利用頻度別でユーザーが求めるものは異なる
販売促進というよりも、そうした包括的な考えでモバイルでのコミュニケーションを進めてきた結果、13年度の間にモバイルのトラフィックと売上とも、ほぼ2倍に伸長。背景のひとつは、同年6月にANAアプリをグローバルと統合してローンチしたこと。もうひとつは、スマートフォンに求める機能が多様化していることを受け、アプリを含めてメディアのターゲットを明確化したことだ。

「予約やチェックインはもちろん、FAQやキャンペーン情報、コンテンツとしての航空機の写真の閲覧も伸びています。台風が来た際などもトラフィックが一気に伸びる。飛行機が飛ぶのかどうか自分で調べよう、というセルフ化が進んでいることが手に取るように分かります」(西村氏)
だが、求められる機能をすべて搭載するには、操作のスピードやユーザビリティーの面で支障もある。そこで同社ではユーザー動向に着目し、流入経路や滞在時間、生の声などを分析。すると、ANAの利用頻度に応じて、それぞれ次のような機能を主に使っていることがわかった。
3つのポイント
(1)ANAマイレージクラブ会員のヘビーユーザー:リアルタイムの情報収集とアクション
(2)同会員のライトユーザー:必要時に予約ツールとして
(3)非会員ユーザー:セール情報や予約に直結しない情報を読み物として
アプリ、サイト、ソーシャルメディアのターゲットを明確化
このようなユーザー動向に沿って、改めてスマートフォンの機能をセグメンテーションしてマッピングしたところ、各層の使い方に合わせてそれぞれメディアを特化させることが得策だと考え付いたという。

まず(1)ヘビーユーザーには、アプリ。すぐに起動し、操作性に優れたアプリは、利用頻度が高いユーザーこそダウンロード率や継続利用率が高い。アプリの特性を活かすため、トップには予約と確認、運航状況、キャンペーン情報、オンラインチェックインに絞った。
次に(2)ライトユーザーには、サイト。必要なときに、一般的なECなどと同様にサイトにアクセスして予約の操作をする、という層だ。ABテストなどを通してインターフェースを改善し、緻密にコンバージョンを分析して現在の設計になっている。アプリよりも情報量が多く、アプリを補完する意味合いもあるという。
そして(3)非会員ユーザーには、ソーシャルメディアからの接触を想定した。実際に、Twitterの情報からピンポイントでキャンペーン情報などにアクセスするケースが多く、余裕のあるときに接していることが分かったという。ANAの利用頻度は低いが、逆に言えば、これから関係を築きたい“浮動層”。「身近に感じていただける、即時性を活かした気付きを提供したい」と西村氏。