ディスプレイ広告とネイティブ広告
ネイティブ広告は「ディスプレイ広告じゃない広告」という視点からも考えられるというお話でしたが、そのディスプレイ広告についてもお聞きしたいと思います。
吉永 ネイティブ広告とディスプレイ広告を使うプレーヤーはまったく違うのかというとそうでもないんです。あと、ネイティブ広告が出てきた理由に「嫌われない広告を作ろう」というのもあるんですよ。
ディスプレイ広告でDSP、SSPを使ってプログラマティックにやるとき、配信ロジック、つまり、どういう方法で誰に広告を配信するかのアルゴリズムを作る。そのときにRTB(リアルタイム・ビッディング。リアルタイムに入札して広告枠を売買するしくみ)の世界で中心になるのが、オーディエンスデータを使ったターゲティングです。
特にリターゲティングは、クライアントサイトに訪れた人を、簡単に言えばコンバージョンするまで追いかけるという手法。そうなると、場合によってはユーザーに嫌われる可能性もある。ディスプレイ広告がなかなかクリックされない現状というのは、嫌われているとは言えないけれども、それに近い、そういう広告枠は無視される状況にあるのかなと。
メディア側からすると、RTBされる在庫とされない在庫がある。RTBされなかった在庫はアドネットワークに流れて最終的には何らかの広告を配信するロジックになっていると、いろんな広告がメディアに配信されることになる。それを見たときに、「この広告、うちの媒体と合ってない」と感じる状況は必然的に起こりうる。けれど、メディアにとって収益を守ることも重要です。広告枠が空いているよりは、何かしら配信してもらったほうが収益にはつながる。
ディスプレイ広告の収益性は間違いなく上がりつつあると思います。でもその一方で、広告として「それでいいの?」というところは考える必要がある。ネイティブ広告はそういった状況から来ているんじゃないかと思います。
コンテンツは誰が作るのか
ネイティブ広告では、広告主自身がコンテンツを作って提供し、媒体のネイティブ広告枠を通じてユーザーへ届けるかたちが理想とされています(参考記事はこちら)。ネイティブ広告を考えるときの重要なポイントだと思うのですが、広告主のコンテンツ制作についてはどう見ていますか?
吉永 いまネイティブ広告を意識してる人たちは、エディトリアルな媒体の人が多い。現時点で、広告主が読み物や情報コンテンツを提供できるかというと、まだそのフェーズに入っていません。そこをより加速させるためには、コンテンツマーケティングやインバウンドマーケティングといった、クライアントサイドでコンテンツを作る文化がもっと生まれてこないと難しい。
まずコンテンツを作って、その情報をネイティブ広告枠に入れるというのは、商品を売りたいクライアントにとって遠回りに見えるかもしれない。ただ、その遠回りというのは、誰をターゲットとするかによっては非常に重要だと思うんですね。
ネイティブ広告、ないしはコンテンツマーケティングでのランディングページは、いかに、まだ見ぬ顧客、新しい顧客を連れてくるためのランディングページにできるかだと思うんです。
海外では、どのようにコンテンツ制作を行なっているのでしょうか。
吉永 クライアント自らがコンテンツを作るケースもありますが、媒体と一緒に作る場合もあります。日本より先進的だなと思っているのは、コンテンツを作るプラットフォームみたいなサービスがあるんですよね。
日本だと、クラウドソーシング系のサービスにコンテンツを発注する手法がありますが、あれはまだSEO的な意味で依頼することが多いと思うんです。それに対して海外のソリューションサービスでは、コンテンツマーケティングをする目的でコンテンツを第三者に依頼する。そしてその第三者というのは「誰が作ってもいい」ではなくて「誰々さんに作ってもらいたい」と指名したりする。ハフィントン・ポストなどもそうですが、「誰が書いたのか」が非常に重要なのです。
日本のクラウドソーシングでも、専門知識が必要なライティングのニーズにこたえる体制を作っているところもありますが、ライターの名前を前面に出していく方向とはちょっと違いますね。
吉永 コンテンツに関して言えば、実名制のクラウドソーシングっていうのはあってもいいかもしれない。
それに近いのは、ブロガーのネットワークなんでしょうか?
吉永 ブロガーの場合、どちらかというとインフルエンサー的な役割が強いのかなとも思うんです。ブロガーでも質の高い、専門知識を持ってる人もいると思いますが、コンテンツマーケティングで求められるのは情報の質であり、専門的な知識を持った書き手を求めていると言えるかもしれないですね。