社員のやる気を引き出す「組織」「人事」「社風」
「24歳で会社をつくって、マザーズに上場してから16年たった。経営者仲間からは『非常に頑張る社員が多いのはどうして』とよく聞かれる。社員のやる気がでる組織づくりには力を入れて取り組んできた。不思議なほど社員にやる気がある会社だと自負している。実は組織づくりのことを公表するのは今日が初めてだ」
藤田氏は講演冒頭でそう指摘しつつ、サイバーエージェントにおける組織風土づくりのポイントを語り始めた。同社の2013年度の売上高は1624億円、従業員数は2661名といまや大企業と言っていい存在だ。「キラキラ女子」などと女性社員の活躍が話題になったことはあるが、藤田氏がどういった考えで組織づくりを進めてきたかははっきりつかみくにい面もあった。
藤田氏はまず、同社の組織づくりの基本方針として「大型買収はしないこと」「ヘッドハンティングしない」ことが前提にあると説明した。
「大型買収をしたり、人材を外から連れてくると、会社と空気が合わずに、結局うまくいかないという考えがある。買収やヘッドハンティングは苦手。人材はなかで育てる、事業もなかで育てるということを大事にしている」という。また、議論の大前提として、会社の業績が伸びており、それによって社員が十分な対価を得ていることが必須条件だとした。
「業績がいまひとつのときに社員のモチベーションをどう高めるかという話ではない。人のモチベーションが高まるのは、自分の仕事が会社に寄与していたり、サービスがみんなに使われていたりというとき。また、仕事の喜びはカネではないというが、安い給料で頑張れというのは明らかにおかしい。自分の業績を伸ばし、それによって十分な給料がベースにあることではじめて、やる気の話になる。この2つは避けて通れない。事業を伸ばすこと、十分な給料を払うことから目を背けてはいけない」
具体的な取り組みは、「組織」「人事」「社風」の3つに分けて説明した。
「実績以上に人格重視」の意味
「組織」については、平均年齢が30.3歳で、40代以上は全体の3%しかいないという特殊な環境だという。研究室のような雰囲気があり、同世代が多いため世代間コミュニケーションがストレスになることはほとんどない。また、終身雇用を打ち出しており、その安心感が社員のモチベーションにつながっている部分はあるとする。
男女比は、69:31と男性が多いのが現状だが、理想は半々だという。「男性ばかりだと、オフィシャルな場で下ネタが続くなどモラルが下がる。半々だとモラルは高くなる」という理由からだ。女性のエンジニア採用も意識的に行っているという。
採用については、定期的な新卒採用を創業来行ってきた。人材採用のコストが安くなるという理由もあるが、見逃していけないポイントは、新卒が入ることによる組織活性化の効果だという。「後輩を育てることは面倒臭いことと思われがちだ。だが、新卒が入ると、みんなで育てようという意識が広がり、組織が活性化する。それが毎年起こるという効果は大きい」とした。
組織の雰囲気としては、ポジティブな社員がマジョリティになるようにしている。「人は不思議なほどまわりに影響されやすい。ポジティブな人がいるとそれだけで頑張れるようになる。一方で、ネガティブなことを伝染させたがる人がいる。伝染してネガティブがマジョリティになると対処がほとんどできなくなる。伝染する前になんらかの手を打つようにしている」。なお、100%ポジティブというのは、逆に"あやしい"組織になるので、あくまでポジティブがマジョリティであることにとどめるのがミソだという。
人材の抜擢については、「実績以上に人格重視」だ。これは明確にメッセージとして打ち出しているという。一般的には、実績がある人を抜擢するほうが周囲の理解が得られやすく、組織がうまく回ると思いがちだ。だが、藤田氏によると、「組織はどうしてもピラミッド構造になるので、人格がおかしな人を上げると、上からすべて腐っていってしまう」のだという。たとえば、自分の成果を上げるために下を潰したりといったことが起こる。逆に、人格者が上にいると、スタープレーヤーを引き上げるし、組織全体を見て動くので、組織の活性化につながるのだという。