2014年、広告業界の世界的な潮流3つ
今年も残りわずかですね。今回は今年のキャンペーン事例から厳選した10件をご紹介します。リアル、デジタルといったプロモーションの枠をあえて絞らず、「その手があったか!」「そんなことやっちゃうの!?」と思わず唸ってしまうようなケースをセレクトしました!
事例に入る前に、まずは2014年世界の広告業界の潮流を確認しておきましょう。今年は3つの特徴があったと思います。1つ目は動画を活用したプロモーション、特にWeb限定の「バイラル動画」の制作が盛んに行われました。昨年も十分に多かった印象がありますが、個人的な感覚値でいうと、前年比1.2~1.3倍です。2つ目は、若者を中心にスマホを使ったセルフィー(自撮り)が流行る中、それを前提とした“Me=私”にフォーカスする企画も多数目につきました。3つ目は、様々な先端テクノロジーを駆使して、新たなブランド体験を提供しようとするプロモーションも活況でした。
今回ご紹介する事例も、それぞれの潮流を反映したものになっています。それでは、今年、世の中をにぎわせた傑作たちを紹介していきましょう!
アプリと連携!運動するほどお金が貯まるスゴイ銀行口座
【概要】
キャンペーン名:to earn money, you have to sweat
国名:ロシア
業種:金融
ブランド名:Alfa-Bank
ロシアのアルファ銀行による、現代人の運動不足解消に貢献しうる斬新なキャンペーンです。「健康は、裕福になるために必要不可欠な要素である」という信念を掲げる同行が新たに作ったのが、『適度な運動をした人だけが利用できる高利息の口座』。年6%という高利息で貯蓄することができるという魅力的な口座です。
この高利息口座を利用する仕組みは至ってシンプル。まずは、「RunKeeper」「Fitbit」「Jawbone Up」等のフィットネスアプリとアルファ銀行の口座を連携します。あとは、自身のフィットネスアプリを起動して、たくさん運動するだけ。
アプリに記録された運動量に応じて、高金利口座への振替額が算出され、運動した分だけ普通預金から高金利預金に振替られるのです。キャンペーンを開始してから、実に数千人もの顧客がキャンペーンに参加。参加者の運動量は、通常の口座保有者の運動量に比べて1.5倍を記録したといいます。
また、高金利口座を利用して貯蓄を積み重ねている結果、キャンペーン参加者は一般的な預金者に比べて、約2倍速でお金を増やしているとのこと。『銀行口座(の利率)』と『運動量』を連動させた斬新なマーケティング施策。“「適度に運動を行っている人」と「銀行にとって望ましい預金者」の間には相関関係がある”ということを前提として組み立てられた取組みなのかもしれませんね。
歴史的瞬間が甦る!プロジェクション技術を駆使した観光PR
【概要】
キャンペーン名:Flashback
国名:ドイツ
業種:観光局
団体名:Berlin Tourismus&Kongress
次に、ベルリン観光局が実施した斬新な観光PRをご紹介します。ベルリンの壁崩壊から25年目の今年、ベルリンの壁の歴史的背景への関心を高めることで、関連博物館や美術館にも足をのばしてもらう試みが行なわれました。
ベルリンの壁の前で写真を撮影すると、“Discover Berlin’s Hidden History(ベルリンの隠された歴史を発見しよう)”というメッセージと共に歴史的瞬間が映りこむようになったのです。利用したのは最新鋭のプロジェクション技術。カメラのフラッシュに反応するように設計された投影機をベルリンの壁の前に設置し、フラッシュを用いて撮影すると、一瞬だけ壁に画像が投影されるという仕掛けを用意しました。
反響は非常に大きくインターネット上で話題が拡散したほか、狙い通り大勢の観光客が関連博物館や美術館に足を運んだといいます。25年前、大きな衝撃をもって世界中のテレビや紙面を埋め尽くした歴史的な瞬間が、今度はSNS上で再び世界中を駆け巡ることに成功した取り組みでした。ちなみに、この取り組み名は「Flashback」。『flashback=過去の出来事を思い出すこと』と『flash back=フラッシュで後方を照らす』という2つの意味が込められています。
“ついで買い”を戦略的に誘発し売上25%UP!
パンブランドのクレバーなアイディア
【概要】
キャンペーン名:Toast-Tray
国名:ブラジル
業種:食品
ブランド名:Bauducco Toast
こちらで紹介するのは、デザインのアイディア。ブラジルのパンブランド「Bauducco Toast」はユーザーへのメッセージを「上に何を乗せても美味しいトースト」というシンプルなものに絞り、ダイレクトに表現しました。
スーパーマーケットのハムやサラミ売り場を想像してみてください、通常ならば白などのシンプルなトレーにパッケージングされて商品が並んでいますよね? そこに目を付けたBauducco社。なんと、加工肉食品のパッケージに、トースをデザインしました。パッと見ただけだと、ハムが乗った美味しそうなパンが売り場に並んでいるかのよう。
店頭という消費者に一番近いコンタクトポイントで効果を発揮し、前年同時期に比べて売上げは25%も上昇しました。このパッケージを選んだ人のなんと60%が、一緒にBauducco Toastのパンを購入したのだといいます。新しいメディアの発見に感心させられるケースでした。