マーケターは自社のブランドが嫌われるとは思っていない



(中央)株式会社ニューバランスジャパン マーケティング部 部長 鈴木健氏
(右)株式会社mediba CMO 兼 株式会社スケールアウト 取締役 CMO 菅原健一氏
1、Assumption(前提)→Hypothesis(推定)
2、Heuristic(ヒューリスティック/経験則に基づいた仮説)→Algorithm(アルゴリズム)
3、Narrative(物語)→Journey(旅)
まず、これまでデータの量や種類が不十分だったために、マーケターの暗黙知や経験値を含めた前提(Assumption)をマーケティングに適用してきたこと。結果的に狙い通りの成果が得られても、検証することが難しかった。だが、取得できるデータの幅が広がったことで、理論に基づいた仮説を推定(Hypothesis)し、それをきちんと振り返ることができるようになった。
「これは、2つ目に示したマーケターのアプローチにもかかわってくる」と鈴木氏は続ける。これまではこうやってきたから、という根拠のない経験則基づいた(Heuristic)推測の仕方から、客観的に捉えた現状を踏まえて未来を推測するアプローチへ。「今までブランドは、こうした数学的な考え方(Algorithm)をしてきませんでした。要因がはっきりしないまま、施策に取り組んできたと思います」(鈴木氏)
これを受けて花王の本間充氏も、「マーケターはそもそも、自社のブランドが嫌われるとは思っていない」と話す。
本間氏は3月1日より、データの重要性が増していることを受けて新設されたデジタルマーケティングセンター デジタルトレード室の室長に就任。数学を修めて花王に入社後、研究所で工場のオペレーション改善に携わっていた経験から、「工場で設備の摩耗が計算されているように、ブランドも時を経るごとに価値が変わっていくことを考えなければ」と指摘する。
本当に想定したターゲットが購入しているのか?
3つ目は「物語(Narrative)」から「旅(Journey)」へ。以前は、ユーザーの行動をブランド側が想定した物語に当てはめて語ってしまいがちだった。だが、行動だけでなく思考や感情もデータで可視化できるようになったことで、今では顧客の体験プロセスを旅に例えた「カスタマー・ジャーニー」の考え方が重視されるようになっている。
「市場シェアの目標を7%と設定し、ターゲットを描いてキャンペーンを実施して目標を達成したとしても、これまでは本当に想定したターゲットが購入していたかどうかはわかっていませんでした。それをしっかりチェックしていくのが、今後のデータマーケティングで最も重要なポイントだと思います」(本間氏)
続いて鈴木氏は、データマーケティングが目指す世界はひとつではないとし、「予測/意図」、「普遍/個別」の2軸で解説。各象限に当てはまる理論や概念を紹介した。

例えば「予測x普遍」の象限では、力学的な状態と解析できる能力があれば未来がすべて予測できるとする理論「ラプラスの悪魔」を引き合いに。今のビッグデータ活用に期待されている、未来が見通せるという方向性はここにあたる。また、「普遍」の側に対し、「個別」の側で求めるのは、個人の選択を加味した考え方だ。100%の理解や予測はできないが、データ量が増えると予測の精度は上がるというスタンスをとる。