メディアの収益を最大化する5つの方向性
ここで徳久氏は、現在のディスプレイ広告における在庫と取引を、プレミアムかレムナントか、またプログラマティックか非プログラマティック(手売り)かの2軸で分類。その空き領域のうち、プログラマティックでプレミアム性の高い商品が、媒体社の収益的にも広告主の立場からも望まれているのではないかと指摘する。

それを踏まえると、SSPや媒体社側のプラットフォームはどうなるべきだろうか? ひとつは、純広告をプログラマティックに寄せる方向で、「固定単価で予約型」を販売する(下図①)。もうひとつは、プログラマティックのプレミアム性を上げる方向で、「固定単価でリアルタイム」での販売をする(下図②)ことが導かれる。

これを前提に、徳久氏は次の5つの方向性を提示する。
- Private Exchange(PEX)
- Automated Guaranteed
- Derivatives
- Holistic Yield
- Publisher Trading Desk
まず1のPrivate Exchangeは媒体社側がある程度単価を決め、リアルタイムながら固定単価での取引を実現する。この場合はオープンで在庫を拠出せず、RTBを使ってプレミアムな取引ができる。「当社でも子会社のプラットフォーム・ワンでプライベートエクスチェンジを手がけていますが、いくつかのテクニックによって、バイヤーの買い付け価格を上げずに媒体の収益向上を図り、前年比160%となった例もあります」
2のAutomated Guaranteedとは、固定単価での予約購入を自動で行う取引を意味する。純広告は元々固定単価の予約購入だが、Automated Guaranteedで取引される広告は、プラットフォームの画面上から在庫を予約し、自動でやり取りできる点が異なる。「広告主から見ると、純広告だと価値がさまざまでもオーディエンスを一括で買うことになります。Automated Guaranteedの場合は、特定のバイヤーとオーディエンスデータを共有し、プレミアム在庫を高価格で自動販売することが可能です」
3のDerivativesとは、いわゆる先物取引のようなもの。米国ではXaxisのようなトレーディングデスクが行っているが、プレミアム在庫を先行買付し、優良広告主に戦略的に配分するというやり方だ。「媒体社は通常の枠売りよりも先付で大量に売ることができ、広告主は通常は純広告で買いきりしかできない条件に合った枠を都合よく買えるので、双方にメリットがある仕組みです」
4のHolistic Yieldとは、包括的な収益生産の考え方を指す。「今はSSPというと残り在庫の扱いがメーンですが、媒体社のためのプラットフォームとして進化し、純広告の在庫を含めて収益最大化を図るようになると見ています」と徳久氏。具体的には、プログラマティックと非プログラマティックの一元管理や、非プロも含めたオーディエンスデータ活用によるCPM向上などが挙げられる。
最後の5 Publisher Trading Desk(PTD)とは、「媒体社がオーディエンスデータをもっとうまく使いましょう、といいう例」と徳久氏。媒体社自身がDSPを持ち、自社サイトのオーディエンスデータを用いて、サイト外の広告在庫を買い付けて販売する仕組みをいう。自社のオーディエンスが他媒体を訪れたときに、それを自社在庫のように扱える。媒体社内にプログラマティックに対応できる組織や人材が必要になるが、これも媒体社・広告主双方にメリットがある仕組みだ。