1年間でトラフィックと売上が倍増
この方針に基づいて工夫を重ねた結果、前述のように13年度の間でトラフィック、売上とも2倍に迫る勢いで伸長した。具体的には、アプリでは昨年6月のローンチ後にユーザーの声を聴きながら、機能を絞る方向へとインターフェースを改善。非常に好評で、継続利用率が高いという。

サイトは、普段はPCを使っているユーザーが多いことを考え、両サイトで同じ体験ができるように整備。そしてソーシャルメディアでは、公式アカウントを介してタイムリーにコミュニケーションを図ることで、特に今までリーチできていなかった女性層や若年層に接触できるようになった。
「(1)~(3)のユーザー別の売上状況を見ると、12年度後半ごろの割合を保ったまま、どの層も均等に伸びています。今回の施策に一定度の手応えを感じています」(西村氏)
さらなる顧客接点の強化を目指し、現在はそれぞれのメディアに担わせたい役割も変わってきたという。ライトユーザーと非会員向けには、引き続き新規獲得やプロモーションによる積極的なアプローチを展開。一方でヘビーユーザーに関しては、すでにある程度の回数は確保している。そこで、1回あたりの単価上昇やCRM活用によるアプローチ費用の効率性などに注目している。
データ活用を進めながら、現場と一体となったマーケティングを
そうした個別のメディア最適化を図りながら、同時に「メディア単位からユーザー単位の行動への対応が急務」と見据える。
その取り組みのひとつが、自社データと第三者データとのつなぎ込みだ。外部とのデータ連携も開始し、まだANAが接触していないユーザーへのアプローチを図っている。広告以外にもWeb、ソーシャル、CRMなど様々なチャネルを介して、各ユーザーにフォーカスしたコミュニケーションを実施。「3つのセグメントに留まらず、一人ひとりの行動に合った情報や商品を、適したクリエイティブで提供していきたい。それができる環境になっていると思います」と西村氏。

今後の課題は、まずはグローバル化の強化。すでにPCサイトは36か国8言語、モバイルサイトも25か国3言語で展開しているが、より積極的にアプローチしていく予定だ。また、先般の規制緩和により、飛行機のドアが閉まった後にもモバイルが利用可能になったことにも言及。そして「利用シーンが拡大して、新たなニーズがあるのではと、客室乗務員とも話をしています」とも語る。
最後に西村氏は、「現場では空港スタッフやクルーが最高のおもてなしでフォローします。そうした現場と一体となったマーケティングが必要不可欠だと考えています」と強調。モバイル戦略だけでなく、同社の顧客への姿勢もよく分かる講演となった。