動画広告を扱うために押えておくべき技術「VAST」
電車や地下鉄での移動中、スマートフォンやタブレットを持って動画を観ている人を見掛けても、違和感を覚えなくなってきた。Yahoo!ニュースなどでも、動画付きのニュース記事をよく見掛けるようになった気がする。Web経由の動画視聴がより幅広い層に浸透してきているのは間違いない。動画広告の利用に本腰を入れ始めたマーケティング担当者も、増えてきているのではないだろうか。
実際、国内のプレロール広告(動画本編前に再生される動画広告)市場は、2013年1~3月期には前年同期比で4倍以上の規模へと成長(DAC調べ)。eMarketerのデータによると、アメリカのデジタル動画広告市場は2013年の41億4,000万ドルから、2015年には69億9,000万ドルの規模へと拡大する見通しだ。テレビ動画広告の2015年の市場規模が699億1,000万ドルと見込まれているため、テレビ広告の10%相当にまで伸びることになる。
今後、マーケティング担当者にとっては有力な出稿先、メディア運営者にとっては重要な収益源となりそうな動画広告。本稿では動画広告を扱うに当たって、まず覚えてほしい技術を紹介したい。その技術とは、アメリカで動画広告の標準として広まっている「VAST」だ。
Googleなどもサポートしている動画広告標準「VAST」とは?
VASTとは「Video Ad Serving Template」の略称。XMLを使って広告サーバとやり取りし、「どのURLの広告動画ファイルを再生するか」「広告動画がクリックされた際の遷移先のURLはどこか」「動画広告の再生数・クリック数のデータはどこに送信するか」といった仕様を定めている。
VASTを定めたのは、アメリカのWeb広告の業界団体Interactive Advertising Bureau(IAB)。動画配信プラットフォームを手掛けるBrightcoveのほか、Adobe Systems、Google、Microsoft、Yahoo! など、動画配信に関わる主要企業が仕様策定に携わった。Brightcoveの動画配信プラットフォームやGoogleが提供するアドサーバー「DFPスタンダード」などがVASTをサポートしている。既に有力な動画広告のアドテクノロジーに関わる企業の間で浸透していることを考えると、これから業務の中で動画広告を扱うことになれば、必ず1度は耳にすることになるだろう。
業界内で動画広告の標準としてVASTが浸透しつつあるため、マーケティング担当者としてもメディア運用者としても、VASTへの対応さえ意識しておけば、お互いに広い面を押さえることができる。マーケティング担当者としては、VAST準拠の動画広告を1種類用意しておくだけで、VAST対応の動画プレーヤーを採用している多数のメディアに出稿できる。一方のメディア運用者にとっては、動画プレーヤーを複数のフォーマットに対応させなくともVASTにさえ対応させておけば、さまざまな広告主やアドネットワークからの動画広告を掲載できるわけだ。
動画広告のことに詳しくなくても、VASTへの対応さえ意識しておけば困ることは大幅に減るはず。次ページからは、「VASTで実現できること」を説明しよう。