デジタルマーケティング時代に、マーケターに求められる変化とは何か
デジタルマーケティングの発達によって、多くのマーケターは焦っている。Google Analyticsは自社サイトのアクセス状況を毎日のようにレポートするし、広告のクリック率は自社広告の効果をリアルタイムに報告してくる。多くのマーケターは、これまでの仕事の仕方を見直さねばならないと実感しているのではないだろうか。
しかし、マーケティングの概念そのものが大きく変わったわけではない。「顧客の価値を創出し、顧客に届け、よりよき社会を創り上げていく」というマーケティングの目的は、変わらない。価値を生みだし、社会に貢献することこそ、企業の使命なのだ。
では、このマーケティングの目的を達成する上で、デジタルマーケティングができることは何か。日本IBMで長くマーケティングに従事し、シリーズ50万部を突破した『100円のコーラを1000円で売る方法』(中経出版)の著者である永井孝尚氏は、「迅速な仮説検証と実行」「チャネルの拡大」「膨大なスケーラビリティとスピードの獲得」を挙げる。
消費者が商品に求める価値は、多機能でも低価格でもない
加えてデジタルマーケティングは、マーケティングミックスにおいて新技術活用を可能とした。マーケティングミックスとは、マーケティングを考えるうえで、押さえるべき主要な4つの概念を指す。「Place(流通チャネル)」「Price(価格)」「Promotion(プロモーション)」「Product(商品)」の4つであり、4Pとも呼ばれる。
Place(流通チャネル)
Price(価格)
Promotion(プロモーション)
Product(商品)
例えば、Place(流通チャネル)においては、地域の小売事業者であっても、Web、モバイル、SNSなどで、遠方の顧客にリーチすることができるようになった。また「Google Adwords」などのサービスで、より安価で効果的なPromotion(プロモーション)ができるようにもなった。
しかし、変わらないものもある。永井氏はセミナーの受講者に、よく3つの質問をするという。「最近どうしても欲しいと思って買ったもの」「他の選択肢」「買おうと思った決め手」だ。かっこよさと薄さに惹かれてMacBook Airを買った人もいれば、他の電動歯ブラシと比較検討した結果、かわいく持ち運びができる、ポシェットに入る電動歯ブラシを買った女性もいたという。
「今まで講演会で100名以上の方に答えていただきました。しかし、これまで多機能を理由にする方はいませんでした。低価格を求める人も、実際には1~2割しかいませんでした。多くの場合は、価値観、利便性、お気に入り、などが買った理由でした」と永井氏。
このように、消費者が求める価値と商品が提供する価値が合致し、他の商品がその価値を提供できないとき、それが購買の理由になる。マーケティング用語で、「バリュープロポジション」と呼ばれる。先の電動歯ブラシの例で言うと、電動歯ブラシを持ち歩くという若い女性のライフスタイルを考え、持ち歩いてもかわいい電動歯ブラシを企画する、ということになる。
「本来、全ての人は消費者だ。だから消費者のことを理解するのは簡単なはずだ。しかし企業側にいると、なかなか難しいのが現実だ」と永井氏は指摘する。