プライバシー対策のポイント
宮一 アメリカの事例を見ると、面白いな、便利でいいなと思うところもあるのですが、日本でそのまんまやろうとすると、あちこちで大炎上が起きる。なぜ炎上するのかというと、ちゃんと説明できないからですよね。
清水 感じ方は人それぞれなので、大事なのは「キモイ(Creepy)」と思った人が何が起こってるのかを調べられるということと、嫌な人はやめられるようにすることだと思う。
宮一 透明性とユーザーコントロールですね。
清水 2012年の「eMetrics」で言われていた対策ポイントがこの3つ。1つめは、きちんとわかりやすく伝えること。なぜそのデータを取っているのか、どう使っているのかを伝える。これはWi-Fiを使った店舗でも、ウェブサイトでも同じですよね。それが技術用語ではなく、わかりやすく書いてあることが大事だということ。

2つめは、嫌だと思った人はオプトアウトするなり、すでに買った商品の広告だったら何度も出ないようにする。その一例がさきほどのFacebookの広告ですね。ああいう仕組みがもうちょっと広がるといい。白黒つけるというよりは、その人に合わせるために、コントロールをユーザー側に与えるということですね。
3つめはCreepyにならないようにする。結局は気持ちの問題なので上手にやろうと。正解はないので、うまくやりつつバランスを見ながら、でも上の2つは気をつけてやっていこうという結論になっていました。
みんながうまくハマレる世界観
宮一 日本では、「位置情報と○○情報を組み合わせて、△△を出していいですか」「それはだめです」「では、こっちはどうですか」みたいな議論が多いが、それは正解を求めているのではないでしょうか。出す瞬間や出し方によってすごく嫌なものになるときもあれば、超便利になるときもある。気持ちをスイッチして、ユーザー視点に立った話をしようということ。

清水 確かにCookieは是か非かとか、Super Cookieならいいのかという技術論になりがちですよね。
宮一 ネットでこういう発言をすると叩かれがちなのですが、真摯に考えながらやっていくところから始めなければいけない。それが許されるような、落としどころがうまく見つかる世界観というのはあると思う。今まではゴールがないと思っていたけれど、今日のお話を伺うと、実はアメリカでは結構ゴールもあるんだなと。やればやりようがあるんだという気づきがありました。
清水 それでみんなが便利になったらいいですよね。使う側に利便性を提供しつつ、広告側も収益が得られて、メディア側もうまくハマっていく。もっと具体化して話していきたいですね。
おわりに
3回にわたって、パーソナルデータをめぐる状況についての議論をお届けしました。今回のmeetipのレポート記事の一覧はこちらからご覧いただけます。
EU、米国においても、挑戦と挫折の繰り返しであることが垣間見えた一方で、プライバシー・バイ・デザインなど、土台となる考え方にも触れることができました。日本のパーソナルデータの利活用について、日本政府がどのような指針を示すのか。今回の議論が、パーソナルデータやプライバシーについて考える際のヒントになれば幸いです。
最後に、宮一良彦氏、清水誠氏、meetup参加者のみなさまに感謝します。