「Oculus Rift」とは
Oculus VR社のCEO、パルマー・ラッキー氏はゲームやヴァーチャルリアリティ、日本のアニメが大好きな21歳。同社がつくっているのは「Oculus Rift」というヘッドマウントディスプレイ(HMD)。視界を全面的に覆った状態で、パソコンから送られてくる3D映像を楽しむためのデバイスだ。ちなみに、メガネ型のGoogle Glassはオープンな視界に情報を重ねて表示する「ヘッドアップディスプレイ」。現在はまだ開発者向けのキット(350ドル)を展開している段階だが、世界中のゲームファン、VRファンが購入して楽しんでいる。
これまでのゲーム用デバイスに満足ができず自分でつくろうと思い立ったパルマ―氏は、クラウドファンディング「Kickstarter」で資金を募り、当初予定の25万ドルをはるかに超える240万ドル以上を集めたことで注目された。
現在、ヘッドセットを含む開発者向けのキットはバージョン2となり、ポジショントラッキングが可能となった。HMDを装着した頭の向きや動きに合わせて映像も変化するため、仮想世界の中で対象物に近づいたり、映像を拡大したりという表現が可能になる。将来的にはハイビジョンやスタンドアロンでの利用にも対応する予定だ。
今回は、Oculus Riftの書籍企画を進めている翔泳社書籍編集部の小川史晃に、その魅力とVRをめぐる最新動向について話を聞いた。
ディスプレイを投げ捨てるほどの圧倒的なリアリティ
Oculus Riftの魅力、それは圧倒的な臨場感と没入感にある。仮想現実のリアルさ。うそくさくない仮想現実。自分が感じている視界そのままに従来製品では実現できなかった体験が可能になる。ゲームとVRが大好きなCEOのパルマー氏が目指したのは"Step into the game"、ゲームの世界に実際に足を踏み入れたかのような感覚。それを可能にしているのが以下の3つの特徴だ。
- 広視野角
- 低遅延のヘッドトラッキング
- 裸眼立体視
古くは任天堂の「バーチャルボーイ」からマイクロソフトの「Kinect」まで、ゲーム業界では新たなリアリティの獲得、より自由な操作を求めて新技術の模索を続けてきた。ゲーム以外にも、ソニーが映画鑑賞向けに開発した3Dヘッドマウントディスプレイ「HMZ」シリーズもある。
これらの製品との違いは低価格で完成度が高いこと。人間とほぼ同じ広視野角を実現し、ユーザーの動作と映像のディレイが少ないことがもたらす臨場感。内容によっては恐怖のあまりディスプレイを投げ捨てるユーザーもいるという没入感。
こうした点が評価され、ゲーム見本市「E3」に出品された製品に対して大手メディアが投票を行う“Game Critics Awards Best of E3”で2013年のベストハードウェア賞を受賞した(まだ製品版が出ていないにもかかわらず)。
同製品に熱狂している一人に「DOOM」や「QUAKE」などの大ヒットゲームをつくったジョン・カーマック氏もいる。彼は自分の会社を辞めてOculus VR社のCTOになった。Oculus Riftは、一度体験すると惚れ込んでしまう。それを如実に表すエピソードのひとつだ。