそ、検索連動型広告の重要性が増しているケースが多いことは残念ながらあまり知られていません。
今回はアドテクノロジーの発展に伴う検索連動型広告の重要性と可能性について解説していきます。
「今まさに興味がある」ユーザーへのリーチ
まず、検索連動型広告と他広告手法の最大の違いを考えてみましょう。それは検索連動型広告が「今まさに興味がある」ユーザーにリーチできるということにほかなりません。
ほかのターゲティング手法では、そのユーザーが過去に何に興味があったのか、どういうことに関心があるのかという事実を推測して広告を配信しますが、検索連動型広告の場合、消費者が検索という「自身の欲求を直接的に入力する」行為によって広告が配信されるため、興味関心の高まり度合いが最も高いタイミングで広告に接することになります。言い換えると、現在のところ消費者自身が自分の欲しいものを明示的に入力するインターフェースは検索エンジンだけということになります。
消費者行動の可視化の中で検索は絶対に必要
他の運用型広告手法を見てみると、広告に接触した瞬間、その消費者が何を求めているのか、というところは実際のところ不明です。ただし、それらの広告に接触した後に検索して訪問する、ないしは検索で訪問した後にリターゲティングで追いかけるなど、検索という行為がそれぞれの運用型広告をつなぐブリッジになっていることは、実際の消費行動上多数見られる特徴です。
もう少し噛み砕いた言い方をすると、一般的に効果があるといわれているリターゲティング広告も、検索経由で訪問したユーザーと通常のリンクから訪問したユーザーとではコンバージョン率に2倍近い差がついていることがあります。逆説的に言えば、そういうケースにおいてはリターゲティングの効果を最大化するためには検索経由の訪問を増やさなければならない、ということもありえますし、そういう意味でも消費者の「検索する」という行為を無視したデジタルマーケティングのプランニングは不可能であると言えるでしょう。