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大元隆志のマーケター訪問記

「テレビはオワコンではなく、もっと面白くなる」
新しいテレビの形に挑戦するWOWOW「金曜カーソル」

デジタルを活用して視聴者の声をリアルタイムで番組に取り入れる

――なるほど、だから「生放送」なんですね。

太田氏:そうです。「生放送」と言うよりは「ライブ」をやっている感じに近いですね。「ライブ」なのだから、観客のリクエストで番組の構成などを変えたり、全然あってもいいわけですが、ただの生放送番組では観客からのリクエストは見えないし、聞こえません。

 「生放送」を「ライブ」にするためにはどうすれば良いのか、と考えた時に、必要になったのがスマートフォンやソーシャルメディアでした。デジタルを使って観客の声を聞くための手段が「カーソル」なんです。

  視聴者の皆さんにカーソルになって「ライブ」で番組に出演してもらって、その視聴者の意見を聞いて、出演者のトークが変わるし、ハプニングが起きる。リスクもありますが、むしろハプニングはウェルカムです。そのほうが面白いですしね(笑)。

――私も出演させて頂きましたが、本当にアドリブですよね。他の人が勝手に私が話すパートを先に言っちゃって、「あっ、言われた」と思って黙ってると「アンタ、さっきから何もしゃべってないじゃないですか!」と突っ込まれる(笑)。台本とか無視して良かったんですね。

太田氏:全然アドリブでいいんですよ。もちろん番組ですから、一応の段取りはありますが、本音を言うと、そういうの全部取っ払いたいって思っています。台本を見るよりも、参加ユーザーから寄せられているコメントを見たり、Twitterの呟きに反応してもらいたいですね。

番組の目的は「潜在ファンの獲得」

――ところで、この番組の目的は何なのでしょうか。

太田氏:目標としているのは、まだ知らない人達にWOWOWを感じてもらうことです。無料放送番組である「金曜カーソル」はWOWOWの中で「潜在ファンの獲得」という位置づけになっています。

 WOWOWはペイモデルなので加入者を獲得する必要があります。その加入者を直接増やすために活動しているのは販促部門であり、広告展開も含めて加入者増加を狙うのがミッションです。「金曜カーソル」は直接的な加入者獲得よりは「WOWOWのファン」になってもらうことを目標にしています。

――目標は「WOWOWのファン」を増やすことですか。では、その目標の達成度合いを測る具体的なKPIはありますか。

太田氏:KPIにしているのは、「金曜カーソル」への参加者数ですね。設定してる参加者数の目標があるのですが、それを下回ったら「放送終了」という覚悟で、自由にやらせてもらっています。視聴率的指標も大事ですが、今は「大勢の人に見てもらう」ことより、「特定の層に刺さる」ことを目標にしています。

――「参加者数が一定値を下回ると打ち切り」ってシビアですね。参加者数を増やすために工夫していることはありますか。

太田氏:例えば金曜カーソルの公式サイトや放送中の画面にはQRコードを表示して参加しやすいように工夫しています。他には、出演者の方との楽屋の光景をSNSに写真付きでアップしたり、生放送中にTweetしてもらうなど、できることは何でもやっていますね。少しずつですが、どういうことをすればどの程度の反応が得られるのか、ナレッジを蓄積しています。

「広告」以外でファンをつくる方法

――「加入者」を獲得することと「ファン」を獲得することは何が違うのですか。

太田氏:短期的に「加入者」を獲得することを目的とするなら、大型音楽ライブなどを放送した方が新規獲得には効果的でしょう。でも、それは他局でも同じことができるケースもあるわけじゃないですか。

 誤解を恐れずに言うと、加入者になってもらえることは嬉しいですが、それは特定アーティストのファンであって、WOWOWのファンではありません。そうすると、結局良いコンテンツをどれだけ集められるかという戦いになってしまう。

 そうではなく、「WOWOWだから」「WOWOWが好きだから」という理由で選んでくださる人を僕らは増やしたいのです。高校生の視聴者が今は加入者になってくれなくても、十年後に社会人になって、映画や音楽を見たいと思った時に「あぁ、そういえばWOWOWってのがあったな。昔随分遊んだよな」と想起してもらえる、そんな人たちを増やしたいと思ってます。

 その目的のための方法は、「お金を稼げるコンテンツ」を集めて「広告」を打つことだけではないでしょう。「広告」以外にもファンをつくる方法はあると思います。どうすれば「ファン」を作れるだろうかと考えたときに、出てきた答えが「WOWOWを体感」してもらうことでした。それがゆくゆくは、「WOWOWを選んでもらう理由」になると思っています。

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番組の視聴者自身がメディア

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この記事の著者

大元 隆志(オオモト タカシ)

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 クラウドインテグレーションビジネス推進部 エキスパートエンジニア
国士舘大学 経営学部 非常勤講師

通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。現在はCASBソリューションのセールス開発・プリセールスを担当する一方で、国士舘大学 経営学部にて学生向けに企業におけるクラウド、モバイル利活用について講座を担当する。最新のIT動向や技術動向分析が高く評価され、ヤフーニュース、IT Leaders、ITmediaマーケティング等IT系メディアで多くの記事を執筆。所...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2014/06/13 08:00 https://markezine.jp/article/detail/20185

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