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「そろそろウチも取り組むか……」動画広告を出稿する前に、押えておきたい「VAST」「VPAID」の基礎知識

2014/03/03 11:00

 動画広告に関わるニュースを目にする機会が増えてきた。「利用者も増えてきたようだし、そろそろウチも動画広告を出稿してみるか」と考え始めたのなら、まず知っておくべき「VAST」「VPAID」について紹介したい。 (バックナンバーはこちら)

動画広告を扱うために押えておくべき技術「VAST」

 電車や地下鉄での移動中、スマートフォンやタブレットを持って動画を観ている人を見掛けても、違和感を覚えなくなってきた。Yahoo!ニュースなどでも、動画付きのニュース記事をよく見掛けるようになった気がする。Web経由の動画視聴がより幅広い層に浸透してきているのは間違いない。動画広告の利用に本腰を入れ始めたマーケティング担当者も、増えてきているのではないだろうか。

動画広告の国内外の伸長
参考記事はこちら

 実際、国内のプレロール広告(動画本編前に再生される動画広告)市場は、2013年1~3月期には前年同期比で4倍以上の規模へと成長(DAC調べ)。eMarketerのデータによると、アメリカのデジタル動画広告市場は2013年の41億4,000万ドルから、2015年には69億9,000万ドルの規模へと拡大する見通しだ。テレビ動画広告の2015年の市場規模が699億1,000万ドルと見込まれているため、テレビ広告の10%相当にまで伸びることになる。

 今後、マーケティング担当者にとっては有力な出稿先、メディア運営者にとっては重要な収益源となりそうな動画広告。本稿では動画広告を扱うに当たって、まず覚えてほしい技術を紹介したい。その技術とは、アメリカで動画広告の標準として広まっている「VAST」だ。

Googleなどもサポートしている動画広告標準「VAST」とは?

 VASTとは「Video Ad Serving Template」の略称。XMLを使って広告サーバとやり取りし、「どのURLの広告動画ファイルを再生するか」「広告動画がクリックされた際の遷移先のURLはどこか」「動画広告の再生数・クリック数のデータはどこに送信するか」といった仕様を定めている。

 VASTを定めたのは、アメリカのWeb広告の業界団体Interactive Advertising Bureau(IAB)。動画配信プラットフォームを手掛けるBrightcoveのほか、Adobe Systems、Google、Microsoft、Yahoo! など、動画配信に関わる主要企業が仕様策定に携わった。Brightcoveの動画配信プラットフォームやGoogleが提供するアドサーバー「DFPスタンダード」などがVASTをサポートしている。既に有力な動画広告のアドテクノロジーに関わる企業の間で浸透していることを考えると、これから業務の中で動画広告を扱うことになれば、必ず1度は耳にすることになるだろう。

 業界内で動画広告の標準としてVASTが浸透しつつあるため、マーケティング担当者としてもメディア運用者としても、VASTへの対応さえ意識しておけば、お互いに広い面を押さえることができる。マーケティング担当者としては、VAST準拠の動画広告を1種類用意しておくだけで、VAST対応の動画プレーヤーを採用している多数のメディアに出稿できる。一方のメディア運用者にとっては、動画プレーヤーを複数のフォーマットに対応させなくともVASTにさえ対応させておけば、さまざまな広告主やアドネットワークからの動画広告を掲載できるわけだ。

 動画広告のことに詳しくなくても、VASTへの対応さえ意識しておけば困ることは大幅に減るはず。次ページからは、「VASTで実現できること」を説明しよう。

VASTがもたらす動画広告評価の潤沢な情報

 前述のとおり、VASTは動画広告の再生数やクリック数に関するデータの扱い方まで定めている。つまり、広告主が広告効果を計測するために必要な動画広告の再生数・クリック数の追跡ができるわけだ。具体的には、次のようなデータを収集できる。

●動画広告のインプレッション数
●動画広告の再生数
●動画広告が中間点まで再生された回数
●動画広告が最後まで再生された回数
●動画広告が一時停止/再開された回数
●動画広告がミュート/ミュート解除された回数
●動画広告のクリック数

 従来の広告にはない再生時間・一時停止・ミュートといったイベントをどう評価するべきか、新しい評価方法が必要になるかもしれないが、動画広告の効果を評価するのに十分な情報を得られるようになっている。

狭義の「動画広告」だけでなく、さまざまな種類の広告をサポート

 また「動画広告」と一口に言っても、さまざまな種類の広告がある。VASTがサポートする動画広告の種類は次のとおりだ。

(1)リニア広告

 リニア広告の代表的なものは、プレロール広告(動画本編の再生前に流す動画広告)、ポストロール広告(動画本編の再生後に流す動画広告)、ミッドロール広告(動画本編を中断して流す動画広告)の3つ。

(2)ノンリニア広告

 2つ目のノンリニア広告は、動画本編の再生中に、動画にオーバーレイして(被せて)表示するタイプのバナー広告やテキスト広告のことだ。

(3)コンパニオン広告

 コンパニオン広告(動画ポッド)とは、動画プレーヤーの周辺に表示するバナー広告やテキスト広告のことだ。

動画広告をよりリッチに。多彩な表現を可能にするAPI「VPAID」

 VASTについて、最低限押さえておきたい基本事項はこんなところだろう。VASTだけでも普通に動画広告を配信することは可能だが、「VPAID」(Video Player-Ad Interface Definition)というAPIを使えば、「動画上から いいね!/Tweetさせる」「いくつかの動画の中から、好きな動画を選んで再生させる」といったもっとリッチな表現も可能になる。

 VPAIDは動画プレーヤーとリッチメディア広告の間の双方向通信を可能にするAPI規格だ。VPAID 2.0では「ActionScript」「Silverlight」「JavaScript」の実装が規定されているが、「ActionScript」でSWFファイルを作るケースがほとんどだ。VAST経由で取得したSWFファイルを動画プレーヤーに被せる形でリッチメディア広告を表示し、視聴者のアクションに合わせて動画プレーヤーとの双方向通信を行うことになる。動画プレーヤーが「VAST対応だがVPAID非対応」の場合、VPAIDの部分を除いて通常のVAST対応の動画広告をアドサーバーから配信することもできる。

 また、SWF上でユーザーがどんな操作をしたのか、イベント数を計測する機能も備えている。VPAID API規格についての理解は必要だが、SWFの作成ということで、ActionScript/Flashに慣れているエンジニア/デザイナーなら、比較的短期間で使いこなせるようになるだろう。

 VPAIDを駆使して手間を掛けた分、確実に見返りを得られるという裏付けもある。Sizmek(サイズミック、旧:MediaMind)社の調査によると、VASTで配信した動画広告のCTRは2.84%。これだけでも十分に満足できる数値だが、VPAID採用の動画広告では、インタラクション率(動画広告に被せたSWFを操作する割合)は9.57%にもなる。中には、インタラクション率500%(1インプレッション当たり5回の操作が発生)という成果が出たキャンペーンもあったという。

 さらに、動画広告が最後まで視聴される割合も、通常の動画を含むリッチメディア広告では57.87%のところ、VASTのみの動画広告では66.21%、VPAIDを組み合わせた動画広告ではそれを若干上回る68.14%となった。VPAIDを使ってよりリッチな動画広告を配信すれば、ユーザーがより興味を持って視聴してくれるようになることが分かる。

 動画広告が普及しているアメリカでは、既にVPAIDを駆使したリッチな動画広告が登場し始めているので、次ページでいくつか紹介していこう。

ソーシャル連携、手持ち動画・画像の活用も簡単に実現/Hyundaiの事例

 VPAIDを活用した動画広告として、Sizmek(サイズミック、旧:MediaMind)社の2つの事例を紹介しよう。まずはHyundaiの事例だ。

 動画プレーヤーの下端・中央に、6つのアイコンが並んでいる。左から順に、「Facebookへのいいね!」「Twitterフィード」「Tweet」「Hyundaiの他の動画を集めたビデオギャラリーへの遷移」「同 画像を集めたフォトギャラリーへの遷移」「問い合わせ先(最寄りの自動車ディーラー)情報の表示」となっている。VPAIDを利用することで、ソーシャルメディアとの連携や、手元にある動画/画像コンテンツの活用といったことも簡単に実現できるわけだ。

見たい動画をユーザーに選ばせる/Microsoftの事例

 続いては、Microsoftのタブレット端末「Surface」の広告だ。こちらのように、3つのサムネイル画像(左からCNET、Microsoft、IGN NEWSのもの)が表示される。

 ユーザーはこれら3つのサムネイル画像から、自分の見たい動画を選んで再生できる。専門家の評価を知りたいのならCNETかIGNの動画を、Surfaceについて詳しい製品情報を知りたいのならMicrosoftの動画を再生すればいい。3本すべての動画を再生することも可能だ。

 ユーザーにとっては、自分が必要とする情報を選択して収集できるようになる。広告主から見ると、ユーザーが抱くかもしれない「勝手に動画広告を再生された」というネガティブな印象を和らげることができる上に、より多くの情報を訴求できるという利点がある。

 日々、新手法・新技術が登場するマーケティング業界。関係者にしてみたら常に勉強を迫られている気にもなってくるが、新たな手法・技術が登場しても敬遠せず、いち早く挑戦した企業ほど、より大きな成果を手にしているものだ。マーケティングの新たな打ち手を探しているのなら、2014年は動画広告に挑戦してみてはいかがだろうか。

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