キャンペーンの「売上増貢献」を数値で示すには?
「複合分析」において、効果のある/なしだけではなく、具体的にどの程度の売上増加に貢献したのかを定量的に分析する必要に迫られる場合があります。そのような場合には、売上予測モデルを作成するなど、定量的な分析手法を用いる必要があります。
売上予測モデルとは、過去の売上データを基に、将来の売上値を予測するために用いる手法です。具体的には、過去の売上データの変動パターンを、トレンド(上昇/下降傾向など)、周期変動(季節性など)、ノイズに分解し、トレンドと周期変動は将来的に持続するという仮定に基づいて、売上の予測値を計算します。
適切に作成された売上予測モデルを使用すれば、売上予測モデルで計算した値(予測値)と、実際の値(実測値)との乖離を小さくすることができます。その結果、販売機会ロスの減少や、在庫/生産管理の最適化が可能となります。ただし、ある状況下では実測値が予測値よりも大きく上回る、あるいは、大きく下回る場合があります。それは、以下のようなプラス/マイナス要因が発生した時です。
【主なプラス要因】
・マスメディアやソーシャルメディアでの紹介
・自社によるキャンペーンの実施
・値上げや消費増税前の駆け込み需要
【主なマイナス要因】
・不祥事の発生や風評
・競合他社によるキャンペーンの実施
・値下げ前の買い控え
それぞれの要因が売上に及ぼす影響を算出するには、各要因が発生した時期の予測値と実測値の差を計算します。つまり、キャンペーンの売上貢献を算出するには、キャンペーンの効果が表れていると考えられる期間における実測値と予測値の差を計算すればよいのです※。
※複数のプラス/マイナス要因が影響を及ぼしていると考えられる場合は、それぞれの効果を分離する分析が必要となります
なお最近は、ある時期に特定商品の売上が急激に増加/減少した原因を、ソーシャルデータ分析で解明しようとする試みが増えつつあります。これは、ソーシャルメディアの急激な普及や多様化により、自社がコントロール可能なメディアを通したキャンペーンと同等か、それ以上の影響をソーシャルメディアが及ぼしつつあることに起因します。要因に応じた適切なアクションをタイムリーに実行できれば、売上のさらなる増加や、売上増加の持続時間を延ばす効果が見込めます。また、ソーシャルデータを日常的にモニタリングすることにより、需要増加の予兆をいち早くキャッチし、顕在する前にアクションを起こすことも可能です。
これからは、予測モデルを使用した売上のモニタリングはもちろん、ソーシャルデータを日常的にモニタリングし、顕在的/潜在的需要の変化を素早く捉えて対応できる体制を整えることが企業に求められるでしょう。
複合分析で施策改善のヒントを得る
ソーシャルデータと他のデータを組み合わせた「複合分析」を実施することにより、キャンペーン間の比較や、良い点/悪い点を把握し、今後の改善に活かすヒントを得ることが可能です。また、予測モデルを使用することにより、キャンペーンの効果を定量的に測定することも可能です。今回は、KPIへの影響を明らかにする「複合分析」について説明しました。次回は、よりリアルな生活者の姿を把握する「人軸分析」の一手法である「ソーシャルエスノグラフィ」について、具体的な事例を基にご説明します。