「顧客のインターネット時代」に最適なソリューション
イベントのテーマは「顧客のインターネット時代へようこそ」。キーノートセッションでは、4月から代表取締役会長兼CEOに就任した小出伸一氏、取締役社長兼COOに就任した川原均氏が登場し、ビジネス概況やイベントの意図、プラットフォームSalesforce1を中心としたユーザー事例を紹介した。
一通りの発表が終了した、キーノート終盤。 Salesforce ExactTarget Marketing Cloud(以下、ExactTarget)の日本語版の提供開始が発表された。ここで、米国セールスフォース・ドットコム、日本・アジアパシフィック担当SVP&ジェネラルマネージャーのリー・ホークスレイ氏が登場。製品の説明がされるとともに、マーケティングディレクター加藤希尊(かとう みこと)氏によるデモンストレーションが披露された。
遂に登場! 「ExactTarget」
ExactTargetを紹介するホークスレイ氏は、次のように語る。「なぜセールスフォースが投資したか。理由は簡単だ。マーケティング業界が大きく変わりつつあるなかで、今までにないソリューションが必要になったからだ」(同氏)
ExactTargetは、セールスフォース・ドットコムが昨年6月に買収を発表したデジタルマーケティングプラットフォームだ。顧客データの一元管理や、マルチチャネルでのマーケティングの展開、顧客の購買行動を分析するカスタマージャーニーの管理、データ分析などの機能を提供する。
「20年以上マーケティングに関わっているが今ほどワクワクしたときはない。これまでマーケティングというと、DMやメールのように顧客に無視されるのが普通だった。だが、今は、スマートフォン上ですべてがつながるようになった。マーケターは、eメール、Web、Twitter、Facebook、モバイル、その他あらゆるデバイスがその先で顧客につながっていることを知っている。常にオンラインで常にマルチチャネル。デジタルマーケティングはすでにテレビを上回るような効果を生みはじめている。新しいマーケティング時代の幕開けと言っていい」(ホークスレイ氏)
ホークスレイ氏によると、ExactTargetはこうしたメール、Web、ソーシャル、モバイルを統合して管理でき、リアルタイムで大量のトランザクションを処理できる真の意味でのユニークさを持ったソリューションだという。クラウドを活用することで容易にスケールでき、1日10億超のトランザクションを処理でき、小規模のNPOから大規模な企業までがまったく同じプラットフォームを利用できる。実際、ユーザー企業は、Citiグループ、Bank of America、会計ソフトのIntuit、Microsoft、スポーツサングラスのOakley、チケットのExpedia、GAP、Barneys New Yorkなど多岐にわたっている。
ExactTargetが解決する3つの課題
「新しい時代のマーケターの関心は3つある。データ、ジャーニー、One to Oneだ。どの国のマーケターに聞いても同じように関心があると答える。これは、この3つをどう扱っていけばよいか難しい課題を抱えているということでもある」(ホークスレイ氏)
例えば、データについては、Webやスマートフォンから顧客や商品に関する膨大なデータが得られるようになり、それをどう扱っていいか困ることが増えてきた。その際には「膨大なデータを単一のビューで管理し、意思決定につなげられるかどうかがポイント」(同氏)になる。また、ジャーニーとは、購買サイクルや購買までの行動、ブランドに対する関心などを顧客のライフサイクルに合わせて把握できるようにすることであり、そこでは「ユニークで新しい管理方法が求められるようになった」という。最後のOne to Oneでは、顧客その人に最適化したコンテンツを提供し、顧客と本当の意味でつながりを持つことがポイントになる。そのうえで「ExactTargetのコンセプトは、この3つの課題をすべて解決することだ」とアピールした。
Barneys New Yorkの活用事例
マーケティングディレクターの加藤希尊氏は、バーニーズジャパンがExactTargetで実現する将来像を、具体的にデモをして見せた。マーケターはSalesforce1アプリと社内コラボレーションツールChatterによって、アイデアやキャンペーンの結果を簡単に共有できる。ExactTargetはSalesforce1アプリに展開できるため、キャンペーンの状況や顧客の反応をモバイルだけで一元的に管理することが可能だ。また、ExatTargeを使うと、マーケターはマーケティングに必要なすべてのアプリにアクセスできる。メール、モバイル、ソーシャル、Web、データ、マーケティングオートメーションなど、機能も豊富だ。
例えば、マーケターがアプリのダウンロードを促進させるためのカスタマージャーニーを実行するアイデアを思いついたら、その場でアイデアをChatterで共有し、ExactTargetの「Journey Builder」を使って、アプリのダウンロードまでを設計することができる。よく使うキャンペーンなどは事前に登録されており、項目をドラッグ&ドロップで組み合わせるだけで設計が済む。
キャンペーン実施後は、ソーシャルメディアの反響を分析したり、ソーシャルメディアへの書き込みをトリガーにした新しいメールマガジン登録のキャンペーンやアプリ経由で店舗に誘導するためのキャンペーンなど、新しいカスタマージャーニーの展開につなげることができる。こうしたカスタマージャーニーに対して、顧客はどのように反応しているかについてもダッシュボードで一元的に把握することが可能。「ExactTargetを使うことで、企業は新しい時代のOne to Oneマーケティングを実施することができる」(加藤氏)とした。
One to Oneを徹底する企業が採用した理由
続いて、バーニーズ ジャパンの上田谷氏が登場。ExactTarget採用の狙いや今後の展開を語った。Barneys New Yorkは、1923年の創業で、日本には1990年に新宿店として初めて参入した。ハイブランドからカジュアルまでを自由に組み合わせて一人ひとりにあったOne to Oneのスタイルを提案するビジネスが最大の特徴だ。
「来店した顧客が普段スーツを好むのか、週末をゴルフをするのかサーフィンをするのか、ゴロゴロしているのか。それらを知ったうえで、一人ひとりに最適のスタイルを提案するのが仕事。まず話をして、趣味やライフスタイルを頭に叩き込み、何かイベントがあると『来週好きなミュージシャンがイベントに参加します』などと、手紙や電話、メールを使って話しかける。最終的にはお店に来てもらって会話を成立させる」(上田谷氏)という。
そんななかで課題になったのが、顧客の情報が多くなるにつれて、情報管理が難しくなり、属人化が進んだこと。スタッフによっては、顧客のクローゼットすべてを把握している状態で、そうしたロイヤルカスタマーを100人近く担当することもある。手書きのノートで管理することは難しく、また、スタッフは女性が多いため、育休産休の際に、引き継ぎがうまくできないトラブルが起こっていたという。ExactTargetは、こうした課題を解決するとともに、顧客ひとりひとりに合わせた新しいマーケティングに適していたことから採用を決めた。
「新しいキャンペーンが簡単に作成できること、顧客データを一元的に管理できることが大きな魅力。Barneys New Yorkにはテクノロジーに対してチャレンジする風土がある。例えば、お客様が店舗に近づいたら最新の情報をスマートフォンなどに案内する、といった拡張機能も含めて、将来、いろいろな取り組みを進めていきたい」(上田谷氏)
ExactTargetが登場し、さらに、LINEとの提携も発表したセールスフォース。マーケティング分野で、どのような活躍をするのか。これからの展開に目が離せない。