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上原仁の新マーケティング時評

第1回 Webマーケティング2.0(前編)


Webマーケティング2.0の8つの要素

1.プロダクトプレイスメント

 主に映像プロモーションの世界で使われる用語。ドラマや映画、ゲームなどのエンターテイメント作品の中に広告商品を登場させ、視聴者・ユーザーにそれが広告であることを意識させないようにしながら好感を持たせていくギミック。主にマスメディアにおいて発展してきた手法だが、ここ1年で一気にオンライン上での展開が進み始めている。映画「007」シリーズにおけるボンドカーがBMWであることで、BMWをプロモートしていることなどが典型的な例。AdInnovator織田氏のレポートに事例報告が多く挙げられている。

2.行動ターゲティング

 サイト側でネットユーザーの行動履歴を蓄積し、それを分析してユーザーをセグメント化した上で、そのユーザーセグメントの嗜好性やマインドに適した広告を提示する広告手法。ネットバブル以前からいくつものトライ&エラーがなされている。主にプライバシーの観点から行動履歴の蓄積を拒絶するユーザーが多く、なかなか成立しない。近年ではYahoo!やGoogleが検索履歴や取得RSSフィードなどの形で蓄積を始めている。Yahoo!、米Claria、ソフトバンクの3社が4月に合弁会社を設立する例などがある。

3.SEO

 言わずと知れたSearch Engine Optimization(検索エンジン最適化)だが、先日のサイバーエージェントサイトのGoogle村八分などを見ても、過去に横行した無理やりなSEOではなく、過不足無く適正なサイトづくりが改めて必要とされている。SEOという語が陳腐化しても、ネットユーザーのインテンションを最も正確に抽出できる場面が、検索行為のタイミングである状況は当分変化しないであろうことから、この領域の重要性は変わらず高い。

4.比較型プレゼンテーション

 価格コムの成功を受けて、先日上場した比較コムECナビAllNaviなどの価格比較サイト・情報比較サイトが雨後のたけのこのように乱立したが、この種のサービスのユーザー購買行為へのコンバージョン率の高さに後押しされ、総じて好調な業績で推移している。アフィリエイトサイトなどでも、比較型でのプレゼンテーションが高収益を生む方程式も出来上がりつつある。

5.SMO

 Social Marketing Optimization。一部で議論が始まっている、インターネットコミュニティの口コミをいかにして、自社商品やサービスの認知・興味・購買につなげていくかという論点。

6.参加誘導マーケティング

 インターネットユーザーにいかにして群集の叡智や総表現社会に参加してもらうか、というどちらかというとインターネットサービス提供者の観点からのポイント。参加しやすいコミュニティづくりから、技術・心理・時間障壁を下げること、インセンティブの付け方までさまざまな方法が考えられている。

7.位置ターゲティング

 今後の有望市場といわれ、特にgooやGoogleが積極的に参入している地域広告市場におけるターゲティング広告手法。今すでにリリースされているものは地図・地域検索をベースにしたところが中心だが、携帯電話のGPSや行動ターゲティングと組み合わせることでよりパイも広がる領域と思われる。

8.ロングテールマーケティング

 ロングテールという言葉は、Web2.0前後に一気に有名なキーワードとなった。例えばAmazonのような商流ありきの例においては、インターネットによって在庫リスクの低減、陳列棚の物理制限の撤廃、DB検索性能の向上といった対リアル商流で見たときに、不可能なことを可能にしたということである。

8つの要素とAISCEAS(アイシーズ)の関係

 このうち、1から6までの要素は上記のAISCEAS(アイシーズ)の各段階と密接に関わっています。

 まず消費者のアテンションを獲得するための手法として進展しているのが「プロダクトプレイスメント」、消費者の興味を惹きやすいように消費者の行動をトレースしてより関与度の高い適切な商材情報を提示するのが「行動ターゲティング」、消費者の検索行動に対してより消費者の目に付く位置にマーケティング対象となる商材を表示できるようにサイトをチューニングするのが「SEO」。

 消費者が購買前に行う比較行動を適切にサポートできるように過不足無く(時には意図的な比較対象の選択で)商材と情報を提示するサイトのプレゼンテーションが「比較型プレゼンテーション」、消費者の口コミ検討段階でより好意的な情報で多くの消費者の目に付くように口コミが伝播しやすいような表現技法やブランディングを行うのが「SMO」、消費者が購買・使用の後にその商品についての情報シェアを積極的に行うように促すのが「参加誘導マーケティング」ということになります。

 7の「位置ターゲティング」はモバイルインフラと地図情報、地域情報のインフラが整ってきたことによって可能となってきたシチュエーションにマッチした情報の提示に関する研究、8の「ロングテールマーケティング」はWeb2.0を代表する概念である「ロングテール」に対応したマーケティングの手法です(後編に続く)。

(参考:URL)
What is Web2.0

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この記事の著者

上原 仁(ウエハラ ジン)

株式会社マイネット・ジャパン 代表取締役社長 1974年生。元NTTレゾナントgooサービス統括。神戸大学経営学部卒業後、NTTで映像配信事業の立ち上げ、gooの戦略・提携等を担当し、2006年に起業。日本初のソーシャルニュースサイト『newsing』(ニューシング)を運営。著書に『アルファ・ブロガー』(翔泳社)、『口コミ2.0 -正直マーケティングのすすめ』(明日香出版社)。ブログは『近江商人JINBLOG

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/05/06 18:03 https://markezine.jp/article/detail/1

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