スパイスボックスは、12月20日、広告分野における2014年のクリエイティブテクノロジーの6つのトレンドを発表した。同社のテクノロジー研究開発機関として7月に設立したプロトタイピングラボWHITEが国内外の最先端事例を基に、2014年に具現化が進むであろうトレンドをまとめた。
広告分野におけるテクノロジーはオフライン、オンラインの両分野で長らく別々の発展を遂げてきたが、昨今、急速なネットワーク技術の進化、ハードウエアの小型化・高性能化など、両分野をつなぐことで新たな広告体験を生み出す技術革新が続いている。従来の広告表現にデジタル技術が新たに加わることにより、企業は生活者に対し、これまで以上に深い広告体験を提供できるようになる。
1、モノのインターネット化の広告利用が進む
IoT(Internet of Things:モノのインターネット化)はセンサー、およびネットワーク技術によって、身の回りにある様々な“モノ”がインターネットにつながることを差す。これまで一律の情報提供しかできなかった公共空間に設置された表現物がセンサ・ネットワークと接続することで、相手にあわせてOne to Oneのコミュニケーションを実現する事例が登場している。
今後は、センサー技術やBluetooth(近距離無線通信)技術などの通信機器・モジュールが小型化、低価格化、開発の簡易化が進むことにより、自販機のみならず、交通標識や看板など、都市空間に設置された表現物の多くがパーソナライズドされ、人々と企業をつなぐタッチポイントへと変容していくだろう。
2、「HAPTIC(接触可能)/VR(仮想現実)」で新たな広告体験
従来の広告は視覚と聴覚に多くを依存するものであったが、視聴覚以外の五感にアプローチすることで、より記憶に残るHAPTICなインタラクティブ体験を創出する動きが広がりつつある。これらを支えているのがアクチュエーション(出力)技術の進化である。
例えば、スマートフォンに接続して匂いを発することで「嗅覚」を刺激するデバイスが発表されたり、空気の弾を人に放ち、あたかもオブジェクトに触れているような感覚をあたえる「触覚」に訴えるアクチュエーション技術が発表されている。最近登場している高性能のVRヘッドセットや小型プロジェクター、超音波スピーカーなどの高精度の視聴覚出力装置とこれらの出力装置を組み合わせることで、より五感に訴える広告体験を実現できるようになる。
3、データビジュアライゼーションの新潮流
従来は取得できなかった、もしくは取得していたものの埋もれていたデータが可視化されることにより、言葉が持つ訴求効果以上の説得力をデータが持ちつつある。未公開のデータはまだ世の中に数多く存在し、一方では国が主体となって進めているオープンデータは、より利活用しやすい環境作りが進められていく。こうしたデータの発掘、加工、活用が進めば、企業のブランド価値をさらに高めていく効果が期待できる。
ビッグデータの活用技術が進む中で、今後はデータビジュアライゼーションによる訴求効果の拡大を狙った広告が登場し続けそうだ。膨大なデータを視覚的にわかり易く美しいインフォグラムで表現したり、デジタルサイネージ等と組み合わせることによって、今までとは違った切り口の広告体験を人々に提供することが可能になる。
4、3Dプリンティングによる新たな拡散力
3Dプリンターの低価格化が進み、普及が徐々に広がる中で、デジタル上で体験したコンテンツが“モノ化”することにより、ユーザー参加型のキャンペーンが今後広がる可能性が高まっている。デジタルの世界では、不特定多数が参加して二次創作が広がる動きは一般的になっている。
データを“モノ”として出力する3Dプリンターの普及がさらに進めば、こうした二次創作が実体を伴う世界にまで広がる可能性がある。海外では博物館の展示物を3Dデータ化し公開する事例もあり、データを用いてモノ化されていく過程は、従来とは全く異なる波及効果を生むだろう。
5、ロボティクス技術の広告活用
ロボット技術の進化を利用した、人間では再現不可能なパフォーマンスやこれまでCGでしか表現できなかった表現が現実世界で実現可能となり、より深い印象を与える広告手法が広がっていく。ロボットをコントロールするミドルウェアの整備やロボット自体の小型化や安価化が今後さらに進むことで、ロボティクス技術を利用した映像表現、インタラクティブ施策は数多く目にすることになるだろう。
6、新たなセンサー技術を活用した広告表現の拡張
昨今、センサー機器の高性能化、多様化、コンシューマー化が進んでいる。距離画像センサーを利用した骨格情報認識とそれに付随したジェスチャー認識コントローラーを搭載したゲーム機器の登場はその代表的な例と言える。一方で、こういったセンサー機器をデジタルサイネージと融合することでインタラクティブな広告体験を実現する事例も多く発表されている。
こうしたセンサー技術の発達によって、家具などのプロダクトはもちろん、植物、水などの今まで入力装置になり得なかった物体がデジタルサイネージの入力装置となり、新たな広告体験を生み出す源泉とつながっていくだろう。
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