照明技術のようなアプローチで
昔からコピーも含めて広告は、消費者の欲望と商品を強く結びつけてきた。表現やアプローチの方法は時代とともに変わってきたり、進化したりしてきたが、欲望をつかんでそこにフォーカスをするという点は変わらない。
また古い話で恐縮だが、コピーライティングの古典『市場の壁を打ち破るプロ広告作法』の中でも、コピーライターの最初の任務として<欲求の検出>が挙げられている。私たちの中にある欲望を探し出し、その中からもっとも商品と強力に結びつくものを選び出せというわけだ。
つまるところ、訴求ポイントを考えることは、欲望と商品の結びつきを考えることだと言っていい。とくに<モア・ベター型>商品で、コンシューマ向けで、想定ユーザーが広いものは、さまざまな欲望と結びつけることができるのでヒットポイントを見つけるのに苦労をするかもしれない。
しかし、見つけることができたならば、よりベターなイメージや状況を鮮やかに表現することで、<モア・ベター型>商品の価値を強く訴求することができる。
今夏スーパーからなくなった「サバ缶」 どう照明が当たったか
今年の夏に一時スーパーからなくなったと言われたサバ缶を例に見てみよう。買い占められた原因は、テレビ番組でサバ缶を食べると痩せると言われたからだ。大きなリーチを持つテレビの影響というのもあるが、売れまくったのは健康、ダイエットという強い欲望と結びついたからだと言える。
サバ缶と欲望の関係はダイエットだけだろうか?他に欲望は生まれないのか、先にあげた欲望に当てはめながら考えてみよう。すると、次のような訴求ができる。
- 節約(お金)料理としてのサバ缶
- 簡単にすぐできる(時間も労力も楽したい)料理としてのサバ缶
- 美味しい料理(食べる喜び)の素材としてのサバ缶
- 魚中心の食生活(より健康に)の素材としてのサバ缶
どうだ、たかがサバ缶、されどサバ缶。ダイエット以外にも、私たちの欲望を満たす要素はあるのだ。欲望を当てはめてみれば、欲望を強く持つ相手も見つけやすくなる。節約や健康であれば、1人暮らしの大学生や社会人がマッチするだろう。<誰に><何を>言うか、メッセージの基本設定がしっかりできるようになる。
同じものでも、光の当て方によって影が変わるように、商品にも多面性はある。欲望という名のライティング(Lightingの方ね)を施すことで、商品は異なる価値、異なるユーザーを持つようになる。新しい市場だって生まれる。
<もっとも強い欲望と商品と結びつける>ことは、コピーや広告づくりの基本ではあるが、商品のプレゼンテーションという視点から見れば、印刷メディア、Webの広告に限らず、オウンドメディア上のコンテンツのテーマづくりにも使えるのである。
訴求テーマや対象にあれこれ迷ったら、この商品の機能や特徴は、果たして人のどのような欲望を満たすのか?と基本に立ち返って考えると見つかりやすいかもしれない。お試しくださいな。
まとめ
- 商品は<ソリューション型>と<モア・ベター型>になる
- 使い方やユーザーの属性が幅広い商品の訴求ポイントは、人の欲望から考える
- 最も強い欲望と商品をむすびつけることが、ライティングの第一歩

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