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マス/デジタル別々に分析している場合じゃない!
全体最適を可能にする分析手法とは?

一気通貫に分析するからこそ見えてくること

 ある商品の購入窓口として実店舗とWEB店舗があり、流入のための施策としてテレビCM、チラシ、WEB広告を展開している企業を例にします。

一気通貫前
一気通貫前

 テレビCMを流し始めるとCV件数が増えた、実店舗への流入客数も増えたというのはよく聞く事例です。しかし、それがテレビCMを流したからなのか、それとも違う要因があるのかは今までわかりませんでした。

 しかし前述した分析手法「 VARモデル」を用いれば、それを明らかにすることができます。つまり、テレビCMがあったからCVにつながったのか、あるいはテレビCMはたまたま流れていただけでCVの獲得に何ら貢献することはなかったのか、いったいどちらだったのかを明らかにすることができます。

一気通貫後
一気通貫後

 この関係はマス‐デジタルに限りません。この手法を応用してデジタル‐デジタル、マス‐マスの分析をすることもできます。

 例えば、DSPを使い始めたおかげでCV件数が増えたというのもよく聞く話ですが、それがDSPを始めたからWEB店舗のCV件数が増えたのか、それとも違う要因なのかを明らかにすることができます。他にも、地域限定のチラシを発行し、チラシを出していない実店舗の売上と比較して「チラシに効果があったのか」を測定しているケースもあるでしょうが、果たしてチラシを出したおかげで本当に売上を伸びているのかを数字をもって分析することが可能になります。

 今までは、与えている影響がわからないまま、とりあえずは最終目的の件数(WEB店舗のCV件数や実店舗での売上、販売個数等)が増えているから何となく「この施策を始めたからじゃないですかね?」と評価していたケースが非常に多かったと思います。

 ですが、今回紹介した統計的手法によって有意性(確率的に偶然とは考えにくく、意味があると考えられる状況)を明らかにすることができるようになります。

現状からシミュレーションモデルを作成することも可能

 与えている影響は、定量的に表現することが可能です。例えば、テレビCM1GRPに対してWEB店舗で獲得するCV件数は約50件だろう、といった数値で表現できます。つまり、テレビCM、チラシ、WEB広告それぞれが獲得する実店舗の売上、WEB店舗の売上の想定モデルを導き出すことができるのです。

 もし、こうした結果があれば、何ができるでしょうか。

 例えば、1GRPあたり、1チラシあたりの獲得単価を算出することが可能になります。他にも、実際の獲得成果と比較して、「CV件数の獲得を最大化するために何が必要か」を考えることができます。

 すなわち、マス、デジタルにそれぞれ予算を決めて、その中でCV獲得件数を最大化することを考えるよりも、それらの予算を合算して、マス、デジタルの影響力を最大化し、どうすればCV獲得件数を最も多く獲得することができるのか――予算の全体最適を考えることができる、ということです。

まとめ

 人の集まるところに広告も集まる、と言います。ネット人口が減ることは考えられず、したがって、この先ますますデジタル領域の広告は増え続けていくと考えられます。一方で、ネットに集まる人が、リアルにおいてはネットで見たことをすべて忘れていることなど有り得ないわけで、ますますオムニチャネル時代を意識したマーケティングの重要度が増すでしょう。

 そのとき、マス領域だけの効果測定、デジタル領域だけの効果測定よりも、マスとデジタルを横断して効果測定したほうが、より実態に近く、次のアクション—すなわち成果を最大化するための全体最適につなげやすいはずです。

 「広告費の半分が金の無駄使いに終わっていることはわかっている。わからないのはどっちの半分が無駄なのかだ」という言葉は、デジタル領域だけでなく、マスの世界でも、今は昔になりつつあります。

【参考文献】

  • Google, "マルチスクリーンワールド 2013"
  • 竹内淑恵(2010), "広告コミュニケーション効果―ホリスティック・アプローチによる実証分析",千倉書房
  • 本橋永至, 樋口知之(2013), "市場構造の変化を考慮したブランド選択モデルによる購買履歴データの解析", マーケティングサイエンスVol. 21 No.1,2013
  • 沖本竜義(2010), “経済・ファイナンスデータの計量時系列分析”
  • Leeflang, P. S. H., T. H. A. Bijmolt, J. van Doorn, D. M. Hanssens, H. J. van Heerde, P. C. Verhoef, J. E. Wieringa (2009),"Creating Lift Versus Building the Base: Current Trends in Marketing Dynamics", International Journal of Research in Marketing, Vol. 26
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この記事の著者

豊澤 栄治(トヨサワ エイジ)

株式会社ファンコミュニケーションズ サービス開発部 情報科学技術研究所 所長

横浜国立大学経営学部、一橋大学大学院国際企業戦略研究科卒

SPSS Japan、みずほ第一フィナンシャルテクノロジー(株)、外資系運用会社(Amundi Japan)での経験を活かし、金融の分析ノウハウをマーケティ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

松本 健太郎(マツモト ケンタロウ)

株式会社ロックオン アドエビス開発ユニット プロジェクトマネージャー 兼 
マーケティングメトリックス研究所 主任研究員

株式会社ロックオン入社後、一貫してアドエビスの開発に従事。「アドテク」がバズる前から、アドテク漬けな日々を過ごす。また、開発で培ったデータに関する知見をもとに、マー...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2014/06/26 11:00 https://markezine.jp/article/detail/20293

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